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EY報告書、「存在意義を伝えること」が生き残りの鍵

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米国サステナブル・ブランド編集部
Image Credit: EY

監査法人アーンスト・アンド・ヤング(EY)の最新の報告書によると、調査対象となったビジネスリーダーの大多数は「確固たる企業目的(存在意義)を持つこと」を重要視しており、「株主に多くの利益をもたらすことが最重要だ」と回答した人々は少数派にとどまった。同報告書は、世界各国の先進国及び新興市場における、さまざまな業界を代表する1470人を対象に行われた調査に基づいている。この調査は、「利益を上げることではなく、存在意義を持つこと」が変動の激しい、不安定な世界経済の中で成功する鍵であることを明らかにした。(翻訳:梅原 洋陽)

この報告書は、企業や組織の「存在意義」の捉え方に著しい変化が起きていることを明らかにした。調査の回答者の33%は「組織の存在意義」を「顧客に利益をもたらすことである」と答え、15%は「株の価値を高めること」、11%は「従業員に利益をもたらすこと」だと回答した。これに対し、40%は「組織の存在意義」を「さまざまなステークホルダーに価値を生み出すこと、または、社会での存在意義を高めること」だと答えた。これらの回答はいずれも単一のステークホルダーグループに焦点を当てていた。

なぜこのような変化が起こったのだろうか。その答えはレジリエンス(回復力)にある。企業の存在意義を幅広く定義し、それを組織内で体現している企業の68%は、「明確な社会的存在意義も持つことが、変化の激しい混乱の時代の中で、常に革新をもたらす能力を与えてくれる」と答えた。

さらに同調査は、多様な存在意義を組織のDNAに深く根付かせている97%の企業は、そう取り組むことにより、さまざまな点において組織の価値が確実に高まったと報告している。例えば、ブランドの価値と評価を保つために顧客のロイヤルティを高めること、新たに革新的な製品を開発する能力を養うことは、組織の存在意義を企業活動の中心に組み込むことによって可能になる。その結果、企業は競争力を維持しながら厳しい経済環境下においても価値を生み出し続けることができると伝えている。

ヴァレリー・ケラー氏(Global Lead, EY Beacon Institute and EY Global Markets)は、「この調査によって、企業が本質的な存在意義を追及し続けることで、組織が得られる真の利点が示されました。また組織の『ビジネスVS サステナビリティ』という二項対立の迷信をこの調査結果は覆しました。調査の中で、存在意義を持っていると答えた75%の組織は、存在意義を組織内に浸透させることは長期的にだけではなく、短期的にも価値を生み出すと回答しました」と語った。

言葉だけで終わらせないためには

しかし、ケラー氏によると、「企業は声高に組織の存在意義を美談として掲げるだけでは十分でなく、実際にその企業の戦略、製品、サービス、顧客と従業員の経験全てがそれらを体現するものである必要があります」と述べ、「つまり、行動を伴わない単に美しく飾られた言葉だけでは、株主に過度な期待を持たせる恐れがあり、彼らの信頼を失い、機会を逃してしまう危険性があります」と加えた。

このレポートでEYは、存在意義を言葉だけに留めずに実際に体現するための道筋を4つのステップに絞り以下のように提唱している。

1)それぞれのステークホルダーのニーズに対応した社会的意義を明確にし、組織の全活動がその意義を体現するものであること。

2)戦略や業務は企業の社会的意義を基に計画され、そして意思決定はその目的に沿って行うこと。

3)組織は常に自らの立ち位置を確認し、何を改善すべきかを分析すること。

4)社会的意義を組織の文化の中心に位置づけ、従業員が会社の存在意義に意味を見出し、当事者意識を持つこと。

ケラー氏は「地政学的な変化や、経済的な変動、テクノロジーの混乱は、新たなビジネスに変革をもたらす触媒です。このような情勢の中で、最も成功を収める企業は、影響を及ぼす人々-顧客、従業員そしてより広い社会-に焦点を当てることのできる企業です」と語った。