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デルやフィリップス、プラスチック循環戦略で成長へ

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Maxine Perella
Image credit: UN Environment/Shawn Heinrichs


海中や海岸、道路などに廃棄されたプラスチックを再利用し、新たな商品に生まれ変わらせることが、市場をけん引する独創的なマーケティング手法になってきている。(翻訳:梅原 洋陽)

P&Gの海洋廃棄プラスチックを活用したシャンプーボトルやワークカジュアルブランド「ティィンバーランド」のX Threadコレクションがいい事例だ。

しかし、製品、特に消費財の再生プラスチックの使用率は簡単に増加したわけではない。ポリマーの種類の多様さや製造業者が求める異なる原材料規格がその理由だ。実際に、取引企業の求める通りの規格で再生プラスチックを精製し供給することに、プラスチック再生工場は頭を抱えている。

衣料品のような移り変わりの速い消費財に目を向けると、新製品の発売予定に合わせて自社の求める通りの質と量の再生プラスチックを調達することは簡単なことではないと分かる。同社は、適切な原料を確保するために最低でも18カ月前から準備するという。

ティンバーランド

X Threadシリーズ Image credit: Timberland

「私たちは、年に2回更新・公表しているクリエイティブディレクションとサステナビリティのガイドラインに合う原料をつくれる業者だけを選んできた。デザイナーがサステナブルではない原料で製造された製品を選んだ場合、ガイドラインにあうようにつくり変えるのだが、そうすると期限的には厳しくなる」と、ティンバーランドのサステナビリティ・ディレクターであるコリーン・ ビエン氏は、米国サステナブル・ブランドの最近のインタビューの中で語っている。

「例えば、サンプルに合う正しい寸法の糸が、時には使えないこともある。この問題を改善するために取り組んだことが、サステナブル・マテリアル・サミットを中国支社で開催することに結びついた。このサミットでは、正しい製品のために選ばれた原料を最初からつくり出すことの必要性を強調している」

ベンチャー企業との連携

ティンバーランドは来春、ハイチの路上で廃棄されていたプラスチックを再利用してつくったX Threadシリーズの商品を増やす準備をしており、再生ポリエステルの使用の拡大を目指しているようだ。また、バイオプラスチックや、廃棄漁網から作られる再生ナイロンを含む新しいタイプの原材料を研究しているともビエン氏は、語った。

一体どのようにしてサプライヤー、特に小規模のベンチャー企業が、ティンバーランドと共に、必要とされる再生プラスチックの品質と有効性を改善していくことができるのか。ビエン氏に尋ねると、「そもそも最初から、スレッド社との最も重要な議論の一つが、それぞれの期待に関する透明性の確保について、そして品質と生産量の保証についてだった」と答えた。

続けて、「ティンバーランドは長年にわたって多くのベンチャー企業と提携してきた。その間、我々は堅固な顧客サポート体制を作り出したが、それはまた、多量な原料の需要を増加させることにつながってしまった」と振り返った。

「このことは、ベンチャー企業がニーズを満たすことができなかった時に課題になる。でも我々は、提携パートナーと共に必要に応じて時間をかけることの大切さ、予想や生産量について議論を進めることの大切さを知っている」

フィリップス

家電メーカーのフィリップスは、自社の製品に使われたプラスチックを使った再生プラスチックの総量を増やそうと試みているもう一つの企業だ。フィリップスは2020年までに、総収益の15%は循環イニシアティブ由来のものにすること、その一部には少なくとも30%の再生プラスチックを使用することを目指している。

同社は、自社の製品に再生プラスチックを導入するのに段階的プロセスを採用した。このプロセスは、一般的なポリマーを重視すること、サプライヤーを確認した上でアプローチすること、そして重要な製品仕様について決定することなどを含んでいる。

フィリップスは、再生プラスチックを使った製品を一からデザインする前に、段階的プロセスから教訓を得ようと既存の製品に再生プラスチックを使用することから始めたのだ。

フィリップスのサステナビリティ・ディレクターのエールコ・スミット氏は、この方法のおかげで生産規模の拡大を早めることができた、という。

「我が社のフローリングケア商品のラインナップでいうと、この段階プロセスを取り入れるまでは、実施までに平均して約2年かかっていた。原材料を探し、あらゆる商品テストを実行し、そして製品化するまでね。今はこのプロセスは改良されて、9ヶ月まで縮小できたんだ」

彼はまた、この方法によって、生産を「『最初から正しいやり方』で進めることができ、多大な時間とお金を節約できた」と付け加えた。

プラスチック再利用の課題

スミット氏は、前進のための肝心な課題は、製品に再生プラスチックを使う際の美的問題、つまり色や仕上がりの限界を解決することだ、という。例えば、固く明るい色は実現が難しい。電気製品で最もよく使われている人気の色、高光沢の濃い黒もこの類に含まれる。つまり問題の一つは、再処理されたプラスチックに含まれる不純物なのだ。

「再利用するためにプラスチックを溶かすなら、これらの微粒子を取り除くためにフィルターにかける必要がある。ここにはまだ改善の余地がある。また、再生プラスチックと純正プラスチックの混合物をグレードの高いプラスチックにするために、さらなる実験が必要だろう、製品の外観を次のレベルに持っていくためにね」とスミット氏は語った。

「我々は、原材料の品質を向上させるために、原料そのもの、または成形技術の発展に関して、再資源業者と協力して取り組んで行く必要があるだろう。どちらの分野にもまだ、必要とされる品質基準に達するまで改革を進める余地がある」

デル

企業は近年ますます、特定のプラスチックを回収し製品をつくることを可能にするクローズドループの解決策を開発しようと試みている。デルのリコネクト・プログラムはそんな事例の一つだ。

集められた電子廃棄物は、デルの提携先である電子再資源業者ウィストロン・グリーン・テク(米・テキサス)へと送られる。同社の集積、再処理、精製技術は、デルにとって回収流通を簡素化するのに非常に役に立っており、IT業界がそっくり真似をしたくなるようなモデルとなっている。

「我々は、クローズドループの再生プラスチックを展開していきたい」とデルの欧州・中東およびアフリカ(EMEA)のコンプライアンス・エンジニアリング及び環境問題のディレクターであるマーカス・ スタッツ氏は語り、「また、オープンループの再生プラスッチックの新しい流れを見極める機会もあると思う」と続けた。

2016年、デルは合計1億6千百万ポンド(約7万キロ)の再生原料を使用した。これは、重さにして、約25機のジャンボジェットに相当する。このうちおよそ3分の1がクローズドループで再処理されたものである。この成果をさらに発展させるためには、さらなる原料改革の前進を必要とするであろう。

「IT産業において我々が必要としているのは、高価値テクニカルプラスチックだ。しかし、消費者たからこれらのテクニカルプラスチックはそんなに多く戻ってこない」とスタッツ氏は説明する。