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イギリス

「自然派」化粧品の原料がはらむ「ESGリスク」

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児童労働と大きく関係するマイカ(雲母)は、原料の分析を行った、ほお紅とブロンザーすべてから検出された。
©LibraW (CC BY 2.0)

英国の危機管理コンサルティング会社はこのほど、「自然派」をうたう化粧品のうち、原材料である農産物や鉱物がESG(環境・社会・ガバナンス)リスクと深い関連性を持つ可能性があると発表した。既存の認証制度では、化粧品の複雑なサプライチェーンの透明性を追求するのは困難なためだ。化粧品メーカーは独自のモニターシステムの構築・施行が必要だと同社は指摘する。(クローディアー 真理)

化粧品の原材料である農産物や鉱物などの自然素材と、深刻なESGリスクの関連性を指摘するのは、英国の危機管理コンサルティング会社ベリスク・メープルクロフトだ。

ファンデーションやクリームになるシアバターのためのシアナッツの収穫 ©Treeaid(CC BY 2.0)

児童労働、強制労働、長時間労働や、森林破壊、水質汚染などの問題を引き起こしている可能性があるという。

日常的に使用する化粧品、フェイスクリーム、ファンデーション、マスカラ、ほお紅、口紅の原料を分析、リスクの高さを4段階に分けたところ、これらには「ESGリスクが高い」とされる原料が最低でも1つ、多い場合は5つも含まれていることがわかった。

化粧品の原料は多種多様な上、新商品が出る度に原材料は変わり、サプライチェーンの把握は困難だ。企業の目が届きにくい小自作農が主に生産・供給するものは特にリスクが高い。

しかし、既存の原材料を全面的に使用禁止にし、代替品を探すのは時間がかかり、原産国である開発途上国の経済発展を妨げる原因にもなり得る。

パーム(ヤシ)油のプランテーションのためにマレーシアで行われた森林伐採。パーム(ヤシ)油は化粧品を含む、さまざまな日用品に用いられる。 © T. R. Shankar Raman (CC BY-SA 4.0)

化粧品の生産を続行し、サプライチェーン上の問題を解決するには、透明性の確保が必須だ。「RSPO」「UTZ」「レインフォレスト・アライアンス」などの認証制度は存在するが、基準の甘さが指摘されている。

ベリスク・メープルクロフトは、各企業が、ユニリーバやロレアルのように独自の基準を設けるよう奨励する。

エシカル消費が浸透し、購入の意思決定を行う主な年代が、環境・倫理問題に敏感なミレニアル世代である現在、企業が生き残るためには、全サプライチェーンの透明化が急務だ。

クローディアー真理

ニュージーランド在住ジャーナリスト。環境、ソーシャル・ビジネス/イノベーションや起業を含めたビジネス、教育、テクノロジー、ボランティア、先住民マオリ、LGBTなどが得意かつ主な執筆分野。日本では約8年間にわたり、編集者として多くの海外取材をこなす。1998年にニュージーランドに移住。以後、地元日本語誌2誌の編集・制作などの職務を経て、現在に至る。Global Press所属。