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イギリス

ロンドンの夕刊紙がフードロス・キャンペーンを開始

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英国のスーパーが食事可能な食品を毎年11.5万トン廃棄することを報じるイブニング・スタンダード紙

ロンドンの夕刊紙「イブニング・スタンダード」は、紙面でフードロス削減を目指すキャンペーンを始めた。英国のスーパーは食事可能な食品を毎年11.5万トンも廃棄する一方で、貧困者はロンドンだけでも87.5万人に達する。二つの問題解決に取り組むこのキャンペーンに、大手銀行シティバンクUKがさっそく参加を表明。協賛企業の一番手として20万ポンド(約2600万円)を寄付するなど、フードロス削減の動きが高まりを見せている。

イギリスでは、まだ食べられる廃棄食品や廃棄青果物を、スーパーなどから貰い受けて貧困世帯に配るという活動が、慈善団体やNPOによって細々と行なわれてきた。フードロス削減活動を食糧貧困の解消に役立てようというアイデアだ。

しかし、効果的な活動には多数のボランティアや配達車が必要だ。フードロス削減には積極的な大手スーパー各社も、奉仕活動に回せる社員や車の数は限られている。この問題の解消を目指すキャンペーン「フード・フォー・ロンドン」を起こしたのが、ロンドンのタブロイド版夕刊紙、イブニング・スタンダードだ。

キャンペーンは主に二つの活動からなっている。まずは紙面を通じてフードロスと食糧貧困の現状を読者に伝え、問題意識を持ってもらうこと。スーパーごとの廃棄食品率掲載や、ある小売店が計43キロもの賞味期限内食品を閉店後にゴミ箱に捨てているのを見つけるなど、連日人目を引く記事が紙面を飾った。

二つ目は、廃棄食品の回収と配布をソーシャル・ビジネスとして行なうために設立された「フェリックス・プロジェクト」への支援だ。5万ポンドをスタートアップ資金の一部として提供、社員募集や配達車の運転手養成が始まった。

キャンペーン開始翌日に参加したシティバンクUKに、ロンドン市長と大手スーパーのセインズベリーズからの協力表明が続いた。同店は他のスーパーをしのぐフードロス努力で評価されている。また、超高級レストランを多数所有するD&Dグループも、5万ポンドの寄付に加え食事客からの寄付1ポンドにつき同額を上乗せするスキームを11月に行なうと発表した。

平日の毎日、90万部が地下鉄駅などで無料配布されているイブニング・スタンダードは、これまでにもロンドン文盲撲滅キャンペーンなどを実行し成果を収めている。今回も同様に、より盛んなフードロス削減活動をロンドン全体に促す力となることが期待されている。

冨久岡 ナヲ (ふくおか・なを)

ロンドン在住のジャーナリスト。イギリスを拠点に欧州全般のニュースやトレンド、文化事情など広くカバーしている。環境とビジネスとのかかわりに関心があり、循環型経済の発展から目が離せない。「オルタナ」誌をはじめさまざまな雑誌やウェブサイトに執筆するかたわら、日本の企業や団体の視察ツアーコーディネート、欧州市場進出のためのリサーチなども務めている。