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都市鉱山から作る再生五輪メダル、廃家電回収で実現

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スタートから2年でメダルを作るための再生金属が回収できた。
左から山田拓朗さん(パラリンピック競泳メダリスト)、松田丈志さん(オリンピック大会競泳連続メダリスト)

来年の東京五輪で使用する約5000個の金・銀・銅メダルを、使用済み携帯電話や小型家電から抽出したリサイクル金属でまかなうプロジェクトが進んでいるが、このほど回収量が目標に達した。五輪メダル用のリサイクル金属回収は史上初の試みで2017年4月からスタートし、全国の自治体やNTTドコモを拠点に市民から収集した。携帯電話や小型家電にはレアメタルなど多くの有用な資源が含まれており「都市鉱山」とも呼ばれる。プロジェクトの意義や結果について大会組織委員会に聞いた。(箕輪弥生)

2017年4月から始まった「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は、金30.3kg、銀4,100kg、銅2,700kgの回収目標量に達して3月に終了した。金メダルは銀に金メッキをして作るため他の金属に比べて少ない使用量で済む。

同プロジェクトは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が主催し、東京都や環境省、NTTドコモ、日本環境衛生センターなどが協力して進めた。スタート当初は回収量が伸び悩んだが、自治体やNTTドコモ店舗に加え、郵便局やパートナー企業など回収拠点を増やしたことで目標量に達した。

回収には全国で小型家電リサイクルを実施している自治体の9割超が協力し、同制度に基づいて回収ボックスなどを設置し、パソコン、携帯電話などの小型家電約67,000トンを回収した。またNTTドコモの全国の店舗でも、使用済み携帯電話約570万台を回収した。

大会組織委員会によると、コンペにより決定したメダルデザインによるメダル製作が進められており、今年夏には発表されるという。市民が回収に協力したリサイクル金属だけを使った五輪メダルの作成は五輪大会初の試みである。

大会組織委員会国際渉外部の川崎麻衣子さんは「今までやってこなかった試みであり、市民の協力でこれだけの量が集まったことはひとつの成果」と話す。

回収された携帯電話。分解、選別などの処理を行った後、精錬事業者によって抽出した金・銀・銅でメダルを製造する

国内に蓄積されているリサイクル対象の金属の量は、世界有数の資源国に匹敵する規模の埋蔵量を持っている。たとえば金の「都市鉱山」に含まれている量は約6800トンに達し、世界の埋蔵量の約16%に達する。同様に銀も約6万トンと世界の埋蔵量の約22%を占める。

世界的にも循環型のサーキュラーエコノミーが注目される中、家庭や企業に眠る金属資源を素材として再利用することが求められている。

環境省の担当者、組織委員会国際渉外部の奥山小百合主事は共に「プロジェクトを契機にさらに小型家電のリサイクルが広がり、循環型社会の機運が高まることが重要だ」と話す。

東京五輪ではこの他にも、持続可能性に配慮した運営計画を元に、再生材や再生可能資源の利用を幅広く行う。たとえば、聖火リレートーチの素材の3割に東日本大震災の復興仮設住宅のアルミ建築廃材を再利用したり、会場建設に再生骨材を用いたコンクリートやリサイクル鋼材を使うなど再生材を多用し、資源を無駄にしない取り組みを進めている。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/