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フランス

フランス大統領選の主要候補6人全員が「有機農業推進」

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2017年2月8日パリ19区のユースホステル内の講演会場にて。左2人目から、ルペン候補のフィリップ・ミュレール代理人、フィヨン候補のギイ・ヴァスール代理人、マクロン候補のコリーヌ・ルパージュ代理人、アモン候補のフィリップ・マルタン代理人、メランション候補のロラン・ルヴァール代理人、ジャド候補。

フランス大統領選挙の主要候補者6人が「有機農業の推進」を表明し、話題を集めている。共和党、社会党、左派の「不服従のフランス」、中道の「アン・マルシュ」、緑の党、さらには極右の「国民戦線」が有機農業連盟(FNAB)の会合に参加し、表明した。FNABは5月の大統領選挙後、「フランスを欧州一の有機農業国にする」ことを次期政権に要求し、これを受け入れたかたちだ。(羽生 のり子)

FNABは、大統領選にむけて、主要候補者に有機農業についての意見を問う公開意見発表会を2月8日に開いた。有機の流通・加工業者の組合「シナビオ」と「フランス農協」の有機部門が共催した。

有機市場は、2016年の売上が約70億ユーロ(約8兆700億円)、2016年上半期は前年同期比で20%増と未曽有の成長ぶりを見せている。転換1年目の有機面積は2016年上半期だけで前年末に比べ40%増えた。また国産品が75%を占めるようになった。

このような状況から、FNABは大統領選挙を国の有機農業への支援を得るチャンスと見て、候補者たちに考えを聞いた。FNABは、政治家を対象に「フランスを欧州一の有機農業国にする」という確約書の署名を集めており、この時点で約800名の署名が集まっていた。これも候補者へのプレッシャーになった。

共和党のフランソワ・フィヨン候補の代理人は、保守系農業者組合「全仏農業経営者連盟FNSEA」の元会長だ。慣行農業の農家が多い生産第一主義の組合だが、農作物の輸出不振で、有機に向かう流れには逆らえない。EU内の競争力をつけることを強調し、「フランスの有機農業が欧州一にならない理由はない」と述べた。

中道のエマニュエル・マクロン候補と社会党のブノワ・アモン候補は、それぞれ元環境大臣を代理人として送り込んだ。アモン候補と、両候補代理人2人はすでに個人として確約書に署名済みだ。極右のマリーヌ・ルペン候補の代理人は「フランスの農業は大きく有機に向かわなければならない」と述べた。

政治運動「不服従のフランス」のジャン=リュック・メランション候補の代理人は、「我々の計画は環境に良い農業にフォーカスしているので、有機農業を全面的に推進する」と説明した。その後、メランション候補は確約書に署名している。

ヨーロッパ・エコロジー=緑の党のヤニック・ジャド候補は「EUの共通農業政策の資金の半分を有機農業転換への助成金に回すべき」と主張した。その後ジャド候補はアモン候補に合流し、出馬を取りやめた。

フランスは、有機の鶏肉生産は欧州一、卵は第二の生産高を誇っている。農業政策が前向きになれば、欧州一の有機農業国になるのは夢ではない。

羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。