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Community Column

ネットゼロとコスト削減を両立し、強靭な企業づくりを国際規格が実現する

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SB-J コミュニティ

Presented by BSI グループジャパン

企業のコスト削減とネットゼロは両立できる

温室効果ガス(GHG)排出量の削減を行うことで、人類全体の脅威である気候変動を回避していくことは、今日社会が取り組むべき重要な課題の一つです。近年、多くの国や都市、企業において、ネットゼロを目指す動きが加速しており、既に120を超える国が2050年までにネットゼロを達成することを宣言しています。

2021年秋にグラスゴーで開催されたCOP26サミットおよびそのメディア報道では、多くの企業がネットゼロ移行に向けて準備を進めており、より持続可能な事業運営を行うことが競争優位になると考えていることも改めて示されました。実際、新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行など、組織が大きな課題に直面するなか、ネットゼロへの決意は一段と強まっています。

BSI(British Standards Institution, 英国規格協会)が毎年発行している英国企業およびサステナビリティの専門家を対象とした調査レポート「ネットゼロ・バロメーターレポート」では、回答者の約半数(49%)が、パンデミックによってネットゼロへの取り組みが加速したと回答し、16%が大幅に加速したと答えています。

一方で、ビジネスリーダーは、ネットゼロに取り組みつつも、サプライチェーンの課題、エネルギーコストの上昇、労働力不足、高いインフレ率などといった問題に対処しなければいけません。産業界が経済成長、あるいは単にビジネスの存続を求めるあまり、ネットゼロへの移行を見過ごす危険性は高いのです。このような圧力は、企業にとっても消費者にとっても、コスト削減か炭素削減かという、どちらか一方を選択せざるを得ない状況を作ってしまうかもしれません。しかし、企業がコスト削減と炭素削減の両方を実現することは可能であり、国際規格は、それを実現するための重要なツールとなるのです。

規格が実現する、コスト削減とネットゼロ

ネットゼロ達成期限を設定し、必要な対策を認識している組織は少なからず、廃棄物削減、エネルギー削減、排出量削減のための期限を設定しています。つまり、ネットゼロの目標には、事業の効率化、すなわちコスト削減と収益性の向上につながるマイルストーンや目標が含まれているのです。

ビジネスの成長や収益の確保を重視するビジネスリーダーのなかには、測定可能なネットゼロ目標の設定は、成長や収益の目標を達成するための手段のひとつであると考える人たちもいます。企業は、入札に際してもそのプロセスの一環として、環境に対する信頼性を証明することが一段と求められるようになっており、明確で信頼性の高い標準化されたネットゼロ目標を持つことは、これらの目標を達成するための方法となるのです。標準化されたネットゼロ目標を持つことは、多くの企業にとってビジネスの推進力となるでしょう。

目標が意味を持ち、消費者、企業、政府がネットゼロの進捗を追跡・報告できるようにするためには、規格が信頼できるベンチマークとなるだけでなく、我々の業界の文化や期待の重要な一部となる必要があります。国際的な基準は、企業が単に正しいと考えることを行っているだけでなく、測定可能な効果を上げているという点で、消費者の信頼を生み出し、「良い企業・ブランド」という評判を超えた配当へとつながるのです。

私たちは、規格がサステナビリティの主張に信頼性を与えると考えており、企業が必要な行動を取るための力を与えるものであると信じています。

ネットゼロをサポートする規格「PAS 2060」

BSIは、2010年4月にカーボン・ニュートラルの実証の仕様となる『カーボン・ニュートラルを実証するための仕様(PAS 2060)』を発行しました。これは、BSIが英国エネルギー・気候変動省(DECC:Department of Energy and Climate Change)や、マーク&スペンサーやユーロスターといったEUにおける著名な組織や政府機関との協力を重ねて策定したものです。ネットゼロ実現の実証のために、国際的に適用可能なPAS2060規格を使用することにより、企業のネットゼロ宣言とその主張に信頼性を与えることができます。この規格は、実現・実証するための要求事項を定めたもので、正確性かつ透明性を備えた環境面における信頼性を高めることができます。

気候変動戦略は、政府にとっても産業界にとっても重要です。効果的な気候変動緩和策を実施するためにはネットゼロの主張が本物かどうかを見分ける能力が重要です。PAS 2060は、温室効果ガスの排出量を管理および削減するための取り組みにおいて、地球温暖化の取り組みに対する懐疑的な見方を払拭し、信頼を維持するのに役立ちます。また、PAS 2060は、組織の種類を問わず、適用することができます。つまり、建物、輸送、製造、製造ライン、イベントなど、すべての分野においてネットゼロを実現できるのです。英国をはじめ海外で導入企業の増えている規格ですが、日本においても徐々に導入企業がでてきています。

ネットゼロは大きなチャンス

組織は、戦略的計画や業務のあらゆる側面にネットゼロ目標を組み込む必要があります。どのレベルにおいても、「どのようにすればネットゼロを達成できるか」という問いは、常に検討されるべきなのです。このように常に注意を喚起することで、サステナビリティ目標が、収益の拡大や効率性の向上など、組織を前進させるための真の力となることができるのです。

ネットゼロを達成したいという思いが強ければ強いほど、明確なガイダンスがないと、進捗に大きなブレーキがかかることがあります。ネットゼロをより広範な基準に組み込むことで、ネットゼロが主流となり、組織に明確な進むべき道が示されると考えています。ネットゼロへの移行は、政府、地方自治体、専門家、業界団体によるネットゼロの原則とその達成方法に関する情報が一致した場合、さらに活性化されるでしょう。

企業が自立し、より効率的になることで、より強靭になり、サプライチェーンの不確実性やエネルギー価格などのグローバルな課題にさらされることも少なくなります。企業が社会的責任を果たすために行動することで、採用や雇用の維持にもつながります。また、ほかの組織と協力することで、ネットゼロへの移行にかかるコストを削減することもできます。企業は、脱炭素で持続可能な組織を構築することで得られる成長とコスト削減の機会を戦略的に捉える必要があります。ネットゼロは、大きな挑戦であると同時に、大きなチャンスでもあるのです。

漆原 将樹 (うるしはら・まさき)
BSI グループジャパン株式会社
(British Standard Institution:英国規格協会)
代表取締役社長 

一橋大学大学院国際企業戦略研究科(MBA)修了。
2000年よりパナソニック株式会社でグローバルアカウントマネジメント、OEM営業、開拓営業、マーケティングとして活動。2005年よりGE (General Electric Company) のExperienced Commercial Leadership Programでは、GE Water, GE Oil & Gas, GE Plasticsで活動し、国内では新規事業開拓を、米国では買収先企業の戦略立案、企業改革に従事。 GEセンシング&インスペクションテクノロジーズの非破壊検査事業本部では、電力業界、石油化学業界、自動車業界を中心としたアカウントマネジメントに従事した後、センシング事業本部にて核計装製品のアジア大洋州地域における営業責任者を経て、非破壊検査事業本部長として日本の事業を統括。 その後、センシング事業本部で、ゼネラルマネージャーとしてアジア大洋州地域の事業を統括。 2020年よりシェフラージャパン株式会社 産業機器事業部 プレジデントに就任。国内における自動車事業以外の事業を統括。2021年7月26日よりBSIグループジャパン株式会社 代表取締役社長に就任。

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