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オーストラリア

豪はパリ協定に後ろ向き?―批准後も専門家から批判

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ニュー・サウス・ウェールズ州のハンター・バレーにある露天掘りの炭鉱。炭鉱開発は、発電に次いで温室効果ガスを排出している (C)Jeremy Buckingham

オーストラリア政府が11月のパリ協定批准と同時に打ち出した「国別目標」について、同国内の専門家から「達成は不可能」という厳しい見方が相次いでいる。目標は、2030年までに温室効果ガス排出を2005年比で26~28%削減する骨子で、特に、発電や鉱業など、温室効果ガス排出が顕著な産業への規制を強めたい考え。海外の研究機関も「政策不十分」として冷ややかな反応だ。

オーストラリア政府は気候変動政策として「ダイレクト・アクション・プラン」を掲げている。その要といわれるのが、排出削減基金制度(ERF)だ。安価で実現可能なCO2削減策を企業から募り、審査。採用案に対し、資金補助を行う。2014年から始まったこの制度には10年間で計25億5,000万Aドル(約2,160億円)の予算が当てられている。

ERFを政府は有効と評価する。しかし、国内の専門家や、世界32ヵ国の温暖化対策を分析・査定する、欧州の4つの研究機関の合同プロジェクト、「クライメート・アクション・トラッカー(CAT)」のERFの評価は低い。そしてオーストラリアの目標達成は現政策では困難と見る。2030年まで年平均2%の排出量減が必要なところ、反対に1.5%増えているからだ。

同政府の温暖化対策は非常に緩慢だ。2014年に炭素税、鉱物資源利用税を廃止し、2015年に自然エネ発電導入目標を引き下げた。先だっては、炭鉱開山に伴う事業に資金援助している。

連邦政府の温暖化防止対策を不十分と見た、ジェイ・ウェザリル南オーストラリア州首相は、12月上旬、州や特別地域単位での対処を呼びかけた。国内の環境問題に取り組むNGO、オーストラリア・コンサベーション・ファウンデーションのポール・シンクレア・キャンペーン・ディレクターは、「この国を『失敗国家』にしないために、州や特別地域ごとの政策に期待したい」と同首相を支持している。

クローディアー真理

ニュージーランド在住ジャーナリスト。環境、ソーシャル・ビジネス/イノベーションや起業を含めたビジネス、教育、テクノロジー、ボランティア、先住民マオリ、LGBTなどが得意かつ主な執筆分野。日本では約8年間にわたり、編集者として多くの海外取材をこなす。1998年にニュージーランドに移住。以後、地元日本語誌2誌の編集・制作などの職務を経て、現在に至る。Global Press所属。