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ニュージーランド

TPP原加盟国のNZでも、先住民マオリが発効に反対

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「TPPA, No Way(TPPAなんて、とんでもない)」が抗議者の合言葉 Image credit:Sara

環太平洋連携協定(TPP)の米国不参加がほぼ決定的となり、原加盟国の一つ、ニュージーランドでも反対派が気勢を上げている。2月中旬に行われた世論調査ではTPPに反対する人は42%で、このうち82%を先住民マオリが占める。彼らは、TPPを発効すると土地、漁業、森林などにおけるマオリの権利よりも、企業の利益が優先される可能性が高いことを問題視している。

TPPの条文には、マオリの権利を保護する条項も含まれているものの、発効後それが実行されるかどうか不透明な点に、マオリの人たちは危機感を抱いている。国内には、彼らを保護するためのワイタンギ条約法、ワイタンギ審判所が設けられ、他国の先住民に比べ、権利は保障されている。

しかし、マオリは自分たちが望むほどには復権が進まないのは、政府の努力が足りないからと考えている。同法、同審判所の力の及ばない、他の加盟国が、条文をマオリに好意的に解釈し、協力的な立場をとるか、また企業の利益を度外視してまで政府がマオリを守るか、彼らは非常に懐疑的だ。

そもそも、マオリのTPPに対する不信感は、協定の交渉や条文の作成にあたり、政府がマオリの代表者と何の協議も行わなかったことに始まる。特に天然資源、環境基準やその保護規定に関する方針決定は、政府とマオリが共同で行うべき、という同審判所の勧告を無視してのこの動きに、彼らはいらだちを隠せない。

同時に、これは先住民族の権利に関する国際連合宣言に含まれる「自由意志による、事前の、十分な情報に基づく同意」が無いままに話は進められたことを意味し、TPPのみならず、政府自体への不満は募るばかりだ。

TPPはマオリのほか、野党である労働党、グリーン党などを支持する非マオリ人にも反対を受けている。その一方で、11月中旬、議会はTPP関連法案を、賛成61票、反対57票という僅差で可決。批准に必要となる手続きを終了した。

クローディアー真理

ニュージーランド在住ジャーナリスト。環境、ソーシャル・ビジネス/イノベーションや起業を含めたビジネス、教育、テクノロジー、ボランティア、先住民マオリ、LGBTなどが得意かつ主な執筆分野。日本では約8年間にわたり、編集者として多くの海外取材をこなす。1998年にニュージーランドに移住。以後、地元日本語誌2誌の編集・制作などの職務を経て、現在に至る。Global Press所属。