サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)
アメリカ

米大統領に反発、10企業・団体が相次いで諮問機関を脱退

  • Twitter
  • Facebook

米南部バージニア州シャーロッツビルで12日に発生した白人至上主義団体と反対派の衝突に対するトランプ米大統領の言動に反発し、インテルや3Mなど米国の10企業・団体のトップが大統領の諮問機関「製造業評議会」を相次いで辞任した。各社は、ダイバーシティやサステナビリティに反すると辞任理由を表明。これを受けて、同大統領は16日、ツイッターで「製造業評議会」と「戦略政策フォーラム」の両諮問機関を解散することを発表した。(オルタナ編集部=小松遥香)

米国で政治と経済界の分断が加速している。大統領が自ら立ち上げた製造業評議会だが、6月にはパリ協定離脱に反対してテスラのイーロン・マスクCEOが辞任したばかりだ。

根強く残る、人種差別問題

ニューヨークで行われた抗議デモ Photo:Eden, Janine and Jim

1964年に米国で人種差別を廃止するために公民権法が制定され、今年で53年が経つ。南北戦争を経て1863年に奴隷制度が廃止されてからは154年だ。多くの血が流れた結果、同国は学校教育などを通して人種差別の問題に向き合い続けてきた。しかし2017年の現在もなお、米国において人種差別問題が繊細で根強い社会問題であることに変わりはない。

米国では近年、人種差別が起因となる殺人事件が続いていた。2015年6月、南部サウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で起きた白人至上主義の男性による銃乱射事件で9人が死亡。それ以前の2014年8月には、中西部ミズーリ州ファーガソンで白人警官に非武装のアフリカ系アメリカ人の青年が射殺される事件が発生。その後も同様の射殺事件が続き、各地で抗議デモが発生し、死傷者が出る事態に発展していた。

こうした背景の中で、南部の州では、奴隷制存続を支持して南北戦争を戦った南軍兵士の像を撤去する動きが広がっていた。

今回の解散の発端となる事件が起きたシャーロッツビルでも、南軍の英雄ロバート・E・リー将軍の銅像撤去が予定されていた。しかし12日、それに反発するネオナチや白人至上主義団体(KKK)と撤去賛成派が衝突し、1人が死亡し、19人が負傷した。

事件後、相次ぎ辞任を発表

事件発生後にトランプ米大統領は、「どちらにも非がある。撤去賛成派も暴力的にKKKなどを攻撃していた」などと発言。白人至上主義者を擁護したとも取れる発言に対し、経済界も一斉に反発した。

今回、大統領の解散発言前に製造業評議会から辞任を表明した企業・団体は以下の通りだ。

アンダーアーマー(米・メリーランド)
インテル(米・カリフォルニア)
キャンベル・スープ・カンパニー(米・カリフォルニア)
ジョンソン・エンド・ジョンソン(米・ニュージャージー)
3M(米・ミネソタ)
ゼネラル・エレクトリック(米・コネチカット)
メルク・アンド・カンパニー(米・ニュージャージー)
ユナイテッド・テクノロジーズ(米・コネチカット)
アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(米・ワシントン)
アメリカ製造者連盟(米・ワシントン)

今年2月、トランプ大統領を支持する発言で不買運動が起きたスポーツブランドのアンダーアーマーのケビン・プランクCEOは、「評議会に参加する機会を得られたことには感謝している。これからは、一丸となることやダイバーシティ、インクルージョンを促進するスポーツの力で、全ての人が『どんなこともやればできる』と思える社会をつくるために努力したい」と発表した。

3Mの声明

3Mは、インゲ・チューリンCEOの声明として「『サステナビリティ、ダイバーシティ、インクルージョン』は3Mにとって基盤的な価値観だ。1月にこの評議会に参加した際は、この価値観に沿って米国をより強く、健康に、繁栄させていきたいと考えていた。しかし評議会に残り続けることは、もはや3Mの成長において利益にはならない」と発表。

インテルのブライアン・クラーザーニッチCEOは、「現在の政治が生み出している分断がこの国にもたらす深刻な被害に対して警告を促すために、製造業評議会を辞任する。これは米国の製造業界の停滞も導くような事態だ。(中略)政治が生み出しているこの分断の空気感を変える必要がある」と声明を出した。

メルク・アンド・カンパニーのケネス・C・フレージャーCEOは、「米国は、信仰や人種、性別のダイバーシティがあり、さまざまな人が力を合わせてきたからこそ大きな国になったのだ。この不寛容さと過激な思想に立ち向かう責任がある」と同社のツイッターで発表した。

米国メディアの中には、解散前に辞任を表明しなかった企業やCEOの発言も一覧にして発表するものもあり、政治動向に対する企業の対応にも注目が集まっている。

小松 遥香(こまつ・はるか)

オルタナ編集部 。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。