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紛争鉱物の情報開示、国際NGOが質低下を指摘

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米国サステナブル・ブランド編集部
Image credit: Arrow

原料に関する人権侵害の防止に取り組む国際環境NGO「As You Sow」のプロジェクト「Responsible Sourcing Network (RSN:責任ある調達のためのネットワーク)は、206社の紛争鉱物の使用に関するデューデリジェンスを分析した新たな報告書を発表した。昨年の結果と比べると、ほとんどの企業がリスク回避のために強力なイニシアティブを示しているのにも関わらず、点数を落としている。(翻訳:梅原 洋陽)

新たな報告書「Mining the Disclosure 2017」は、ドッド・フランク法1502条の要項に則り、米国証券取引委員会(SEC)に提出された紛争鉱物申請を分析している。企業は、リスクマネジメント能力から報告の成果、人権に及ぼす影響に至るまで多岐にわたる24の指標で評価されている。

ランキングの上位を占めたのはテクノロジー企業だった。一方で、石油やガス、鋼鉄、ビジネスサービス、そして建設資材関連の企業は最も低い点数だった。これは、インテルやマイクロソフト、クアルコム、アップル、ロイヤルフィリップスのトップ5社が実施している先進的かつデューデリジェンスに基づく戦略を持っているのに対し、下位の企業は法令遵守のみに焦点を当てていることが背景にある。

指標レベルでは、企業のリスク特定・リスク管理能力に関する劇的な変化が注目されている。3TG(スズ、チタン、タングステン、金)を含む製品を特定する企業努力の平均スコアは、2016年から2017年の間に3分の1以上減少している。同様に、情報開示の質の低下を伴った、サプライヤーの回答の検証のお粗末な提示も見受けられた。

その一方で、紛争鉱物政策の採択や精錬所・精製所に関する対応戦略における改善が報告書に記されている。しかしながら、これらはデューデリジェンスの複雑なプロセスのうちの2つの要素でしかなく、企業のサプライチェーンにおけるすべてのリスクを効果的に軽減できるものにはなっていない。

RSNのディレクター、パトリシア・ジュレヴィッツ氏は、「本気でリスク軽減に取り組むのではなく、ただ単にコンプライアンスの欄にチェックを入れるだけの企業が多いことを知り、落胆している」と語っている。

「投資家たちは、重大な問題に対して形だけの注意が払われた時、会社の他の中核事業努力も同様に弱いかもしれません。遅れている企業は、テクノロジー部門から攻めのデューデリジェンス戦略を見習うべきです」(ジュレヴィッツ氏)

取り組みの低下の主な要因は、トランプ政権がドッド・フランク法1502条の規制撤廃を示唆した不確実な状況にある。この法律制定に関して投資家の支持があったにもかかわらず、将来への不安感のせいで、企業が法的義務を実行しなくとも良いと思うような環境がつくり出されている。

「鉱物採鉱のクリーンなサプライチェーンの確保が重要になる」と報告書の執筆者であるラファエル・ディベルト氏は言う。

「1502条の実施調査に関わらず、企業の取り組みが人権侵害に資金を供給しているのであれば、彼らは自らを重大な危険に晒していることになる」(ディベルト氏)

今年の報告書で評価の低かった企業は、サプライチェーンにおけるデューデリジェンスの取り組みを優先し、そこに投資し続ける必要があるだろう。

状況は望ましくない方向に進んでいるものの、トップ企業は、サプライチェーンの下流、中流、そして上流レベルにおける全てのリスクを和らげる措置を取ることが必須であり、またそれが可能であることも実証し続けている。