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サステナブル・ブランドの作り方

第9回:サステナビリティを追求することが存在意義!? (下)「商品はメディアだった」

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SB-J コラムニスト・足立 直樹

Image credit:Yukiko Matsuoka

先の動画を見ていただければわかりますが、パタゴニアがサプライヤーに求める行動規範とは、以下の4つの分野です。

1. 調達(価格、生産能力、納期)
2. 品質
3. 社会に対する責任
4. 環境に対する責任

1と2は当然ですが、3と4をしっかりと掲げているところがパタゴニアらしいところです。そしてさらにすごいのは、この4つのどれもが同じ重みを持っているということでしょう。

つまり、いくら品質や価格が良くても、社会に対する責任や環境に対する責任が果たせていないサプライヤーからは、調達しない。その考え方が多くのユーザーを惹きつけているのであり、それに必要な価格をユーザーは喜んで負担してくれているのです。

しかしもちろん、これは生易しいことではありありません。この行動規範を守るためにいくつもの課題があることは、パタゴニアの担当者も認めています。サプライヤー工場で働く従業員が、きちんと生活できるような賃金を支払われていることはその一つです。

これはコストに直結する問題です。それをきちんと払ってください、とサプライヤーに要求することで、パタゴニアはサプライヤーにだけでなく、自分たちにも大きなチャレンジを課しているのです。

また、工場だけでなく、時にはサプライチェーン最上流の畑まで遡ってこの規範が守られているかを確認する必要があります。「えっ?そんなことをやっているのか?」と思われるかもしれませんね。信じられなかったらぜひ、パタゴニアのウェブサイト
で、どれか適当な商品を選んでみてください。

商品の通常の説明に加えて、そこにはその商品がどこの工場で作られたのか、それはどんなサプライヤーなのかが、一つひとつ掲載されているはずです。これをパタゴニアでは、「フットプリント・クロニクル」と呼んでいます。

「ようこそフットプリント・クロニクルへ:パタゴニア」

これは相当な自信と、相当な覚悟がなければ出来ないことです。実際、サプライヤー工場を公開することで、あるいはパタゴニアの調達担当者が、サプライヤー工場を訪問して廻る中で、様々な問題が見つかることもあるそうです。

しかし、このように透明性に挑戦することで、社員はもちろん、顧客も一緒にアパレル産業の課題を解決していくことに参加することができます。もちろん、そうした活動に関わった人々自身も変わって行くことでしょう。

サステナビリティへの取り組みを顧客などのステークホルダーに伝え、それを自社のブランドにしていく。この考え方は今やパタゴニアのような、特別な企業だけのものではなくなってきました。それだけ多くの人々が、サステナビリティに価値を感じるようになったのです。

しかし恐らく、パタゴニア自身は、自分たちのサステナビリティへの取り組みをブランドにしようと意図などしていなかったはずです。

むしろ私には、パタゴニアが世の中に本当に届けたいものは「サステナビリティ」という考え方であり、商品はそのメッセージを伝えるためのメディアに過ぎないのではないかとすら思えます。つまり、「サステナビリティを達成すること」が真の目的であり、商品や事業活動はその結果だったということです。

にわかには信じがたいかもしれませんが、そう考えれば、パタゴニアがここまで徹底することも腑が落ちます。また何よりもパタゴニアの商品や事業活動のあり方を見て、それに影響を受けるようになった人たちが、たくさんいることがこれを証明しているようにも思います。

その意味で、多くの企業がサステナブル・ブランドという考え方を持つようになったのも、パタゴニアの活動の成果と言えるかもしれません。

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足立 直樹
足立 直樹 (あだち・なおき)

サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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