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フランス

仏NPO、不用靴下を新製品に「アップサイクル」

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アップサイクルの製品を前にした主催者のマルシア・ド・カルヴァド氏(右)。

フランスで、履けなくなった靴下をパソコンケース・ポーチ・衣類などに再製品化する「アップサイクル事業」が人気だ。テキスタイルの廃棄物を減らせるほか、企業や一般人のリサイクルへの関心を高められる。あるNPOでは失業者に縫製アトリエで縫製技術を教え、雇用につなぐ支援もしている。(羽生のり子)

 NPO「片方の靴下」は、2008年に履けなくなった靴下のアップサイクルを始めた。縫製アトリエは、異なる文化的背景を持った人や職人、アーティストが多く住む庶民的なパリ18区にある。

 そこにフランス全土から、片方の靴下や履けなくなった靴下が詰まった小包が届く。主宰者のマルシア・ド・カルヴァド氏は「ロレアル、フランス国鉄(SNCF)、パリ交通営団(RATP)も送ってくる」と言う。

 近くのモンマルトルには布地屋が並び、布市もある。回収した靴下は洗って、地元の布地屋から出るウールの端切れと混ぜて、南仏の製糸工場で糸に再生する。それをパリの工房で製品化する。

 

不用な靴下から再生した糸を使って新たに創られたポーチ・パソコンケース・靴下などの製品。

アトリエでは、職を探している地域住民が編み物・縫製・刺繍などを学び、プロとして就職するスキルを身につけるための研修を行っている。

 ド・カルヴァド氏は、「失業者の社会復帰支援・リサイクル・国産品の生産が活動の目的だ」と説明した。セーター、靴下などはアトリエのほか、デパートでも販売している。パソコンケースやポーチは、企業が得意先へのプレゼントとして購入する場合が多い。それが企業のリサイクル意識や社会貢献をアピールすることにもなるからだ。

 ポーチは38ユーロ(4712円)、靴下は1足18ユーロ(2232円)と、スーパーで買う通常品より高いが、商品に付属する環境意識や社会貢献の価値も含めて買うのだといえる。「片方の靴下」は、パリ市とパリ18区の支援も受けている。

羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。