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FTSE100企業の6割、環境リスクを報告せず

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Image credit: William Bossen

FTSE100(ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄で構成される時価総額加重平均指数)に関する最新の報告書で、同銘柄の61%の企業が環境問題によるリスク査定の不履行もしくは履行後の結果を年次報告書に記載していなかったことが明らかになった。(翻訳:梅原 洋陽)

英コンサル会社「カーボンクリア」はFTSE100やCAC40、IBEX40の格付けをした報告書「Taking Stock of Sustainability」を発表。気候変動をビジネス上のリスクとして報告書に記載しているFTSE100の企業は39社しかないと指摘している。2016年の報告では23社しか報告していなかったため、報告を行なった企業数はわずかに増加したといえるが、大多数の企業は依然として環境に対する意識が低いようだ。

しかし、オーストラリアのコモンウェルス銀行の気候変動がビジネスに与えるリスクを適切に報告しなかったために提訴された事件からも分かるように、企業の態度も遅かれ早かれ気候変動とビジネスの関係性を考慮するように転換を急がれることになるだろう。

この報告書は、サステナビリティに関する報告を行なっているかどうかに、業種間での隔たりがあることも明らかにしている。小売業、不動産開発や投資会社の平均が61%という高いスコアだった一方、エンジニアリングは28%、建設業が39%と最低のスコアだった。サービス部門においても今後の改善が必要であることを示している。例えば、金融サービス部門では平均スコアが41%で、全体平均の47%を下回っている。

カーボンクリアのマーク・チャドウィックCEOは、「FTSE 100内には、気候変動の課題に取り組むという点で、世界で最も革新的で進歩的な企業がいくつか入っている。しかし大多数の企業は、気候変動によるビジネスへのリスクを報告していないことで株主に不利益を与えている。英国の企業は、これからより多くの課題を解決する必要があり、自らの事業を守っていくために持続可能な戦略を堅持する必要がある」と話した。

そして「これは企業の災難を予言している訳ではない。熟考され、確実に実施されるように管理された持続可能な戦略を持っている企業も存在する。そこにはチャンスがあるのだ。マークス・アンド・スペンサーとその他の企業が例示したベストプラクティスは、私たちの報告書で高く評価されている。彼らのプログラムは、サプライチェーン全体と顧客にとって、いかに費用対効果が高く、コスト面でもプラスになるかということを実証している」と付け加えた。

小売業の大手マークス・アンド・スペンサーは、今年のレポートでトップスコアを獲得し、3つの基準で最高の総合スコア(90%)を獲得した。

同社は再生可能エネルギーの使用と梱包材の削減を含む、事業およびサプライチェーン全体の効率化によって7​​.5億ポンド(約1114憶円)ものコストを節約した同社のサステナビリティ・プログラム(Plan A)が認められ、2015年ももっとも成績の良い会社のうちの一社であった。この成果には、同社の出資者との協議や調整、そしてイノベーション推進のための取り組みも貢献している。

同社のサステナブル・ビジネスのディレクターであるマイク・ベリー氏は、「私たちは、製品、店舗、サプライチェーンを人々、地球、そして地域社会のために、より良くするために過去10年間にわたり大きな進歩を遂げてきた。カーボンクリアの報告書で私たちが達成したことを誇りに思い喜ばしく思っているが、業界全体の変化を促進するためには、まだまだ課題があり、より多くの企業が協業を行う必要があると考えている。6月には、今後10年間で当社が真に持続可能な事業に変革するために、新たな目標を設定したPlan A 2025を立ち上げた」 と話した。

過去3年間FTSE 100をリードしてきた英通信会社のBTグループは88%のスコアで2位、キングフィッシャーとユニリーバは82%で3位を獲得した。その他の成績優秀企業にはロンドン証券取引所グループが含まれ、66%という金融サービス業界で最高のスコアを獲得した。今年の早い段階で、同グループは証券取引所に上場している企業に対して、ESG情報の成功事例を推薦するガイドラインを作成し、投資家たちがどのようなESG情報を知りたがっているのを企業が明確に理解できるように支援した。英ランド・セキュリティーズは76%のポイントで最高の成績をおさめた不動産開発・投資会社に選定され、FTSE 100の総合ランキングで5位にランクされた。

不動産開発および投資分野では、企業の80%が2017年の報告書で、33%が2016年の報告書で気候変動リスク評価を提供した。しかし、気候変動の影響を考慮して事業戦略を策定したのは全体の60%にとどまり、昨年の66%から減少した。
小売業界の企業、特にスーパーマーケットでは、バリューチェーンのレジリエンスや気候変動リスクへの適応など、主要な分野全体で改善が見られ、多くの企業が2017年に向けた中長期的な削減目標を報告した。

金融サービス部門はFTSE 100の主要な部分を占めているが、持続可能性報告では平均して45%を下回った。また、セクター内の企業の70%はカーボン削減目標を設定しているが、サイエンス・ベースド・ターゲットに沿って目標を設定した企業はなかった。しかし、3社に関しては将来的に気候化学に準拠した目標を設定しようとしている。

報告書によると、FTSE 100に上場している企業は、持続可能なビジネス慣行に関するガイダンスを提供しようとするグローバルなイニシアチブを認識し、取り組んで行くという点で、フランスとスペインの企業に遅れをとっている。 FTSE 100企業の42%が現在GRIガイドラインを遵守している。IBEX 35では94%、CAC 40では80%の企業がGRIに署名している。

IBEX 35およびCAC 40企業は、国連の持続可能な開発目標との整合性に関してもより良い成果を上げた。またIBEX 35企業の74%、CAC 40企業の67%と比較して、 FTSE 100企業の48%のみが国連のSDGを支持している。

カーボンクリアの年次研究報告書は、積極的なサステナビリティ計画や環境目標を達成するために真の行動を取っている企業を認知し、強調し、リスク管理と気候変動の機会を最大限に引き出すためのベストプラクティスを共有することを目的としている。