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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

小売戦争の勝者は、環境に配慮する企業

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デクスター・ギャルヴィン
アマゾン

激化する小売戦争を勝ち抜くには、企業活動が環境に及ぼす影響を明白にする必要がある。実店舗販売を行う企業とEコマース企業の境目が不明瞭になり、生き残りをかけた小売戦争がし烈化している。これは同時に、低炭素で気候変動への対応能力に優れた未来を目指す企業と、いまだに過去の因習に捉われたままの企業との間の戦いでもある。(翻訳=クローディアー真理)

情報開示を行わないEコマース企業

Eコマース企業はビジネスの未来形というイメージを持ちながらも、意外にも環境に及ぼす影響の公表を怠る傾向が見られる。その一例が米アマゾンだ。

書籍販売業界に革命を起こし、ドローン宅配や「空中倉庫」などイノベーションの最先端を取り入れる企業と認知される一方で、サステナビリティの観点からは、他社よりかなりの後れを取っている。太陽光発電プロジェクトへの参画など、長期的な自然エネルギーへの取り組みを前面にアピールする裏で、実は顧客や株主への裏切りともいえる行為を行っているのだ。

環境保護団体グリーンピースによる、消費者向け電子製品メーカーの環境への影響度をまとめた報告書、「ガイド・トゥ・グリーナー・エレクトロニクス」で、アマゾンは世界で最も透明性が低い企業の1つに挙げられている。

企業の気候変動への取り組み情報を収集し、開示・分析を進める環境NGOであるCDPを通じ、温室効果ガス排出量を公開しないのは、売上高が世界トップ10の小売業者の中で同社だけ。情報開示がなければ説明責任は果たせず、説明責任が果たせないということは、そのサステナビリティへの取り組みは信ぴょう性に欠けるということになる。

サプライチェーンでも環境戦略を

対照的に、CDPを通じ自社のみでなくサプライチェーンにおいても環境戦略に取り組んでいる企業は世界で115社を数える。その1社が米ウォルマート。サプライチェーンからも温室効果ガス排出量の情報を得、公開し、2030年までに排出を1ギガトン抑制する目標を掲げる。同社は目標への進捗状況を顧客、投資家、さらには社会に対し、包み隠さず公表している。

SBTiをもとにした目標設定

同様に、「科学的根拠に基づく目標」を設定する企業も、取り組みの情報公開を行っている。科学と整合し、必要とされる温室効果ガス排出量の削減を企業に促すのが、サイエンス・ベースト・ターゲッツ・イニシアティブ(SBTi)。現在SBTiのもとで、実店舗での販売を行う従来型の小売業者を含め、500社近くがパリ協定に沿った削減目標を掲げ、情報開示のための監査を実施している。

SBTiにおいては、企業の合計排出量の40%がサプライチェーンからのものである場合、ターゲットを設け、削減努力を行わなくてはならないとしている。これを怠る一部のEコマース企業がある一方で、実践する企業は気候変動対策を強化し、サプライチェーンに働きかけ、改革に努める。サプライチェーンこそが、環境に大きなインパクトをもたらす可能性と機会を持つと考えているためだ。

社会全体が求める企業の透明性

日本を含むGDP世界ランキング上位9カ国の約1万人を対象とし、米PRエージェンシーのコーン・コミュニケーションズと、英調査会社のエビキュイティが行った、企業のCSRに対する、消費者の意識調査が「グローバルCSRスタディ2015」だ。

それによれば、81%の対象者が自ら環境保全に貢献する用意があるとしている。2015年の、ニールセンによる世界的なオンライン調査でも、ミレニアル世代とZ世代の4分の3が、たとえ値段が高くても、サステナブルな商品を購入する意思があることを明らかにしている。投資家も、企業が気候変動に関連した物理的・法的リスク、風評被害をより考慮するよう訴える。

こうした傾向に照らすと、環境開示を行わないことは時代に即さないことがよりはっきりしてくる。環境への影響をあいまいなままにすれば、小売業者は顧客と株主の両方を遠ざけることになる。それは最終的に、小売戦争に負けることを意味する。