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発足から一年、SDGsを牽引する企業は?

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Katie McBeth

国連は、地球と人々の暮らしをより良くするための目標を15年ごとに掲げている。持続可能な開発目標(SDGs、Sustainable Development Goals)は、2015年後半に新たに掲げられた目標だ。SDGsは、気候変動対策や貧困対策、医療アクセスの充実化、不平等の解消、持続可能な発展など全世界を対象にしている。(編集・翻訳:オルタナ編集部=小松 遥香)

SDGsが発効され一年が経過し、期待感や世界の関心も少しずつ高まっているようだ。COP21でも、世界中の企業と人が一つの目標に向かって動く団結力を垣間見ることができた。取り組みは始まったばかりだが、どんな企業が人類と地球の持続可能な発展のために実際に動いているのか見てみよう。

大気汚染と保健問題

国連は世界の人々の保健に関して5つの目標を掲げている。すべての人の健康、女性のヘルスケアの充実、貧困問題の解決、持続可能な農業や食糧制度、大気汚染の改善だ。

世界中の企業が大気汚染の解消に取り組んでいるが、国連の最新レポートによると、このままでは当初の計画で決められている2030年までの目標を達成できないという。

「マラケシュで11月に開催されたCOP22を皮切りに、新たな手段を講じていかなければ、人類にとって悲劇的な状況が起き、大きな後悔をすることになるだろう」と国連環境計画(UNEP)のエリック・ソルヘイム事務局長は話す。

「飢餓や貧困、病気、紛争に直面する気候変動難民は増え続けている。この現実は、我々の取り組みが失敗しているということを示している。この数字が意味するのは、もっと早く対策を取っていかなければならないということだ」(エリック・ソルヘイム事務局長)

企業と地域が協働してSDGsに取りんでいる好事例もある。

[IBMと南アフリカ・ヨハネスブルグ]
IBMは、新しく先進的な事業を行っている企業だ。近年は、IoTやコグニティブ・コンピューティング技術を進化させてきた。同社は、成長目覚ましいヨハネスブルグと組んで市民の健康対策を実施。大気汚染を測定するスマートグリッド(次世代送電網)をつくり、どう対策をとっていく必要があるか提言する。成長を続ける南アフリカだからこそ、両者が組むことは間違いなくスマートグリッド都市の重要性と影響力を世界に示すことになる。

[英バーミンガム市議会]
英国第二の都市、バーミンガムは最近、ベンチャー企業が集まる地域になってきている。英国やEUが掲げるクリーン・エア・ゾーン法は、同国の5都市に対し、2020年までに大気汚染を改善して大気環境を一定の基準に到達させるように求めている。同市議会はすでに3つの計画を掲げており、自転車の利用率を増やし、公共の交通網を充実させ、バスなどのエンジンを取り換えることで窒素酸化物の削減に努めている。

[モレクール(Molekule)]
サンフランシスコに拠点を置くスタートアップ・モレクールは空気清浄機を販売、一般消費者向けに大気環境の改善を提案している。同社の特許取得製品は室内の汚染物質を分子レベルに分解することができ、米環境保護庁も支持している。製品の販売は2017年からだが、製品開発を進め、世界中の職場環境を改善するために、事業規模を拡大する方針だ。

持続可能なエネルギーと生産

SDGsが発効する前から、持続可能な生産体制への取り組みは一般的になってきている。「企業はサステナビリティの長期的価値に注目し始めている」とメリルハースト大学(米・オレゴン)は発表している。企業は、これまでのやり方をしばらくは続けながらも、トリプルボトムラインに取り組み、新たな体制にさらなる投資を行っていくだろう。

企業は利益を出すことを優先しながらも、事業を通して、より健康的で持続可能な社会を築いている。影響力のある多くの企業が、この1年で環境負荷を下げる計画を立て、取り組みを始めている。

[エイジーウッドエナジー(Azwood Energy、ニュージーランド)]
バイオ燃料を取り扱うエイジーウッドエナジーは約13年前、石炭からカーボンニュートラルな木の廃材に切り替えを行った。今や、同社は地域のリーディングカンパニーであり、ニュージーランドの田舎から工業地帯まで多くの家庭に燃料を供給している。石炭に代わる燃料として、他の企業も将来的に木材を使うようになるような流れをつくっていきたいと考えている。

[ゼネラルモーターズの2050年に向けた目標]
ゼネラルモーターズは、エネルギー計画で高い目標を掲げている。同社は2016年11月、2050年までに再生可能エネルギーに完全に切り替えると発表した。大胆な目標だが、実現に向けて少しずつ動き出している。中国にある工場では、太陽光パネルを屋根や車庫に備え付け、風力発電所も建設する計画だ。今後4年間で125メガワットを再生可能エネルギーで補うという。石炭燃料の価格が上がることを考えると、今取り組むことによって、将来的に数十億ドルの経費を削減できる見通しだ。

[アカマイ・テクノロジー]
アカマイ(米・マサチューセッツ)はコンテンツ・デリバリー・ネットワーク事業を行う企業だ。2020年までに会社で使用する燃料の50%を再生可能エネルギーに変える計画だ。再生可能エネルギー事業を行う会社と共同して固定レートをつくり、二酸化炭素の排出は、2015年比を下回るよう目指していく。

エシカルなビジネスとリーディングカンパニー

SDGsの17目標の多くが、世界の社会的正義や平等に関するものだ。しかし、ビジネスがどう世界の人々の生活を良くできるのだろうか。

例えば、さまざまな国の人が働くグローバル企業は、グローバルな倫理規定を設けることで、事業のあらゆる点で水準を高めることができる。企業の役割は、グローバル市場で利益を上げるだけではない。事業全体の透明性を確保すること、適切な賃金を支払うこと、社員の家族の生活水準を上げることなど、労働に関わるコミュニティをより良くできるのだ。そういう企業が、エシカルな市場で一歩先を行くことができる。

[パタゴニアとフェアトレード]
パタゴニアは長年にわたりエシカルな事業運営を行ってきた。同社は、今なおフェアトレードや国内外の雇用に関して公正な待遇を確保するなど、先を行く取り組みをしている。人材への投資を大切にしており、インドの工場では労働者のために無料保育や託児所などを設置した。衣服の製造過程では、労働者や消費者の安全性に配慮し、有害な化学物質は使わず、環境に配慮した化学物質「グリーン・ケミカル」を使っている。

[タタ・グループ(インド)]
タタ・グループは、製鉄や電力などさまざまな事業を手掛けるインド最大の財閥だ。ここ3年間、世界で最も倫理的な企業の一つに選ばれている。同社の歴史は1800年代中期頃までさかのぼる。倫理規定は、ラタン・タタ会長が1998年につくったものだ。同社の規定や法は厳格ながらも、時代の流れや変化に対応して改訂できるようになっている。他のグローバル企業にとって手本となる企業でありたいと考えており、タタの名前を使うすべての人は、同社の規定を守ることを求めている。

事業をより良く運営し続けるために、ここに挙げた企業のように志を持って事業を行う会社がある。こうした企業は、消費者の関心を惹きつけるだけでなく、地球やグローバル社会への影響にも配慮している。

国連はSDGsをさらに推進していくだろう。企業も耳を傾ける必要がある。2030年はさほど遠い未来ではない。多くの人が、社会課題が解決され、現状よりも良くなることを期待している。