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途上国の女性にのしかかる水の確保――企業の支援策

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Sheila Shayon
Image credit: UNICEF Ethiopia

清潔な飲み水は人間に不可欠だ。米国の女性支援団体ウィメン・スライブ・アライアンスによると、世界のおよそ6億6300万人が安全な水を簡単に利用できていない。(翻訳:梅原 洋陽)

世界では、女性や少女がその家族の水を確保する役割を担っていることが多い。アフリカ諸国、特に農村部では、女性が飲料水を確保する割合は男性の5倍になる。サハラ以南の25カ国のアフリカ諸国でユニセフが実施した2012年の調査によると、女性は毎日1600万時間を水の確保に費やしている。

エチオピアでは、13歳のアイシャのような少女が学校で学ぶ時間、家族と過ごす時間、遊ぶ時間の代わりに、毎日往復8時間もの時間を水の確保に費やしている。WHOは、飲み水、調理、および衛生のために1日1人当たり20―50リットルの水を使用することを推奨している。しかし、干ばつと洪水の被害にあった390万人の人々は、 1日わずか5リットルの水で生き延びることを強いられているのだ。

ユニセフの水と衛生部門の責任者、サンジェイ・ ウィジェセケラ氏は、「少し想像してみてください 。それらの2億時間を、日数に換算すると830万日となり、年数に換算すると22800年以上となります。その時間は、1人の女性が石器時代に空の桶を持って水汲みに出かけ、2016年にやっと水とともに家に到着したようなものです」と説明している。

そして、公衆衛生学の研究者であるベサニ・カルーソー氏は、学者などが中心になりニュースなどを配信するサイト「ザ・カンバセーション(The Conversation)」で、「現在の水の使用パターンが変わらなければ、世界の水の需要は、2030年までに供給量を40%上回ると国連は予測しています。このままでは、女性や少女が日々行っている水汲みは意図的な努力なしでは良くなるとは思えません」と述べている。

安全な水の確保を支援するブランド

全ての人がきれいな水と公衆衛生設備を利用できるようにし、持続可能な管理をしていくことは、国連の2030年までの目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の一つでもある 。世界中の新興企業や研究者が生み出すさまざまなイノベーションに加え、持続可能で清潔な水の供給に強い関心を持つ多くの世界的なブランドは、2015年にSDGsが定まる前に、発展途上国の状況を変えるために動き始めていた。下記にいくつかの例を挙げる。

キューリグ・グリーン・マウンテン
米コーヒーメーカーのキューリグ・グリーン・マウンテンは、2014年に世界中の水の安全を促進する活動をしている有力なNGOを支援するために1100万ドルを提供し、世界的な水危機の長期にわたる複雑な課題に取り組み始めた。

トムス
米国の靴ブランド「トムス(TOMS)」は2014年、トムス・ロースティング・カンパニーを立ち上げ、コーヒー事業に乗り出した。 トムスは、靴を一足買うと途上国の子供たちにも一足靴が贈られるというビジネスモデルを実現させたことでよく知られている。

トムスコーヒーの販売は、豆を供給している国に清潔な水へのアクセスを提供することを目的としている。コーヒーを一杯購入すると、コミュニティが所有する、持続可能な水道システムを設置に役立てられ、1日分の清潔な水を提供する支援につながる。コーヒー豆1袋は1週間分の水に値する。

ジョルジオ・アルマーニ
ジョルジオ・アルマーニとグリーン・クロス・インターナショナルは2011年から協働し、西アフリカとラテンアメリカの水不足地域に持続可能な飲料水設備を提供してきた。2014年には、その「命の水キャンペーン」は、コートジボワールとセネガルにまで拡大した。

ステラ・アルトワのキャンペーンで販売されるグラス

ステラ・アルトワ
2015年初頭、ベルギーのビールメーカーのステラ・アルトワは、女性が何時間もかけて水の確保を行わざるを得ない状況に歯止めをかけることを目的に、同社初の世界的なキャンペーン 「水を買おう(Buy a Lady a Drink)」を開始した。

同社は120万ドルをWater.orgに寄付し、ステラ・アルトの限定版グラスを販売しながら消費者にこのキャンペーンをアピールした。同キャンペーンは、商品が1つ売れるごとにWater.orgを通して、発展途上国の1人に5年間分の安全な水を提供するというものだ。

今年のワールドウォーターデーでは、ステラ・アルトワはナショナルジオグラフィックと協力し、世界の水危機の影響にスポットライトを当てたドキュメンタリー「Our Dream of Water」を制作した。

P&G
また、2015年にP&Gは、2020年までに子どもたちのための安全な飲み水プログラムを通じ、150億リットルの安全な飲料水を提供すると発表した。この目標を達成するために、30分間で10リットルの汚染水を浄化することができるパックを用いた。 同社は、米国で1つパックの発注があるごとに、発展途上国の子どもに3ヵ月分の清潔な水を供給するための寄付を行った。

コーラ―(KOHLER)
水回り商品を取り扱う米コーラーは2016年、非営利のキリスト教のエンジニアリング団体「ウォーターミッション(Water Mission)」と協力し、家庭レベルでの安全な水を確保するためにハイチ、ホンジュラス、ペルーの小さなコミュニティにセラミックの浄水システムを配布した。