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英銀行大手、気候変動対策に11兆円拠出

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Image Credit: HSBC

英銀行大手HSBCは6日、気候変動対策に着手し、低炭素社会を目指すための5つの政策を発表した。注目すべき取り組みは、2025年までにサステナビリティに関するプロジェクトに1000億ドル(約11兆円)を拠出することを約束したことだ。(翻訳:梅原 洋陽)

同銀行は、新たな石炭火力発電所の先進国での設置と炭鉱への融資を取りやめた。HSBCは電力の100%を2030年までに自然エネルギー由来のものにし、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を導入していく。

HSBCの最高経営責任者のスチュアート・ガリバー氏は、「私たちは10年以上に渡って欧州やアジアでグリーンボンド分野の拡大に努め、世界で有数の気候に優しいインフラの建設にも携わっている。発表した1000億ドルというのは低炭素社会に向けての変化の重要性を示すものだ。私たちは変革を起こしていく公的・私的機関の世界的なパートナーだ」と語った。

今回の取り組みは、同銀行が環境やサステナビリティに対して融資活動を積み重ねてきた成果だ。また投資家からの要望も強くなっている。

HSBCは近年、自発的にグリーンボンドやソーシャルボンドの発行者の基準を引き上げている。また自社でも5億ユーロのグリーンボンドを発行し、気候変動に関する調査にも積極的だ。過去数年間で、同銀行は水の使用量と炭素放出量をそれぞれ9%減らし、エネルギー消費量に関しては13%の削減に成功している。さらに自然エネルギー生産者と契約を結び、同社の24%の電力を自然エネルギーにすることを決めた。

疑問点を指摘する声も

HSBCの政策の方向性は正しいものの、Fortuneのライターであるナターシャ・バッハ氏が指摘したように、石炭分野における取り組みは画期的だとは言い難い。石炭火力発電所を新たにつくる需要がほとんどない先進国市場での融資の制限に重きを置いているのはあまり意味がないという批判だ。

実際、今年初めに、26のEU加盟国は2020年後以降に新たな石炭火力発電所の建設は停止するという表明をした。

石炭の需要は途上国市場が主であることからも、同銀行が先進国に対してのみ石炭の融資を取りやめることは、一見すると現状維持を密かに望んでいるかのように見える。ドイツ銀行やバンク・オブ・アメリカが全ての石炭に対する融資を減らしていることを考えると、HSBCの政策は十分とは言えないだろう。