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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

「中古のスマホ」という選択肢がデジタル格差を解消する

回収された中古スマホのデータ消去は、2回に渡って念入りに行われる(写真提供:携帯市場)

携帯電話やスマートフォン(以下、スマホ)端末は、回線契約や機種変更の際に新品で購入することが当たり前だと考えている人が多いかもしれない。しかし実は今、中古端末市場に注目が集まっている。その理由は2019年10月の電気通信事業法の改正だ。それまで大手キャリアが通信料とセットの割引によって実現していた、新品端末の大幅な割引や「実質無料」での提供がなくなった。リサイクルの手前のリユースという観点だけでなく、安価なサブスクリプション方式のシェアリングや、寄付端末の教育現場での使用など、中古スマホ市場に目を向ければさまざまな社会課題解決のヒントが見えてくる。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

「中古」の選択肢に注目集まるも認知度「まだ低い」

ソフトバンクが通信料と端末代金を区別して表示する料金プランを初めて発表したのは2007年。総務省からの提言もあり、ドコモ、KDDIが追従した。この時初めて、携帯電話端末に値が付いたとも言われ、「中古携帯元年」は2008年と言われる。

IPhoneの普及などと共に端末代金が高騰する中、大手キャリアの戦略は端末代金の「実質0円」化だった。端末を割賦販売し、明細として区別した「通信料」からその金額を値引くことで見かけ上は端末代金が無料になったように見せる。しかしそもそも、そのような高額の割引の原資は通信料からまかなわれており、割高な通信料が値下げされず、「2年縛り」による消費者負担なども問題になった。昨年10月、電気通信事業法の改正により「端末の割引は2万円を上限とする」と定められた。

例えばこれまで、10万円の端末を買う際に0円だった(実際には10万円分の通信料が値引きされていた)代金が、最大の割引でも8万円を消費者が負担する。その分、通信料を大幅に値下げし、消費者にわかりやすい料金プラン体系を普及することが総務省の狙いだ。

携帯市場の粟津浜一代表

「中古端末の価格メリットがクローズアップされ需要は確実に増しているが、キャリア各社が上手く分割払いをコーディネートしており、まだ高額な端末代金がかかっていることが十分に浸透していないのでは」と話すのは、中古通信端末の卸・販売を手掛けてきた携帯市場(東京・千代田)の粟津浜一代表だ。

スマホは今や、電気、ガス、水道に並ぶ生活インフラと言っても過言ではないだろう。総務省の「通信利用動向調査」によれば、2019年度の情報通信機器の所有割合は、モバイル端末全体では全世帯の96.1%。そのうちスマホは83.4%となり初めて8割を超えた。一方、個人のスマホ所有割合は同年67.6%にとどまっている。コロナ禍で経済が縮小する中、安価な中古スマホという選択肢が消費者にとっても身近で現実的になりつつあるが、日本ではまだその認知が行き渡っているわけではないようだ。

コロナ禍、中古スマホの役割は

携帯電話の購入割合のうち、国内で中古端末が占める割合は6.1%(オークネット×MMD研究所調べ、2020年5月21日発表)。米国では10.4%だ。米国に比べ日本は、中古端末の普及率はかなり低い。調査企業の米ガートナーの予測によれば、世界における中古端末の市場規模は現在約3兆円、一方でMM総研(東京・港)によれば日本国内の市場規模は約400億円だ。

米国と比較すると国内では中古端末という選択をする消費者は少ない(出典:オークネット総合研究所×MMD研究所共同調査)

粟津代表はこの領域に、早くから「事業を通じて社会課題を解決する」というマインドを持って挑んでいる。創業した2008年には京都議定書を参照し「中古端末一台ごとに、携帯電話を廃棄したときに出る二酸化炭素を付加して販売する」というカーボンオフセット端末の販売を行った。当時は「サステナビリティ」という言葉は一般的ではなく、会社の規模が非常に小さかったため、名古屋の地元局に取材されたものの「お蔵入り」になったという。

