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中国

中国・環境保護税導入で、水性塗料に爆発的需要の兆し

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中国大陸を横切る長江のフェリー。深刻な汚染が進む大河は、環境保護税法の制定で変化するだろうか (C)Neverland-man

2018年1月から環境保護税の導入が決定した中国の産業界は、環境保護に向けて大きく舵を切りそうだ。中でも塗料業界では「油性塗料からの脱却」が急激に進む。欧米で水性塗料の普及率が80%を超えている中、中国は未だ10%未満のため、有望な成長市場として期待が高まっている。中国の塗料メーカーは水性塗料の爆発的な需要に備え始めた。(寺町 幸枝)

中国最大の水性塗料メーカー「チェンヤンウォーターボーンペイント(Chenyang Waterborne Paint)」のオンライン注文が年明けから加速している。通常なら塗料販売のオフシーズンである時期にも関わらず、国内にある2000店舗のフランチャイズ店でも、注文が殺到しているという。

チェンヤンの刘占川(リウ)副総裁は、「中国において、これまで10%未満の市場シェアであった環境に優しい塗料は、これから大きく伸びる製品だ。すでに、水性塗料の利用率が80%に達しているヨーロッパや米国といった先進国の状況を見れば明らかだ」と話す。

JETROの調べによれば、中国には1979年に施行した「環境保護法(試行)」がすでにあるが、法執行における強靭性の不足といった問題から、制度としての機能がきちんと働いていなかった。今回改めて「環境保護税」を制定・実施することにより、「環境保護制度」の整備がさらに強化される。

環境保護税の課税対象となる汚染物は「大気汚染物」「水質汚染物」「個体廃棄物」「騒音」の4つだ。課税額の算出根拠の確定方法は、それぞれによって条件は異なるが、「課税対象大気汚染物および課税対象水質汚染物の当量数=当該汚染物の排出量/当該汚染物」の汚染当量値となる。

大気汚染物の適用税額は、汚染当量当たり、1.2元から12元(約19.9円から199円)、水質汚染物の適用税額は、一汚染当量当たり、1.4元から14元(約23.2円から232円)。月ごとに計算し、4半期ごとに申告する形となる。

この税法制定の一番の目的は、企業の環境保護意識を向上させ、環境保護に関する責任を増大させることで、排出削減を奨励することだ。汚染物を排出する場合でも、基準の30%を下回る場合は環境保護税を75%に、50%を下回る場合は50%に軽減して徴収する、といった減税政策も制定されている。

現時点では、課税対象や税目、算出基準など、規定がされつつも、実施細則についてはまだ制定されていない。この現状に対して、現在チェンヤン同様に塗料業界でビジネスを営む「浙江吉華集団(JIHUA GROUP)」の謝飛紅 副総裁は、「環境保護税導入は、溶剤の使用量を減らし、揮発性有機物の発生を抑えるという狙いがあり、塗料業界は避けては通れない道」と話す。

そのため吉華集団では「粉末塗料と高固形分塗料の開発を進めると同時に、水性塗料の開発も必要になる」と続ける。

今後中国全体が、一気に自然環境保護化へ舵をきることになる状況について、謝副総裁が最も懸念していることは、「環境保護税導入に対応できない企業が、生産停止になる、あるいは別の業種へ編入されること」としており、「塗料メーカーの倒産数も一気に増えるだろう」と厳しい予測している。

この1年間で、法の制定と、各企業の動きが同時進行で進む中国。未だ世界中の多くの企業が生産拠点として中国を頼りにしており、同国の動きの一挙手一投足には、目を光らせておく必要がありそうだ。

寺町 幸枝 (てらまち・ゆきえ)

Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。