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フランス

仏の温暖化対策で100万人の雇用創出―環境団体が報告書

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「気候変動で百万人の雇用を」のシンボルマーク

フランスの環境団体や組合など12団体が1月12日、「温暖化対策で100万人の雇用を創出できる」という報告書を発表した。2014年にイギリスの市民団体が発表した「気候変動で100万人の雇用を」の提案をヒントにしたもので、再生エネルギー分野などで雇用を増やす戦略だ。農業、運輸、工業を含め、新設する雇用から、化石燃料の削減などで消滅する雇用を差し引けば、2020年までに100万人の雇用創出が実現できると計算した。(羽生 のり子)

報告書を出したのは、120か国以上の環境NGOからなる国際連絡網「クライメートアクション・ネットワーク(CAN)」仏支部、教職員組合が大多数の「統一労働組合連合(FSU)」、通貨取引税(トービン税)の導入を主張するNGO「アタック」など。1月12日、パリで共同記者会見を行った。

会場でアタックのマキシム・コンブ氏は、再生可能なエネルギーの割合を増やしていく2015年成立の「エネルギー転換法」を実地に移す段階で雇用が増えると判断し、「化石由来のエネルギーを減らすときに、その分野で働いている人たちを失業させないことが大切だ」と訴えた。

原料や生産に費やすエネルギーを減らし、食生活を変えて肉の消費量を半減させ、人々の価値観の転換を行う必要があるとも指摘した。

報告書は、2020年に消滅する雇用数と創出される雇用数を分野別に算出している。たとえば、仏原子力大手アレバが開発した欧州加圧水型原子炉(EPR)と原発使用年数延長を止めると7万6千人の雇用が失われるが、再生エネルギーで33万人の雇用が創出できるとしている。

雇用創出に必要な費用の一部は、脱税対策を厳しくすることで回収できる3千万ユーロから1億6千万ユーロ(約36から194億円)でまかなえるという。

イギリスで始まった、温暖化対策で雇用創出する運動は世界に広がった。フランスの前には、米ニューヨーク州、南アフリカ、カナダ、ポルトガル、ノルウエーでも組合や市民団体が同様の報告書を発表している。

羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。