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フランス

循環システムの温室で野菜の水耕栽培

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「マイフード」創立者の3人 (C)HANYU Noriko

フランスで、野菜の水耕栽培ができるユニークな温室を若い起業家グループが商品化した。温室の中の水槽でマスなどの魚を飼い、魚の糞(ふん)が肥料になる。天井のソーラーパネルでエネルギーを自給し、自動で温度調節や水の供給ができる。家族が食べるだけの野菜を無農薬・無化学肥料で栽培できる。

温室を商品化したのは、アルザス地方に本社がある「マイフード」。創業者はマーケティングの学校を出たマチュー・ウルバンさん、エンジニア出身のミカエル・ガンデクルさんとジョアン・ナザラリさんの3人組で、いずれも30歳前後と若い。今春、パリの国際農業見本市に温室の実物を設置し、大きな注目を集めた。

販売価格は税込みで5,000ユーロ(1ユーロ=約125円)から70,000ユーロ。3~4人世帯用の表面積22平方メートルのものと1~2人の小世帯用の14平方メートルのものがあり、1年間で200~300キログラムの野菜が採れる。水耕タワーの数やソーラーパネルなどのオプションを付けるかによって価格が変わる。温室までエネルギーを供給できない場所では、ソーラーパネルでエネルギーが自給できる。

温室の中には、パーマカルチャーによる根菜栽培用の土の部分と、葉ものや小さい果物ができる水耕栽培用の水槽がある。水槽にはマスなどの魚を飼い、濾過した糞の細かい粒子は水と一緒に水耕タワーに肥料として供給される。濾過されず残った糞は土に戻され根菜の肥料になる。魚はもちろん食用可能だ。

室内を暖めるのは、ペレットを使ったサーモスタット付ストーブだ。室内温度は自動的に調節されており、温度によって小窓が自動的に開閉する。その他、水中のpHや温度、アンモニア濃度などを遠隔でチェックするシステムがあり、長期間留守にしても問題ないという。「すべて有機栽培です。消費者だけでなく、農家、企業、学校自治体からも引き合いがあります。当社は、南フランスに温室を作り、そこで出来た野菜を日本食レストランに卸す計画も進めています」とウルバンさんは言う。

2016年に設立したばかりなので、売り上げはまだ出ていない。創立者3人を含む共同経営者4人、社員2人、研修生1名のほか、10人のボランティアスタッフがいる。各地の15人の顧客が温室でさまざまなテストを行い、顧客間でノウハウを交換し合うサークルを作っている。メンバーは今年中に30人になる予定だ。

羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。