コロナ禍に際し、粟津代表が「家計の負担を減らし、不安を減らす方法はないか」と考えた末に始めたサービスが中古スマホ、タブレット端末のサブスクリプション「みんなのスマホ」だ。例えば、auオンラインショップで購入できるもっとも安いIPhone端末は第2世代SEの64GB、5万5270円(税込)。「みんなのスマホ」に同機種のラインナップはないものの、IPhone8の64GBを月額1742円(税込)で利用できる。2年使用してもお釣りがくる。さらに旧機種のIPhone7であれば、月額約1000円だ。

回収されたスマホはまず滅菌処理が施される
中古スマホの検品項目は30以上

「家族の中で今までスマホを使っていなかった高齢者の方や、子どもたちに持たせる端末として利用されているケースが見られる」という。ワーケーションや大学など、端末が必要な期間が明確な場面での活用も。家庭の家計簿にもダイレクトな影響を与えたコロナ禍の中、新たにスマホを持つ必要がある場合には有力な選択肢となっているようだ。もちろん端末は徹底的にクリーニングをし、バッテリーの損耗が80%以下であればレンタル機器にしないなど、厳しい基準を設けている。SIMフリーな点を除けば「中古」であることを、利用者はほとんど意識する必要がない。

事業の強み生かし教育の現場の課題解決にも

使わなくなった端末の約6割は「自宅で保管」されている(出典:オークネット総合研究所×MMD研究所共同調査)

国内の使用済みの携帯端末は、約7割が産業廃棄物になると言われる。使用しなくなり、家に眠らせたままになる端末も多い。同社はそういった端末を無償回収し、中古端末として使用できるもの(約3割)と廃棄せざるを得ないもの(約3割)、分解し、パーツごとに使用するもの(約3割)に選別。そうして新たに「中古端末」を組み上げたり、売却したレアメタルでほかの中古端末を仕入れる。事業の強みを生かしてリサイクルの手前のリユースを徹底することはもちろん、11月にはそのようにしてまとまった数を確保した在庫を、学校などに格安でレンタルする「スマホカエルプロジェクト」をスタートした。

同プロジェクトをリードする携帯市場のサステナビリティ推進 冨永潤一氏は「政府が子どもに1人1台のPC端末を割り当てるという『ギガ構想』を推進する一方、デジタル格差が問題になっている。私たちの事業を通じて、届けるべき人、困っている人に適切に端末を提供できるのではないか、と考えた」と話す。

地域で端末を募集し、寄付先の学校も明示される。中古端末を手放す立場でも、単に安い値段で売却するより、「顔のわかる誰かの助けになっている」ということが寄付の動機につながる。すでにPTA主導で導入を決定した学校もあるという。教育現場での端末の有無という、デジタル化によって新たに生まれた格差を解消することを目指し「ベルマークのように、人の助けになる輪が広がっていけば」と粟津代表は話す。

将来は「日本版フェアフォン」も

今後は「自社に通信事業を組み込むことを視野に入れ、より使いやすいサービスを目指す」と粟津代表。さらに「ゆくゆくは、環境や人権に徹底的に配慮した『日本版フェアフォン』をいつか発表できれば」と意欲を見せる。

※編集注)フェアフォンはオランダで発売されているエシカルなスマホ。紛争鉱物を使っていないだけでなく、モジュール方式でパーツごとに交換可能にすることで長く使用でき、廃棄物を削減する。現在第3世代が販売されている。

「2008年頃には、中古端末を海外に輸出している中古業者が多かった」と粟津代表は振り返る。日本でほぼ無料で手に入る端末が、海外では数万円の値で売れた。第三者が強制的に回線を契約させるなど、違法な手段で手に入れた新品端末が海外に流されていた事実が報道されたこともある。現在でも「中古の携帯端末」というと「犯罪に使われているのでは」といった負のイメージがつきまとう。粟津代表は当時、「国内で安く仕入れ、海外で高く売るという事業は一切しなかった。その経営判断をしたからこそ、今の会社がある」と胸を張る。

社会の移り変わりとともに注目され始めた中古スマホ市場。新たな課題解決策が今後、どれだけ発掘されるのか、期待が寄せられる。

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沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。