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サステナブル経営を支える人的資本をどう評価するか?

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Talia Arbit
Image credit: World Economic Forum

「社員は最大の資本だ」という言葉を耳にしたことがあるだろう。ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏をはじめゼロックスのアン・マルケイヒー前CEOなど多くのビジネスリーダーも使っている言葉だ。米ゴールドマン・サックスのホームページにも会社概要の冒頭に「社員が最大の資本である」と書かれている。(編集・翻訳:オルタナ編集部=小松遥香)

人的資本の重要性はビジネスでよく強調されるが、どうすれば社員は最大の資本になるのだろうか。

人的資本の評価については、11月14日に開催されたサステナブル・ブランド・ボストンのワークショップ「人材資本の評価――ソートリーダーシップと未来を見据えるビジョン」でもテーマとして取り上げられた。人的資本の評価がいかに重要か、白か黒か単純に決められないものをどう具体的に評価するかなどが話し合われた。

登壇したのは、ヒューマンバリュー総合研究所のステフ・シャルマー常務取締役や投資会社HIPインベスターの創業者ポール・ハーマンCEO、それからシーザーズ・エンターテインメントのグウェン・ミギタ・サステナビリティ兼コーポレート・シティズンシップ統括責任者などだ。

財務諸表と人的資本

ワークショップは、社員を資本ではなく経費と捉えている典型的な企業のバランス・シートを検証することから始まった。

「バランス・シートを見れば、企業が社員にどのような価値を置いているか分かる。製品をつくるのも社員だし、それを売るのも社員。社員がいなければビジネスは成り立たない。じゃあ財務諸表のどこに社員を入れればいいのか」とシャルマー氏は問いかけた。

「ローリスク・ハイリターンの最強のポートフォリオとは、人材を資本と捉え、能力の成長に投資することだ」(ステフ・シャルマー常務取締役)

そういう企業の例は、フォーチュン誌の「最も働きがいのある会社ベスト100」に掲載されている。ラッセル・インベストメント・グループの調査によると、ベスト100社のポートフォリオは株価よりも2倍ほど指標を上回るアウトパフォームで、従業員への投資は財務的観点からも有益だと考えられている。

続いて、ミギタ氏はシーザーズが実践する2つの人的投資について説明した。同社では、従業員の健康管理プログラムに重点を置いている。他の企業では40%の社員しか参加していない同プログラムに同社では80%の社員が参加している。給与も米国の平均企業の2.8倍の額を支払っている。特筆すべきは、同社の利益が米国のなかでも桁違いに高いのだ。

「人材への投資は、社員のつなぎ留めや新たな人材の獲得、企業の成長にも効果がある」と同氏は強調した。

企業の長期的でサステナブルな成長に貢献できる人材かを評価する

ストークのバーク・ペンバートン代表は、同社がどう人的資本をスコアカードで評価しているか紹介した。ストークは垂直統合型の不動産業を運営しており、「世界にとってベストを尽くす会社」が認定されるBコーポレーション認証を取得している企業だ。

従業員はスコアカードで、企業の長期的でサステナブルな成長に関わる6つの特性についてそれぞれを評価し合う。そのスコアのランキングに基づいて、社内の利益分配率が決まる。スコアカードの評価者を管理職から同僚に変えるというのは、従来の業績管理システムを揺り動かすものだ。

ペンバートン氏は、「いつも一緒に働いている同僚の方が誰がどう実際に会社に利益をもたらしているかを知っている」と説明した。

価値を創造するものを評価する

その他にも、より具体的に人的資本を評価するための簡単な戦略が紹介された。例えば、従業員を財務諸表上で資産として捉えることだ。シャルマー氏は、結果や基準ではなく従業員の判断に重きをおいて意思決定を行っている企業を参考にするよう聴衆に話した。

「財務上の壁が立ちはだかるかもしれないが、何が価値を生み出さないかを評価するのではなく、価値を創造するものを評価すべきだ」と続けた。