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サプライチェーン全体の透明性を確保する、デジタルIDの新たな可能性

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Avery Dennison Smartrac Japan
© Avery Dennison Corp., 2022

脱炭素だけでなく、児童労働など人権の問題という観点でも、企業には商品・サービスの背景を社会に対して情報開示することが求められている。しかし、特に規模が大きいグローバル企業では、サプライチェーン全体の透明性を確保することは困難を極める。今後、企業が自社商品のライフサイクルアセスメントをより細かく把握しなければならなくなった時に、どのように対応すればいいのか。その解決に一役買うと期待されるのが、これまで在庫管理に活用されてきたRFIDだ。センサー技術を活用し、リアルの物流をデジタルと結び付けるプラットフォーム「atma.io(アトマアイオー)」を提供するAvery Dennison Smartrac Japan(以下、エイブリィ・デニソン)の加藤順也マネージングディレクターは「リジェネラティブな小売経済やステークホルダー資本主義を実現するための重要な手段の一つ」と話す。

企業に求められる流通の透明性と情報の開示

グローバル企業における、サプライチェーンの透明性の確保の難しさの理由は、規模の大きさだけではない。製造や流通の過程では「ロットごと、商品ごとに生産地や工場、またカーボンフットプリントが異なる」という状況がほとんどで、それらが入り組んだ全体像は、チェーン(鎖)というより複雑に絡まったネット(網)だからだ。

現状では、各社が地道に取引先やサプライチェーン全体のステークホルダーと協力して CO2排出量を算定したり、第三者機関による認証制度を利用したりして、トレーサビリティが確保されていることを消費者に伝えようとしている。例えばBMWは昨年から、鉱物原料のトレーサビリティ確保のためにブロックチェーン技術を導入したが、これはデジタル技術によって材料や商品の流通の透明性を確保しようというものだ。

小売流通のソリューションとして期待されるRFID

そういった課題に対するソリューションのひとつが、RFIDなどのデジタルIDを用いたIoTソリューションだ。RFID(Radio Frequency Identification)とは、電波でICチップの情報を非接触で読み書きする自動認識技術のこと。離れた距離から複数のRFIDタグを一括で読み取ることができるので、検品や在庫管理などの作業効率がアップする。また取得できるデータの質も高いため、小売や製造、流通などさまざまな分野で活用されている。

このRFIDソリューションにおける世界最大手が、Avery Dennisonだ。創業は1935年。米カリフォルニア州グレンデールに本社を置き、世界で初めてシールを作ったというユニークな歴史を持つ。そこから、包装フィルムやラベルなど、“その物が一体何であるかを識別する”──今風に言えばタグ付けするための素材やアイテムを一貫して作ってきた。

30年ほど前から、モノのアイデンティティ(ID)をデジタル化していくべきではないかと考え、RFID 事業に進出。2021 年からは、サプライチェーン上のあらゆる製品のトレーサビリティを実現するための次世代デジタルプラットフォーム「atma.io(アトマアイオー)」を運用開始した。導入企業の例を挙げれば、アディダスがリサイクルのための中古商品の回収プログラムと連携させて活用している。Avery Dennisonによれば、世界のアパレル企業トップ 20 社のうち6 社が、さらに米ファーストフードチェーンのトップ10 社のうち4社がすでにこの「atma.io」を導入しているという。

なぜデジタルIDによるサプライチェーンの“見える化”が、グローバル企業の間で注目されているのか。同社の加藤順也マネージングディレクターはこう説明する。

「商品に固有のIDを付けることに関しては、RFIDである必要はなく、例えばQRコードでも良いわけです。しかし、物量が多くなればなるほど、そのつどQRコードをスキャンして読み取るのは非現実的。そこでRFIDのような、一度で大量にIDを読み取る技術に優位性が出てきます。同じような非接触型の無線IDシステムのNFCは通信距離が10cm程度ですが、RFIDは8〜10m離れていても読み取ることができます」

誤解のないように補足すると、QRコードやNFC(近距離無線通信)が技術的に劣っているわけではない。スマートフォンで簡単に読み取れるQRコードは、消費者との接点として重要な役割を果たしているし、日本ではPASMOやSuicaなどに導入されているNFCも現代の通行手形として欠かせない存在だ。それらと同じことをRFIDでやろうとすると、半径10m以内のタグを全て認識してしまい、現場は混乱をきたすはず。要は適材適所ということだ。

