サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

IBMワトソンとセサミストリートが目指す、幼児教育

  • Twitter
  • Facebook
米国サステナブル・ブランド編集部
エルモとIBMワトソンインターネット部長のハリエット・グリーン氏 Image credit: John O'Boyle, Feature Photo Service for IBM

セサミストリートを手掛ける教育NPOセサミワークショップとIBMは、就学前の幼児教育の発展を目的に、新たな教育プラットフォームと製品の開発を行う。同NPOが培ってきた早期幼児教育の経験に加えて、人工知能「IBMワトソン」の技術を使ってプロジェクトを進めていく。生まれて5歳になるまでの期間は発達や学習において極めて重要だが、この臨界期にどう教育をすれば一番いいのかまだ分からないことが多い。セサミワークショップとIBMの取り組みは早期教育発展の一助となるかもしれない。(翻訳・編集:オルタナ編集部=小松遥香)

新世代の幼児教育

両社は3年間の契約で合意しており、就学前の子どもの学習傾向や能力に合わせた教育サービスなどを提供する。コグニティブ・コンピューティングのIBMワトソンは、人間の言語を理解し、経験から学習し、知識を蓄えることで応用行動をとることができる。発表によると、優秀な教師や学者、研究者、技術者、ゲーマーやパフォーマー、メディア関係者などの能力を集結させ、ブレインストーミングの要領で、テスト結果のフィードバックとシステム自体の学習機能を使い、それぞれの子どもに最適な教育を行う。

「子どもの知能や性格、スキルの基盤は生まれてから数年のうちに形成されるため、5歳までの期間が非常に重要です」とハーバード教育大学院「心・脳・教育」のプロジェクトアドバイサー兼リーダーのトッド・ローズ博士は話す。

「早期幼児教育には膨大な可能性があります。本来、未就学児の学習方法は個々によって異なるのが普通です。今回の2社の協働によって、学習進度を調整しながら、子ども達が興味を持つセサミストリートを使って、どの子どもにも合った学習が可能になります。つまり、個別の教育方法によってどの子どもの学習能力も高められるようになります」と同博士は続ける。

今回の事業が実現できるのは、セサミワークショップが45年間で蓄積してきた幼児教育に関する調査と1000を超える研究結果の存在が大きい。その経験とIBMワトソンの自然言語処理やパターン認識の機能が融合することで、幼児期に両親や先生が果たす役割を補うような高度な個別教育システムの構築が可能になる。ワトソンは、自ら学習し、非特定多数の学習パターンを知ることで自身のシステムの精度を磨いていける。

すべての子どもに、質の高い幼児教育を

IBMの「ワトソンIoT・コマース・教育部門」の部長ハリエット・グリーンは、以下のように話した。

「ワトソンは、子どもの学習という社会で本当に必要とされていて重要な課題に独自のやり方で挑戦できるのです。今回のプロジェクトで、ワトソンがどれだけの能力を発揮できるかは未知数です。セサミワークショップと組むことで、『先生が教えて、子どもが学ぶ』という従来の方法を変えたいと思っています。そして、数百万人の子どもの人生と教育に何らかのインパクトを与えていきたいです」

セサミワークショップとIBMは、将来的に家庭や学校で使えるようにするため、様々なプラットフォームとインターフェイスの開発を繰り返していくという。セサミワークショップは、すでに子どもたちからの認知度が高い。アルファベットにはじまり、健康的な食事や自閉症についてなど子どもが様々なことを学ぶ手助けをしている。

セサミワークショップCEOのジェフリー・ダン氏は、「今回のような教育とテクノロジーの一体化は、世界中の幼児教育が発展するために欠かせないと思っています」と話す。

「一世代前、私たちはどこにでもあるテレビを通して、上流・中流家庭の子どもが通常受けている教育をどんな家庭環境の子ども達でも受けられるようにしてきました。大きな成果があったと思っています。これからは、IBMのワトソンを使い、次世代の教育ツールの開発を目指します。我々の目標は、どんな家庭の子どもであっても、臨界期の5歳までの間に個々の成長に合った中身のある教育の機会をつくることです」と続けた。

ワトソンのコグニティブ・コンピューティング・システムは、この他にも様々な用途で使える。昨年の夏には、米ドラッグストアのCVS HealthがIBMワトソンと予測分析を利用して、慢性疾患患者のケアマネジメントサービスを行うと発表した。ワトソンの導入で、診断書や処方箋、環境要因などの様々な情報を収集して、迅速かつ便利に健康管理ができるようになる。この2社の協定により、ヘルスケアに携わる人々は、既存のサービスよりさらに進化したケアマネジメントを行えるようになるだろう。