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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

暮らしが快適であるために:名古屋「mozoワンダーシティ」が続けるアクション

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Presented by 三菱商事・ユービーエス・リアルティ

公園をイメージしグリーンを多く取り入れた館内

愛知県名古屋市。歴史と文化が豊かなせいか、もしくは、大きな経済圏があるからか。理由はともかく、西と東の中央で安定するこの街を訪れるたび、穏やかで優しい空気に触れた気持ちになる。名古屋市内のショッピングモール「mozo(モゾ)ワンダーシティ」では、環境保護や地域貢献といったサステナブルな施策を重ねていると聞き、その背景を聞いてきた。

新時代に目指す、サステナブルな商業施設の姿

もぞもぞ。自然界の音をことばにした擬声語の中でも、これから何かが始まる未来への期待を感じさせる名前のショッピングモールは、地域住民に限らず、東海三県からのリピーターも多いという。年間来訪者数は約1900万人。東京でいえば平常時のディズニーランド並の数字だ。

それだけの数であれば世代も属性もさまざまであろう来館者に向けて、どんな施設づくりを目指すのか。運営元である三菱商事・ユービーエス・リアルティのアセットマネージャー 加藤 純子さんは「楽しく快適に訪れたくなる場所」を常に考えていると言う。

三菱商事・ユービーエス・リアルティ アセットマネージャー 加藤 純子さん

「日々のお買い物をするにしても、ただ便利なだけではなく、気持ちよく過ごしてもらいたいと思っています。商業施設ではあるのですが、まるで公園で過ごしているかのような快適さをコンセプトにしました。

定期的にリニューアルする中で、中央に大きな「mozoツリー」型のオブジェを設置したり、以前は硬い素材だった床を芝生色の歩きやすいカーペットに変えたり、来てくださる方が居場所を感じやすいように、座って休める場所を増やすというような施設上の工夫もあちこちでしています。コロナ禍に入ってからは、約2メートルの距離を意識していただけるような配慮もなるべくさりげなく取り入れました」(加藤さん)

商業施設といえば大量消費を繰り返すことが是として優先されてきたが、すでに時代は変わったと言える。持続可能な社会に向けて、mozoのように、地域経済や生活様式、地域の価値観に大きく影響する施設のあり方が求められているようだ。

通路に配置した丸みのある有機的な休憩スポット

「ショッピングモールとして快適に買い物ができることはもちろんですが、それに加え、環境に配慮した買い物ができる、地域社会に貢献できる、という安心感を得られる場でありたいです。そのためには、運営側である私たちがどんな未来を描き、何を実践しているかという意思を提示することが大切だと思っています」(加藤さん)

オープン前に300人の列を生んだ循環型企画

取り組みの展示には廃材の木材を活用

ディレクターとして、加藤さんと一緒にコンセプト設計などを担当する水野 浩行さんは「(商業施設も)消費者の生活がアップデートされるような場でありたい」と考え、暮らしの中に取り入れやすいプロダクトやイベントを定期的に企画していると言う。

「mozo action for earth」をプロデュースしたMODECO代表の水野 浩行さん

「『mozo action for earth』という名前のイベントを年に数回開催しています。そこではいかに楽しく参加してもらえるかを考えています。サステナビリティはとても大切な価値観ですが、苦しいものでは続けていけません。お客様はもちろん、運営側であるわたしたちも、楽しくて快適なものじゃないと継続しづらいと思うんです。でも続けていけば、それはいつか新しい文化や生活様式として定着するでしょうし、いずれはこの地域のまちづくりにも繋がっていきます」(水野さん)

水野さんは、地元名古屋で展開するアップサイクルブランド「MODECO」の代表でもあり、企業の廃素材を活かして新しい製品に生まれ変わらせてきた地域の第一人者だ。そこで2019年、mozo action for earthの第一回目として、他では類を見ない独自のアップサイクルアイテムを企画した。

本来ならメーカーが自動車の内装に使う予定だった丈夫な生地が余剰材となってしまい、それを水野さんが入手したことがきっかけだった。それらを有効活用した高級感のあるエコバッグを1000個製造し、mozoでお買い物をした人にプレゼントした。配布当日は営業時間前から300人の列ができるほど注目を集め、1000個のエコバッグはあっという間に配布し終えたという。余剰材を提供した協力企業は、「愛知で自動車メーカーといえば」のトヨタだ。

