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ミレニアル世代の考える「パーパス」――企業の役割とは

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エマ・ハリス、ハンナ・ローゼン、メーガン・シュコリャー
Photo: Alexis Brown


ここ数年間、ミレニアル世代の関心や興味を勝ち取ることが多くの企業にとって重要になっています。多くの調査や記事でも、この世代がどんなことを考えて、何を望んでいるのかが分析されています。(翻訳:梅原 洋陽)

これを書いている私たち3人は、この夏、コーズ・ブランディングの第一人者、キャロル・コーン氏が率いるキャロル・コーン・オン・パーパス(CCOP)で一緒に働いているミレニアル世代の学生です。

企業が、ミレニアル世代の価値観に中心に事業を展開したら、世界はどのようになるのでしょうか。

そう考えてみて分かったことは、私たちのものの見方が、パーパスがなぜ必要なのかを浮き彫りにしているということでした。パーパスとは、つまり、私たちが目指す存在意義や、私たち自身にもそして他者に対しても良い行いをしたいという理由です。

ミレニアル世代にとって「人生を生きる」ということは、個人がそれぞれのパーパスや情熱、価値観、そして大志を家に置いてくるのではなく、職場に持ってくるような世界をつくることだと思います。

ミレニアル世代の私たちは、新たな社会規範を生み出す存在であり、私たちの望むキャリアとは、良いことをしながら幸せに生きるということです。

メーガン・シュコリャー
コーネル大学(ニューヨーク)2年生 労使関係専攻

私の周りの学生は業種を問わず、大企業に否定的な傾向があります。スターバックスのカップとiPhoneを手に持ってキャンパスを歩いているのにも関わらずです。

しかしそれでも、スターバックスやアップル、そして若者向けセレクトショップチェーン「アーバン・アウトフィッターズ」が若者に支持されるのはなぜでしょうか。

この3社に共通していることは、ミレニアル世代やZ世代(ポストミレニアル世代)に対して大きなキャンペーンを定期的に展開し、私たちが最も関心のある事柄を支援しているという点です。

スターバックスはサステナブルで、コミュニティを重要視し、社会的責任を負う企業であることを消費者に分かりやすく伝えています。アップルは自然エネルギーを使用し、製品をリサイクル可能にしたり、エイズ対策支活動を行なっています。アーバン・アウトフィッターズはリサイクル可能なリーバイスのジーンズを販売するだけでなく、さまざまな社会的な活動を支援する服を扱っています。

フォーブス誌の発表のように、ミレニアル世代が2020年までに主要な購買力を握るということを考えると、CSRと企業の中心にパーパスを明確に据えることが、この世代の支持を得る秘訣でしょう。

ハンナ・ローゼン 
バックネル大学(ペンシルバニア)4年生 政治学・人類学専攻

これまでに受けてきた教育から、社会のさまざまな側面を知り、自分が信じることへの情熱を強く持つようになりました。社会環境、政治、そしてビジネスがどのように相互に作用し、私達の生きる世界に影響を与えるかに強い関心を持っています。

環境破壊を解決するために何かしないといけないことは誰にとっても明らかです。後戻りできない所まで来てしまっているという人さえいます。しかし、地球への影響を減らすような大きなことはできないと感じてしまうために、実際には何もしないという人はとても多いと思います。特に、私たちの政府が大きな変革を起こすために何もしていないように見えてしまうと気が滅入ってしまいます。

こうしたことから、CSRは、一人では起こせない大きな流れを生むものだと思います。利益を追求するビジネスは、社会に例外なく影響を与えていますが、同時に良い影響力があるべきです。環境や生活をより良くするために、成長を求める大企業と戦うということは有効ではありません。そうではなく、必要な変化を起こすために企業を活用するべきです。

例えば、アメリカでは電力消費が温室効果ガス排出の最大の要因です。もし多くの企業が、米テスラモーターズのやろうとしている主要な工場を太陽光発電で動かす取り組みを真似ていけば、二酸化炭素の排出量は激減するでしょう。仮に自動車メーカーだけでの取り組みになったとしても、排出量は大幅に減らせるはずです。

環境破壊だけではなく、企業による従業員や動物の不当な扱い、ずさんな廃棄物管理などの問題もあります。もし企業が全社レベルでこれらの問題に対処し始めたら、社会が必要としているかつてない変革への第一歩になるはずです。巨大な営利企業は社会全体に対して大きな影響力を持っています。企業の目的を明確に持った取り組みは、私達の世代が引き起こせる、地球にとってもとてつもなく大きな影響になるはずです。

エマ・ハリス
キャロル・コーン・オン・パーパス勤務、スキッドモアカレッジ大学院・政治学専攻

女性、ミレニアル世代、旅好き、リベラル・アーツ大学卒業。これらは私自身を説明するときに使う単語です。私の全ての決断は私の内なるパーパスに基づいていて、それは仕事の合間にあの橋まで散歩するといった小さな決断も同様です。

私は、パーパスをスペクトルのように捉えていて、片側には「良い行い」が、そしてもう一方には「良く生きる」があると考えています。私の「良い行い」と「良く生きる」というモットーは、いくつかの異なる要素から成り立っています。地域に貢献し、他の人の助けになることや知らない国や場所に出かけ、ただ観察するのではなくその地域の文化に浸かること。心をオープンにし、平凡という枠にとらわれないようにすること。そして、私の生きる社会に足跡を残すことです。

私のこの世界での役割についての考え方に大きく影響を与えた出来事に、2014年にイギリスの女優でありUN Womenの親善大使であるエマ・ワトソンが協働して開催したUN WomenのHeForSheキャンペーンがあります。

彼女はジェンダーの不平等さに関するスピーチの中で、彼女自身を奮い立たせたという2つのシンプルな質問について説明しました。

「私でなければ、誰が?」「今でなければ、いつ?」

彼女のこの言葉は今の今まで私の中に響き続けています。シンプルでありながらも、この2つの質問は私自身の心の底からの責任を呼び起こし、正直な自分との対話を促してくれました。

もしこのような私欲のない責任を企業のリーダーたちが追求していけば、私たちの未来は不確実なものではなく、変えられるものです。

私の住みたい世界は、企業が社会的、環境的、政治的問題を乗り越えるために協働する世の中です。最近のニュースのように、気候変動問題に取り組むために、ビジネスリーダーたちが結束したという出来事は希望を持たせてくれます。

結論

パーパスを持って人生を生き、企業の土台にパーパスを浸透させたいという考え方のもとに、私たちはここで働いています。

今回分かったことは、ミレニアル世代やZ世代(ポストミレニアル世代)は、自分では達成できないことを可能にしてくれる企業で働きたいと単純に考えているわけではなく、仕事を通してより大きなパーパスを探したいと考えているということです。そして企業には、事業を通して、より大きなパーパスのために生きることを実現させて欲しいと望んでいます。

企業はこの考え方を取り入れなければ、取り残されてしまうでしょう。

大学への進学支援を行う団体BridgeEduの設立者であり、ニューヨーク市で貧困対策を行うロビンフッド財団のウェス・ムーアCEOは「人生を生きるとは毎日をどのように生きるかです。正いであろう事柄に背を向けて、あえて異なる選択をする人はあまりいません」と話しています。

ミレニアル世代は、企業に対して、事業を通して、私たちがより大きなパーパスのために生きられるような社会を実現して欲しいと望んでいます。なぜパーパスを家に置いてこないといけないのでしょうか。パーパスは人生のあらゆるところで反映されるべきです。