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イギリス

ロンドン警視庁、大気汚染対策でパトカーにエコカー導入

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ロンドン警視庁が昨年1月から試験運転を始めたBMWの電気パトカー

英ロンドン警視庁(スコットランドヤード)は、都心部の大気汚染対策として全車両に代替燃料車を導入していくと発表した。まずは古いパトカーを250台のハイブリッド車と交換する。ディーゼル車両を減らすため昨年からBMWの電気自動車試用を始めたが、ロンドン市長の働きかけで計画を拡大した。電気自動車メーカーのテスラとも特別仕様車開発の相談をしている。(冨久岡 ナヲ)

1952年冬、石炭燃料によるスモッグにより数日の間に1万人以上が死亡したロンドン。この惨事をきっかけに大気汚染改良の努力が長年続けられてきたが、ここ数年間に再び悪化し始めた。原因は皮肉なことに、EUの気候変動対策により「クリーンな車」と推奨されたディーゼル車両の普及だ。

ディーゼル車が排出する汚染物質PM2.5が健康に及ぼす悪影響を指摘する声にもかかわらず、歴代の政府はEUの指示に従った。結果、2017年に入ってロンドンの空気がEU環境基準の定める安全値に達した日は1日もなく、1月中旬には33区のうち都心部17区に「スモッグ警報」が出されるまでに事態は悪化した。

ロンドンの大気汚染対策を公約の一つに挙げて当選したサディク•カーン市長は、昨年5月の就任以来ディーゼル車両削減対策を打ち出している。BMW製電動パトカーの試験導入に続いてトヨタの水素自動車「ミライ」とスズキの水素燃料スクーターのテストを行なうなど、すでに始まっていたロンドン警視庁のエコカー化計画拡大とスピードアップもその一部だ。

ホーガン=ハウ警視総監

今回の発表によると、ロンドン警視庁は新たに21ミリオンポンド(約30億円)を投入し、これから一年の間にまず古いパトカーを250台のハイブリッド車と交換する。来年の終わりまでには、エコカー700台をワゴン車や王族の警護車両などにも導入する計画で、フォード、日産などほとんどの主要自動車メーカーと使用車両について話し合いを進めている。また、ホーガン=ハウ警視総監は、電気自動車メーカー「テスラ」と新型パトカー開発について会談した。

警視庁車両部バージ部長は「コストや機動性など代替燃料車両導入にまつわる問題を警察が率先してクリアすることで、タクシーや運輸業者など民間車両のエコカー化推進役を果たしたい」と語った。

冨久岡 ナヲ (ふくおか・なを)

ロンドン在住のジャーナリスト。イギリスを拠点に欧州全般のニュースやトレンド、文化事情など広くカバーしている。環境とビジネスとのかかわりに関心があり、循環型経済の発展から目が離せない。「オルタナ」誌をはじめさまざまな雑誌やウェブサイトに執筆するかたわら、日本の企業や団体の視察ツアーコーディネート、欧州市場進出のためのリサーチなども務めている。