RFIDの課題とその克服方法

RFIDを用いたシステムには課題もある。それはコストだ。

「米国のVDCというリサーチ会社が2020年の世界のRFIDタグの平均価格についてレポートを出しています。それによると、仕様や数量によりますが、日本円で1枚約6円弱です。一方、ICチップの入っていない普通のタグは2円程度といわれています。4円の差はわずかに思えますが、例えば、年間10億枚使用するグローバル企業にとっては、RFIDタグに切り替えるだけでも40億円のコストが増える計算です。単価は年々下がってきていましたが、世界的な半導体不足の煽りを受けて、最近はコストの上昇が続いています。半導体不足が改善しても、この先は急激なプライスダウンは見込めないでしょう」(加藤氏)

ハード面では、タグを読み取るリーダーの価格が大体10〜20万円。これもサプライチェーンが大きくなればなるほどコストが積み上がる。ソフトウェアに関しては、導入企業が求める使い方やシステム連携などによって大きく左右されるため、コスト計算はしにくい。

つまり、デジタルIDを活用したサプライチェーンの可視化システムの導入には “それなりにコストがかかる”と曖昧に言わざるをえない。それでも欧米を中心としたグローバル企業がこぞって導入しようとしているのはなぜか。

「それは、売上げを上げるためのツールだと考えているからです。世界のトップ企業ほど既存のやり方では立ち行かないと気づいていて、逆に言えば自社の商品がどこから来たのかという“ルート”と、誰がどのようにして作ったかという“ストーリー”を提示できれば、消費者は選んでくれると確信しています。ですから、欧米の大手企業からタグの価格が高い安いといった意見はあまり聞きません。一方で、日系企業はリターンを描くことが苦手な印象を受けることが多いです。とにかくコストを下げようとするか、もしくはコストを導入障壁と捉える傾向があります」(加藤氏)

リジェネラティブな未来に必要なこと

これまでRFIDは、生産管理や在庫管理というバックヤードの領域で力を発揮してきた。しかしこれからは、消費者に対してさまざまなメッセージを伝えるためのツールとして進化していくだろう。例えばエシカルな商品を作る際に、どうしても価格に上乗せしなければならないコストが生まれることを、いかに消費者に納得してもらうか。そのストーリーを明確に示すことができれば、「共感」と「支持」という大きな果実を得ることができるだろう。

さらには、リジェネラティブという観点でもRFIDは有効だ。リジェネラティブとは、「持続」を目的とした行動だけでは限界があり、我々自身が新たに 「再生」しながら繁栄していく道を選択しない限り、真のサステナビリティ(持続可能性)は実現できないとする考え方だ。自然環境を守り、廃棄物を生み出さない循環型の経済システムを構築した上で、より健康的で安全な、そして付加価値が生まれるシステムを構築していくことが求められる。

その視点でRFIDの可能性を考えると、例えば、センサー技術による物流のトラッキングは、製品単体やロットごとのカーボンフットプリントの正確な算出を可能とし、それを商品価値やストーリーテリングと結びつけることができれば、カーボンゼロを基準とした新しい小売流通システムが出来上がるかもしれない。もちろん他にも方法はあるだろう。生み出される付加価値や可能性は、導入する企業のアイディア次第だ。

「近い将来、CO2の排出量やその商品が辿ってきたストーリーなど、消費者がいままでとは違う観点で商品を選び、買い物の仕方が変わる時代がくると考えています。そういった未来に備える上でまず大事なのは、個々の物に何らかの形でIDをつけ、そのIDに紐づく情報をできるだけ透明性を持って消費者に提供していくことだと思います。例えば、企業が“自分たちが提供している商品がどれくらいCO2を排出しているのか”という現状をまずは理解し、克服すべき課題を消費者と共有し、CO2排出量を減らすための長期的な戦略を消費者と二人三脚で考えていくことが重要だと思います。そのプロセスを明確に発信し、社会全体を良くするんだという企業姿勢に共感を集めることができる企業こそが、これからの業界をリードしていくのではないでしょうか」(加藤氏)

リジェネラティブな小売経済、そしてステークホルダー資本主義の実現のためには、RFID をはじめとするさまざまなテクノロジーや、プレイヤーによる消費者を巻き込んだ “総力戦”が必要だ。各企業には、その枠組みにいち早く与することが期待される。

Avery Dennison Smartrac Japan
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Avery Dennison Smartrac Japan

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