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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
フランス

SBパリでサステナビリティはどのように語られたのか

「サステナブル・ブランド国際会議パリ」は、ルーブル美術館地下の会場で開催された。

「東京で開催されたSB国際会議とは、カンファレンスの在り方そのものが違った」。「サステナブル・ブランド国際会議2019パリ」に参加した足立直樹・SB2019Tokyoサステナビリティ・プロデューサーはこう話す。持続可能性の先進地域・ヨーロッパでは、どのような議論が繰り広げられていたのか。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

「プレゼン」が少ない国際会議

「サステナブル・ブランド国際会議2019パリ」は今年4月、3日間に渡って開催された。登壇者は80人以上、参加者は延べ1500人以上にのぼった。視察した足立氏は初日、その会場やセッションを見て困惑したという。

プレナリーセッションが始まると、まずファッションショーのような会場の「花道」に「Chief Poetic Officer」が登場した。あえて訳すなら最高詩想責任者、だろうか。サステナビリティをテーマにした詩によって参加者をインスパイアするという。続く基調講演では「花道」に用意されたスツールに大企業のCEOなど数名が着席し、トークが始まった。日本で基調講演と言えば、一人が登壇し、時にはパワーポイントを使い、会全体のテーマに沿った講演を行うものだ。

さらにプレナリーセッションの最後には、音楽と映像で宇宙を体験するプログラムが上演される。解説や講義があるわけではなく、会場の参加者はただ音楽と映像に身を委ねている。ブレイクアウトセッションではパワーポイントを利用した「スピーチ」をする登壇者もいたが、大半はやはり数名での「トーク」に終始したという。

自社の取り組みや成果を事例としてまとめ発表をする「プレゼン型」の登壇者は少数だ。オーディエンスに「プレゼン」をせずに、この会場では一体何が行われているのか――。

リアルタイムで議論を創造する場所

資料を使用せず、ステージ上でトークをするプレナリーセッションの登壇者

会議の2日目、注意深く登壇者の「トーク」を聞いていると、ひとつの共通点が見えてきた。登壇者の多くが話しているのは完成した何か、成果として現れた結果ではない。彼らの未完成のアイデアや、結果の出ていない途上の活動だ。「『自分は、自社はこういうことを考えている。みんなはどう思う?アイデアや意見を聞かせて』という、リアルタイムでの議論の創造こそ、SBパリで行われていたことでした」と足立氏は話す。

だからこそ、基調講演すらパネルディスカッション形式だし、最初に登場するのが想像力とイメージを膨らませる詩人だった。宇宙の映像に解説がないのも、「参加者が何を考えるか」に重きが置かれているためだ。企業のCEOや団体の代表、トップに座る人物に、ライブでインタビューをするというトラックもあった。もちろん原稿はなく、会場の参加者からも質問が飛ぶ。

「参加者はクリエイティビティを重視して新しいものを生み出そうとしていたのです。それがわかると、SB2019パリは深堀した議論が活発に行われる、素晴らしい会場でした」(足立氏)

一歩進んだアイデアの宝庫

「都市」がテーマの「CITY HUB」はグラフィックレコーディングで記録された。自然と共生する有機的なまちづくりのアイデア

課題への接続として設定されたテーマは7つ。「ホーム」「ライフスタイル」「栄養」「都市」「スポーツ」「金融」「科学・テクノロジー」だ。特に「都市」のテーマでは、日本ではあまり議論されていないバイオミメティック(生体のもつ機能、形状を模倣し医療や工学分野に生かす考え方)を、都市全体に応用しようというアイデアが出た。

「さらに、サステナブルだけではなくリジェネレイティブ(再生的な)という議論が生まれています。サステナビリティとは場合によっては静的なものですが、それを創造的、行動的にしようという議論は、一歩進んでいます」(足立氏)。その他では「サーキュラーエコノミー」の議論は特に盛り上がり、観客の興味も非常に高かったという。

EVIANの給水所。SB2019東京と同様、会場内では極力プラスチックごみを出さないようにガラスのコップを利用した

存在感のあった企業、団体として、足立氏はダノン、P&G、花王、ウォルマートの第三者機関The Sustainability Consortium(TSC)を挙げる。日本企業として唯一の登壇をした花王は、直近に発表した「Kirei Lifestyle Plan」でインパクトを残した。TSCは米国発で、中小のサプライヤーを巻き込む力が圧倒的だ。P&Gはブースの見せ方が秀逸だったと足立氏は話す。

「企業ブースに限らず会場全体に言えますが、議論の仕方やコンテンツだけでなく、ハード面でもクリエイティビティを意識していました。汚れた廃プラを素材として生かしたデザインなど、やはり完成形を見せるというよりは、挑戦していることそのものを見せる、作る現場を作り出すというコンセプトが感じられました」(足立氏)

SBパリから学ぶこと

では、クリエイティビティを重視するカンファレンスを日本に持ち込み、すぐに結果が出るかと言えば、そうではない。「日本では新しい『知識』や、まとまった『成果』へのニーズが高い」と足立氏は指摘する。「国内では『そのカンファレンスで何が学べるか、どういう結果が得られるのか』ということが重要視されます。一方、パリは諸外国に比べてもクリエイティビティを非常に大事にしていると感じました。両極端です」(足立氏)

日本企業のプレゼンのように短い時間で企業の取り組みや成果をまとめ、発表する意義はもちろんある。しかし長い目で議論を考え、ヒントを出し合うディスカッションから生まれるアイデアや、協創関係がある。

「自分たちが何を考え、課題にどう取り組んでいるのか、どう取り組みたいと考えているか。それをずばりと発表すれば、未完成のアイデアでも話を聴いてもらうことができるのです。いきなり手法をすべて変えることはできませんが、SBパリのようなクリエイティビティ重視の姿勢から、日本のカンファレンスも学ぶことが必要です」(足立氏)。