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グローバル企業の森林破壊に株主の圧力高まる

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米国サステナブル・ブランド編集部
Image Credit: Union of Concerned Scientists

英国のシンクタンク「グローバル・キャノピー・プログラム(GCP)」はこのほど、投資家がサステナビリティと気候変動リスクをこれまで以上に重要視し、大手グローバル企業に対して森林破壊などの森林への負荷を減少させるよう働きかける傾向があるという分析結果を新たに発表した。(翻訳:梅原 洋陽)

サステナビリティを推進する米NPOセリーズ(Ceres)の投資家ネットワークに属している投資家が提案した株主総会決議を分析したところによると、2011年から2017年の間に行われた株主提案の半数以上(52%)が企業のサプライチェーンにおける森林破壊のリスクに対応するよう求めており、企業に対して何らかの形でサステナビリティに取り組むよう促している。

米国企業では、クラフトやデュポン、モンデリーズのような知名度が高く、大豆やパーム油、木材、酪農製品を主力とする森林破壊のリスクが高い企業の株主総会決議が分析の対象になっていた。

その企業のうちの3分の2以上が、GCPが行うフォレスト500プロジェクトで、熱帯雨林の破壊を終らせるにあたり最も影響力を持つ企業250社の中にランクインしている。

「投資家たちが、サプライチェーンにおける森林破壊リスクに関して、企業と協働している現状は実に心強いです」とGCPのシニア・サステナブル・ファイナンス・アソシエイツであるトム・ブレグマン氏は述べている。

「毎日のように熱帯雨林は大規模な農作物の取引のために更地にされ、天候や食の安全、水の供給の安全に影響を及ぼしているのです。投資家の関与は、熱帯雨林の破壊を減少させるための企業方針の策定や実践を促進させるきっかけになるでしょう」(ブレグマン氏)

企業の対応

株主からの提案は、以前にも増して意欲的、そして具体的になってきている。株主らは、世界的にも熱帯雨林破壊の主な原因となっているパーム油や大豆、パルプや紙、木材や牧牛といったものを含む全サプライチェーンにおける森林破壊リスクの解決に真摯に取り組むよう企業に働きかけている。具体的な期限を提示した実施プランや、特定の種の生態系に着目したものなど、詳細な提案も増えつつある。

分析された株主提案の過半数は、企業の問題への取り組みに対するコミットメントを促すものだったが、定時株主総会で議決される前に取り下げられた。議案に入った提案のうち52%は、森林破壊問題に取り組む企業のコミットメントへとつながった。例えば、米食品商社アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は2015年の株主総会の直後、より堅固で期限を設けたコミットメントを表明し、大豆とパーム油に関連する森林破壊を一切なくす政策を導入した。

2016年のフォレスト500で評価された企業のうち70%以上が、自社のサプライチェーンにおいて、少なくとも1つの商品の森林破壊リスクを低減する取り組みを行うための具体策を掲げている。

分析結果は、英大手会計事務所、EY(アーンスト・アンド・ヤング)による非財務実績と投資家の行動の関連性について調べた最新の研究とも一致する。EYは、投資家が非財務実績の指標を用いて投資価値を判断していると発表した。EYの報告書によると、環境、社会、ガバナンス(ESG)の課題に注目するということは、企業のオペレーショナル・エクセレンスを測ることだという。

仏メガバンクのBNPパリバが、森林破壊がこれ以上進まないようにするためにとった措置も、GCP の分析結果と合致する。今年の初夏には、世界の大手金融機関が、融資の前提条件にパーム油の責任ある生産を行っていることを掲げた新たなパーム油に関する政策を発表している。