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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

SB国際会議2017デトロイト報告(2)

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社会からの要請強く

では、企業はなぜこれほどまでに社会課題に取り組ま「なければならない」のだろうか。グローブスキャンやサステナビリティ、SBが調査した「サステナビリティリーダー調査2017」によると、グローバル企業を動かすステークホルダーの中で、圧倒的に存在感が強いのはNGO/NPOだ。

会場ではCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)や、BSR(ビジネス・フォア・ソーシャル・レスポンサビリティ)などの非営利団体のプレゼンスが高かったほか、NGOによる食糧問題、女性の人身売買の問題、インクルージョン(組織が多様性ある人材を受け入れること)などについてのプレゼンテーションも多かった。

今、世界では、WWFやグリーンピースなど国際NGO大手がグローバル企業による乱開発、環境破壊、児童労働や過剰労働などサプライチェーンにおける人権問題を監視し(ウォッチドッグ機能)、企業のネガティブインパクトに対して、告発やキャンペーンなど強い姿勢で臨んでいることも見逃せない動きになっている。

特筆すべきなのは、こうしたNGO/NPOは、日本での社会的な評価は決して高くない一方で、米国や欧州社会では尊敬の対象であり、厚い信頼を受けていることだ。この感覚を共有できないと、日本企業はNGO/NPOとの協働は難しいだろう。

「社会起業家」も、米欧で高い評価を受け続けている。今回のSBデトロイトでは、社会起業家の草分け的存在である米インターフェイス社(再生カーペットの製造・販売)のレイ・アンダーソン創業者(故人)がメインステージで大きく取り上げられた。パタゴニアのイボン・シュイナード創業者らも米国社会から高い評価を受けている。

国連も1984年に設置した「環境と開発に関する世界委員会」(WCED、ブルントラント委員会)以来、先進国企業の乱開発や環境破壊、気候変動、人権問題に警鐘を鳴らし続けてきた。

この流れが、1992 年の地球環境サミット(リオデジャネイロ)で採択された気候変動枠組み条約、同条約の締結国会議(COP)という成果に結びついていく。

2015年12月の第12回COP(COP12、開催地・パリ)では、パリ協定が締結され、「世界の平均気温上昇を2度未満に抑え、世界前提で今世紀後半には、人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする」方向性を打ち出した。

とはいえ、企業はNGO/NPOや国連から強制的にサステナビリティやCSR/CSV活動をさせられているわけではない。SBの参加企業のビジネスパーソンたちは当然、それが大きなビジネスチャンスになることを織り込み済みだ。

2015年に国連が採択したSDGs では、サステナブルなビジネスの王道として「アウトサイド・イン」のアプローチを提示した。アウトサイド・インとは「社会課題起点のビジネス創出」であり、企業にとっても新規のビジネス開拓のための大きなチャンスとなる。

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森 摂 (もり・せつ)

株式会社オルタナ代表取締役社長・編集長。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。訳書に、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナードの経営論「社員をサーフィンに行かせよう」(東洋経済新報社、2007年)がある。一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事。特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長。