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アメリカ

「消費者、カーボンラベルに好意的反応」:米国で調査

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価格や食品成分表だけでなく、カーボンラベルも確認すべき時代になった
© U.S. Department of Agriculture (CC BY 2.0)

豪シドニー工科大学(UTS)と米デューク大学はこのほど、米国では製品の気候変動への影響度を示す「カーボンラベル」が食品に付いている場合、消費者は影響が小さいものを選ぶ傾向があるという調査結果を発表した。ラベルは比較的単純な手法だが、温室効果ガスの削減に貢献する可能性が高いことが分かった。(クローディアー真理)

カーボンラベルを用いての今回の調査は米国在住者120人を対象に行われた。用意された3種類のビーフスープ、3種類の野菜スープの缶から好みに応じて購入する。対象者は2つのグループに分けられ、1つは同調査用に開発されたカーボンラベル付き、もう1つは付いていない缶から選んだ。

その結果、ラベルが付いた缶を提示された人ほぼ全員が、温室効果ガス(GHG)排出量の低い野菜スープを選んだ。

ステーキ肉をはじめとする食肉を提供する牛はメタンを排出する。メタンは二酸化炭素の21~72倍もの温室効果をもたらすとされる
© Eliot Bergman (CC BY-SA 4.0)

世界的にみて、食品生産におけるGHG排出量は全排出量の19~29%を占めるといわれている。特に牛肉を代表とした赤身肉は生産効率が悪い。タンパク源として、植物性のエンドウ豆と比較した場合、牛肉はエンドウ豆の6倍もの量のGHGを排出するという。

消費者は菜食の方が地球環境にとっていいという漠然とした考えはあっても、知識として習得している人はまだわずかだ。自転車通勤をしたり、太陽光発電を自宅に取り入れたりと環境に配慮した生活を送る人も、食品となるとどの程度の環境負荷がかかっているか把握できていない。消費者が想像する以上に食品生産は環境に大きな影響を及ぼしているというのが実情だ。

食品生産における環境負荷を正しく理解し、正しい選択を行ってもらうには、同調査で取り入れられたようなわかりやすいカーボンラベルが有効だ。例えば、一人分を生産するにあたって出るGHGの量が、100ワット電球を何時間つけた分に相当するかを、「~時間分」というように、ラベルに数値で明示する。加えて、一端を「排出量が少ない」、もう一端を「多い」とする「ものさし」を取り入れ、その食品がものさし上のどこに位置するかで、ほかの食品とGHG排出量を比較できるようにする。消費者にわかりやすい単位やビジュアルを用いるようにする。

カーボンラベルは、より環境への影響が小さい食品へ消費者を導くに留まらず、消費者への教育という役割も担う。UTSの研究チームを率いたエイドリアン・カミレリ博士は「私たちが何を食べるかが、気候変動などの地球規模で抱える課題に影響を及ぼす可能性は大きい。今回の調査で、消費者が正しい選択を行う用意があることがわかった」と話している。

英国カーボン・トラスト社による、既存のカーボンラベル。ぱっと見ただけではわかりにくいかもしれない
© gwire (CC BY 2.0)
クローディアー真理

ニュージーランド在住ジャーナリスト。環境、ソーシャル・ビジネス/イノベーションや起業を含めたビジネス、教育、テクノロジー、ボランティア、先住民マオリ、LGBTなどが得意かつ主な執筆分野。日本では約8年間にわたり、編集者として多くの海外取材をこなす。1998年にニュージーランドに移住。以後、地元日本語誌2誌の編集・制作などの職務を経て、現在に至る。Global Press所属。