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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

サステナビリティを軸に多様な50超のセッション ――「サステナブル・ブランド国際会議2018東京」

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SB 2018 Tokyoでは、国内外から140人以上の企業トップや専門家が集まり、2日間で50以上のセッションが開かれた

「サステナブル・ブランド国際会議2018東京」(SB 2018 Tokyo)が3月1-2日、ヒルトン東京お台場(東京・港)で開かれた。SBはサステナビリティ(持続可能性)とブランド戦略の統合をテーマに2006年に米カリフォルニア州で生まれ、世界11カ国12都市で開催されている。今年度の世界共通テーマは「グッド・ライフの再定義」。国内外から140人以上の企業トップや専門家が集まり、50以上のセッションが行われた。2日間で昨年の来場者数を超える1640人が集まった。

企業理念は「太陽の光」

オムロンの立石文雄取締役会長

午前中のプレナリーに登壇したオムロンの立石文雄取締役会長は、講演「オムロンの企業理念実践」で、「社会ニーズを先取りし、技術革新をもって社会的課題を解決してきた。人と機械の融合でより良い社会づくりに貢献したい」と話した。

同社は社憲(ミッション)として「われわれの働きでわれわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」を掲げ、それを達成するための価値観(バリュー)の一つに「ソーシャルニーズの創造」を挙げている。

「現場と経営との距離を『企業理念』で近づける」(立石会長)ため、会長自身が各国の現地マネージャーと「会長ダイアログ」を行う。「企業理念は『太陽の光』のようなもの。その光が強いほど、社員、顧客、取引先、社会へと遠くまで届いていく」と語った。

2012年にスタートした「TOGA」と呼ばれる社内表彰制度では、社員が職場ごとにチームを組んで企業理念を実践する取り組みを考える。2012年度の応募は2万件だったのが、2017年度は5万2000件を超える見込みだ。

同じく、プレナリーで講演を行った国連グローバルコンパクトボードメンバーの有馬利男氏は、「あなたのビジネスはどの程度長持ちするだろうか」と問いかけた。ステークホルダーとのかかわり、深刻化する社会課題、投資家の動向などビジネス環境の変化を挙げながら、「SDGs(持続可能な開発目標)に対し、企業が貢献できることはたくさんある」と訴えた。

50を超える多様なセッション

SB 2018 Tokyoでは、国内外から140人以上の企業トップや専門家が集まり、2日間で50以上のセッションが開かれた。その内容は、サステナビリティを軸にSDGs、ESG投資、マーケティング、ブランディング、ダイバーシティ、エネルギー、調達、人権などさまざまだ。

今年は世界共通テーマ「グッド・ライフの再定義」に合わせ、ディメンジョン・アワーが設けられた。「グッド・ホーム」「グッド・モビリティ」「グッド・フード」「グッド・ワークプレイス」「グッド・ディスティネーション」「グッド・シティ」の6つの側面で、企業やNPO、自治体、学術界の有識者らが、それぞれのテーマでこれからのグッド・ライフについて議論した。

課題解決法を考える「CSVアイデアソン」

グラフィックレコーディングされた議論の内容に、参加者は「いいね」シールを貼っていく

今回新たに設けられたのがネスレスペシャルトラック「CSVアイデアソン」だ。「高齢化社会」と「子どもたちの健康づくり」をテーマに、グループごとに議論し、社会課題を解決するビジネスアイデアを披露した。

高齢化社会をテーマにした第1部では、参加した学生は「そもそも高齢者の幸せとは何か」と投げかけた。あるグループは、テクノロジーの発達によって、生産性が向上したり、高齢者の生活のハード面が整ったりするが、やりがいや生きがいを感じられる機会の提供が必要だとした。

「子どもの健康づくり」をテーマにした第2部では、デジタルでは体験できない自然に触れるネイチャープログラム、睡眠の重要性に着目し、栄養士のように「睡眠」を管理する人材を学校に置き、なかば強制的に休ませるプロジェクトなどユニークな提案がされた。

それぞれのテーマの最後には、グラフィックレコーダーの清水淳子さんが議論の内容を一枚の絵にまとめた。プレゼンテーションの内容を振り返りながら、会場は一体感に包まれた。

企業も生活者も「ハッピーヒーロー」に

Futerraの共同創業者ソリティア・タウンセンド氏

ロンドンに拠点を置き、サステナビリティに関するコミュニケーションを行うFuterraの共同創業者ソリティア・タウンセンド氏は、米社会学者のロバート・K・マートン氏が提唱した「自己充足的予言」を紹介した。

自己充足的予言とは、こうなるのではないかといった予測が、予期に適合した行動を起こし、結果として予測された状況が現実化することを指す。

Futerraが26カ国で行った調査によると、日本は世界に比べて運命論者が多いという。ほかの世代に比べて、環境に関する知識を持つ35歳以下の層は、「環境問題はあまりにも大きすぎて自分ではどうにもできない」といった考えを持つ傾向にあるともいう。

ソリティア氏は「持続可能な未来は実現しうる。企業も生活者も楽観的でポジティブな考えをもって、持続可能な社会をリードする『ハッピーヒーロー』になりましょう」と呼びかけた。

◆1日目のレポート「『グッド・ライフ』がブランドの選択基準に」

吉田 広子 (よしだ・ひろこ)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長
大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。

「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。