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脱炭素社会へ共創の加速を――日本とスウェーデン、企業トップら「サステナビリティ サミット」で知見共有

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

国や企業が気候変動問題を喫緊の課題と捉えるよう、若者たちが最初に声を上げたことで知られる国、スウェーデン。そのスウェーデンと日本で、脱炭素社会に向けたビジネスをけん引する企業のトップや政府関係者らが一同に会し、その知見を共有するとともに、さらなる連携を確認し合う機会があった。昨年10月、東京都内とオンラインで開かれた「Sweden-Japan Sustainability Summit 2021」(スウェーデン大使館主催)だ。日本国内には150社以上のスウェーデン企業が、スウェーデンには300社以上の日系企業が進出するなど、ビジネスパートナーとして強い結び付きがある両国は、若者たちの危機感を切実に感じ取り、共創を加速させることができるのか――。会議の内容を紹介する。(横田伸治)

会議は、アストラゼネカやボルボなどスウェーデン企業5社の協賛、サントリーなど日系企業6社の協力で開催。アストラゼネカ東京支社(東京・港)の会場で冒頭、駐日スウェーデン大使のペールエリック・ヘーグベリ氏が、海面上昇や異常気象などの気候変動を踏まえ、「われわれの生活を変えなくてはならない。産業革命に匹敵する、社会構造の根本的な変革が必要になっている」と警鐘を鳴らし、日本国内には150社以上のスウェーデン企業が、またスウェーデンには300社以上の日系企業が進出していることなどから両国の通商・投資関係は強力であり、「研究と技術のリーダーである日本と、イノベーションとクリエイティブなソリューションのハブであるスウェーデンが、持続可能な社会への移行に向けて共創する時だ」などと期待を述べた。

この後、気候変動問題に声を上げるスウェーデンと日本のティーンエイジャーによるメッセージがビデオで紹介され、このうち兵庫県宝塚市の雲雀丘学園高校から5人の生徒がオンライン参加。「重要な岐路に立たされている地球の未来を明るいものにするために、今、思いやりの心を持って行動する時です。世界が一丸となれば、地球は再び美しく咲き誇ると信じています」と英語で伝え、ヘーグベリ氏が「みなさんのインスピレーションを感じることができた。みなさんや世界中の若者が声を大にしてくれることを期待している」と答えた。

各国の企業や都市が気候変動に関する対策を比較できる枠組みも

基調講演には、スウェーデンの独立系シンクタンク「グローバルチャレンジ」会長で、ジャーナリストでもあるカタリナ・ロルフスドッター氏がビデオ出演。「生物多様性が急速に失われているほか、壊滅的なスピードで資源採掘を進めた結果、惑星の限界を超えてしまっている。恐ろしいことばかり起きているが、私は活動家として多くの希望を目にしている」と話し、各国の企業や都市が気候変動に関する対策を比較したりアイデアを出し合ったりできるプラットフォーム「We Don’t Have Time」や、温室効果ガス排出量実質ゼロへの行動を促す国連のキャンペーン「Race To Zero」など世界に間口を広げた取り組みが加速している事例を紹介した。

続いて、東京大学未来ビジョン研究センター教授の高村ゆかり氏が「持続可能な開発のための企業行動を促進するためのグローバルフレームワーク」と題して登壇。2050年のカーボンニュートラル達成に向けた動きを自治体や企業といった非国家主体がリードしているのが昨今の特徴であると説明し、実例として、科学的知見と整合した削減目標を設定する「Science Based Targets(SBT)イニシアティブ」に世界の企業約2000社が、また事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す「RE100」に日本企業が60社以上参加していることなどを挙げた。

企業がこうしたフレームワークに参加する背景には、気候変動が事業に与える影響や将来のリスクだけでなく、金融機関や投資家が企業評価の軸としてサステナビリティに関する情報開示を求めていることがあり、企業にとって気候変動への取り組みが「企業価値を左右する本業の問題となっている」と指摘した。企業行動をさらに促進するために、「サプライチェーン、バリューチェーンを管理し、気候変動以外の問題も含めた持続可能性の考慮を統合することが企業価値を高め、経営の強化につながる。企業間の連携は必須であり、今回のイベントがきっかけになれば」と講演を締めくくった。

企業は「期待されている」 未来のためにもよりコミットしていかねば

ここで、スウェーデン大使館通商代表のカーステン・グローンブラッド氏と、大型商用車メーカー・スカニアジャパンCEOのミカエル・リンドナー氏が登場し、「スウェーデンの企業にとって、なぜサステナビリティが大切なのか」について語る場面も。この中でグローンブラッド氏は「サステナビリティは企業が正しいインパクトやバリューを生むための非常に強いツールである」、リンドナー氏は「高校生からも冒頭で意見があったが、企業は『期待されている』。地球、子どもたちの未来のためにも、よりコミットしていかねばならない」などと強調し、日本の産業界全体への協力を呼びかけた。

続いて個別企業のサステナビリティ戦略を紹介した後に各社の代表が登壇するディスカッションが2部に分けて行われ、はじめにアストラゼネカ、ブリヂストン、エリクソン・ジャパン、ボルボ・カー・ジャパン、日立エナジーの5社が「なぜ積極的にサステナビリティとビジネスを一体化するのか」といった観点から意見を交換した。

ブリヂストンの稲継明宏・グローバルサステナビリティ部門長はその中で、「『nice to do』だったサステナビリティが、どんどん『must to do』になっている。たとえば自動車産業がEVにシフトしていくと、車体が重くなる分、それを支えるタイヤが必要になるほか、航続距離をいかに伸ばしていくのかも重要になる。サステナブルなものづくりをどう実現するかがビジネス機会にも、競争にもつながる」と改めて指摘。

パートナーシップについては、エリクソン・ジャパンの野崎哲社長が「デジタルテクノロジーがもっと活用できるような政策の枠組みと、デジタルリテラシー向上のための教育プログラムを、政府機関に要望したい。そして、今日のサミットのように、より多くの企業と対話していくことがとても重要」と提起した。

製品の設計段階からごみを出さない 経済の仕組みを変えていく

後半のディスカッションでは、日本環境設計、日本テトラパックの2社と、環境省の中井徳太郎事務次官が「循環型経済と持続可能な新しいビジネスモデルのための提携」をテーマに議論した。

中井事務次官は「これからの10年、特に5年は、人類が生存できるかどうかの運命的な期間。産業革命以降、化石燃料・地下資源を大量消費し、都市化により生態系機能を損ねてきた。異常気象、海洋プラスチック問題、そしてパンデミックにより顕在化した都市部への人口集中リスク、すべて根っこは一つだ」と危機感をあらわに。その上で「自然と共生する『地域循環共生圏』のために現状をどうするか。まずはプラスチック資源循環促進法を2022年から動かしていく。製品の設計段階から、ごみを出さない、あるいは部品として交換しやすいという発想転換により、経済の仕組みを変えていく」と意気込んだ。

世の中の流れはモノを大切にする経済へと確実に変わっている。このことを踏まえ、日本テトラパックの大森悠子・サステナビリティダイレクターは、プラスチックから紙容器へと再生された同社の商品を見せながら、「この中身を飲んだ後も、必ず回収拠点に持って行きリサイクルされるよう、一連の流れを確実なものへと強化したい」と決意を表明。日本環境設計の岩元美智彦会長も「ものづくりと販売とリサイクルが一体となる構造が循環型経済やCO2削減、地下資源を使わないことにつながる。技術革新と消費者の行動変容を両立することで、素敵な社会、地球環境ができるのではないか」と展望を語った。