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企業×NGOで、世界のルールをポジティブに変える

SB2019Tokyo

NPO法人ACEの白木朋子事務局長(左)とモニターデロイトの羽生田慶介執行役員

2008年からガーナにおけるカカオ生産地の児童労働問題解決に向けて活動しているNPO法人「ACE」は、現在戦略コンサルティングファーム「モニター デロイト」と手を組むことで、ガーナ政府を巻き込んだ大規模な社会問題解決へ動きを見せている。非営利団体と企業の協働が珍しい日本で、実際にキーパーソンとして活躍するパネリストたちが、どのような歩みで現在に至っているかについて語った。(寺町幸枝)

世界のカカオ業界が活動に注目、WTOへ提言も

ガーナの児童労働問題解決に取り組んだ「スマイルガーナ・プロジェクト(通称チョコレートプロジェクト)」は、2009年からカカオを作っている零細カカオ農家を教育し、経営を改善し、収入を上げることで、現地の子どもたちが就学できる仕組みを作り出したプロジェクト。

この活動を運営しているのがACEだ。同法人は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に明記された「2025年までにすべての形態の児童労働をなくす」ことをめざし、現在主にインドのコットン生産地、ガーナのカカオ生産地で、「直接的な問題解決支援」を行うほか、日本における消費者の教育と啓蒙、企業との連携や政策提言などを行っている。

ガーナでは、この10年の間で2つの州10村でプログラムを実施し、2013年に森永製菓の「1チョコ for 1スマイル」プロジェクトに参画したことがターニングポイントとなり、寄付の増額に合わせて、プロジェクトを導入する村も増加の一途をたどる。認知向上に伴い、ACEのチャイルドレイバーフリーのカカオを使った製品は、21社80アイテムにまで広がった。

登壇したACEの事務局長であり、共同創業者でもある白木 朋子氏は「こうした動きの中で、10年に及ぶ成果を国際会議の場で発表し始めた。それにより世界レベルのカカオ業界からもその活動が認められ、昨年コートジボワールで行われた国際会議では、同会議に参加していたガーナ政府代表団にも活動の概要が知られる運びとなった」と語った。

2017年にガーナが国家計画として「チャイルドレイバーフリーゾーン制度」を構築したタイミングと合致したことで、ACEのプロジェクトを通じて児童労働を行わずにカカオ生産ができるようになった村は、国の認定を得ることができるようになったという。

さらにガーナ政府とともに、チャイルドレイバーフリーの製品については、関税をゼロにするという働きかけを世界貿易機構(WTO)へ行うといった大胆な提言を行っている。

「経済合理性」と「ルール形成」で世界を変える

一方デロイト トーマツ・グループは、国際的な戦略コンサルティングファームとして長い歴史を持つ。社会を変えるインパクトを与えるプロジェクトに無償でコンサルティングを行う同社の「ソーシャル・イノベーション・パイオニア」プログラムを通じて、2017年からACEとの協働を開始している。

登壇したモニターデロイトの執行役員パートナーであり、レギュラトリストラテジーのリーダーである羽生田 慶介氏は、パートナーであるACEについて、「ビジネスとしての側面で、社会を変えていこうという意識が強く、またグローバルに戦える日本のNGOという稀有な存在」と評価し、日本発でもACEとであれば「世界を変えられる」と語った。

ビジネスコンサルティングファームが、なぜ児童労働をなくすことについて取り組むのか。この点について羽生田氏は「ビジネスコンサルタントとして、世界を変えるためのサステナビリティーやSDGs、人権問題を〈経済合理性〉と〈ルール形成〉という視点で考えている」と話す。

ルールが変わることで、世界は大胆に変わる。国や自治体の法律を変えるには時間がかかるが、企業レベル、例えば「調達ガイドライン」を改定するだけでも、大きな変化が生じることは周知の事実だ。

今回、ACEと世界レベルのルール作りをすることで、「チャイルドレーバーをやればやるほどコストアップし、人権対応すればするほど売上アップになるといった世界が作ることができれば、世界はのびのびと問題解決を行える」と羽生田氏は話す。

現在のビジネスルールをポジティブに歪めることが必要だと考えているという羽生田氏。規格を作りコストベネフィットを与え、関税をゼロにする、といったことをルールとして盛り込めば、生産過程で大人だけによる多少のコストアップがあっても、全体としては大きな利益を生むため、チャイルドレイバーフリーは、一気に世界規模で導入が進むに違いない。

白木氏は、現在ガーナ政府と進めているチャイルドフリーレイバーゾーン制度の設計に関して、「これまでの10年間で培ったガーナの村々での経験を制度に生かしたい」と意気込み、以下のように語った。

「汎用性のあるものを全国の村々に広めるだけでなく、児童労働をなくすという世界共通の目標に対して、多少内容は各国に合わせたものにする必要はあるものの、制度そのものを色々な国に広げていきたい」

対等な関係で強みを生かし合う

これまでNGOやNPOと企業の連携は、企業側による一方的な支援や、金銭的寄付という関係性が一般的だった。またNPOと企業は、企業行動を通じ対峙する関係であることも多かった。

しかし、今回のACEとデロイトの協働においては、「行動したいもの同士が強みを見つけあい一緒にやっている」と羽生田氏は分析する。

その上で白木氏は「ガーナ政府を巻き込んで、一緒に制度作りを行うという点は我々の中でも考えていたことだが、それを世界貿易機構(WTO)も巻き込んで無税にすることで、一気にチャイルドレイバーフリーを国際的なルールにするという考えは、デロイトとの協働なしには考えられなかった」と話す。

日本発、国際的な社会問題解決の糸口は、企業とNGOがそれぞれの強みを生かし、対等な関係で他の政府や企業を巻き込むことで実現していると言えるだろう。

セッション「企業とNGOの連携最前線!児童労働撤廃から世界を変える挑戦」。ファシリテーターはCSOネットワークの黒田かをり事務局長(右端)が務めた
寺町 幸枝(てらまち・ゆきえ)

Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。