エアリバッグ

「地元のメーカーと協働して、ご来館のお客さまに渡せるという循環が形にできたことはすごく嬉しかったです。その後も定期的にmozo actionとしてエコバッグの企画は続け、1年間で3回開催しました。2020年は廃車から回収した未使用のエアバックや、mozoの隣の清須市にある豊田合成株式会社という自動車のエアバッグをつくっている会社にご協力いただき、製品にならなかった素材をエコバッグとして生まれ変わらせました。世間でもちょうどレジ袋が有料化したこともあって、お客さまの生活習慣にもエコバッグが定着してきているように感じます」(加藤さん)

強い衝突から人命を守る車のエアバッグは、当然ながら非常に強い素材であることが求められる。そのため素材に対する検品が厳しく、少しでも規格を外れた点が見つかると、エアバッグになることもなく行き場を失うこともあるという。これまではメーカーが負担して廃棄せざるを得なかったが、mozoを通してエコバッグに変わり、さらに地元・愛知県民の暮らしの中で活かされるとは、なんとも胸が熱くなるような循環のストーリーだ。

「AIR Re Bag(エアリバッグ)」と名付けられたエコバッグは、取材日もプレゼント配布が予定されていたが、やはり希望者が多く、1時間ほどで予定数の全てを配り終えていた。受け取った方に聞くと「今日はこれをもらうつもりで買い物に来た」「以前のエコバッグも愛用している」「地元のためになっている気がする」といった声を聞くことができた。

来館者への配布風景

エコバッグだけじゃない、mozo action for earth

mozo action for earthは他にも、リユース事業を全国展開する株式会社コメ兵の協力のもと、自宅で不用となったブランド品などを手放しリユースする機会を館内に設けたり、広大なフードコートの飲食店で竹製ストローをトライアル採用し、脱プラスチックに関する意見をアンケートで集計したり、日本環境設計との協働により、衣料品の回収場所を一時的に設置するなど、地道に、しかし確実な歩みを続けている。

フードコート「MOGU」は開放的な空間

生活者の目線に立ち、利用者の暮らしにより多くの彩りを提供することを、サステナブルな形で実現しようと果敢に挑戦を続ける運営側の情熱は、共感する人を着実に増やしているようだ。mozoの運営管理をするイオンモール株式会社の吉永 博治さんは、加藤さん、水野さんと一緒に数々のチャレンジを実現すると同時に、現場で生の声を聞いている。

イオンモール株式会社の吉永 博治さん

「エコバッグ配布日には早朝から列ができましたし、衣料品回収のときも告知が当日だったにもかかわらず40人ほどの方が回収目的で開店直後にご来館されました。また、試験的に導入した竹ストローも、使ってくださった方のアンケート結果は好評で、恒常的に導入できたらいいなと考えています。

こうしたmozo actionやサステナブルな取り組みに関して、テナント企業の皆さんもとても協力的です。テナント側でも何かしらの取り組みを実施している企業も増えてきているようですし、いずれmozoとテナント企業がもっと一緒にできることを考えたいですね」(吉永さん)

今は数カ月ごとに開催してきたmozo action for earthを、いつかは恒久的なものにするため、たくさんのアイデアを話し合っているという。

サステナブルな社会を共に創る仲間を募る

「mozo action for earthは、定期的なイベントから、mozoのスタンダードな価値観にしたいと考えています。あらゆるサステナビリティがmozoで機能し、社会生活の中で感じる疑問もここで解決できるような、新しい商業施設の形を体現したいです。時代の変化を考えるなら、介護施設やデイケアセンターがあってもいいかもしれないですし、暮らしの中で出るゴミの回収施設や、自宅から容器を持ち込んで日用品が買えるなど、実現できそうなことはたくさんあります。

また、施設全体として消費するエネルギーも相当な量なので、近い将来再エネでまかなえたら理想的ですね。将来的にはこの地域におけるコンパクトシティのような存在になるべく、仲間を増やしていけたら嬉しいです」(加藤さん)

サステナブルな暮らしのハブを目指すmozoの挑戦。その思いは共感とともに地域の垣根を越え、全国各地に拡がっていきそうだ。

mozoワンダーシティ

〒452-0817
愛知県名古屋市西区二方町40番
交通アクセスはこちら

・mozo専門店街営業時間
【1~4F】10:00~21:00
・イオンスタイル営業時間
【1~3F】9:00~23:00
※営業時間は店舗により異なります
詳細はオフィシャルHPへ

文:やなぎさわ まどか 写真:高橋 慎一

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やなぎさわまどか

神奈川県出身。ナチュラリストの母により幼少時代から自然食や発酵食品で育つ。高校在学中から留学など度々の単身海外生活を経験。都内のコンサルティング企業に勤務中、東日本大震災で帰宅難民を経験したことをきっかけに暮らし方を段階的にシフトする。現在は横浜から県内の山間部に移り、食や環境に関する取材執筆、編集、翻訳通訳のマネジメントなど。