サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

サーキュラーエコノミーがビジネスモデルを変える

  • Twitter
  • Facebook

SB2019Tokyo

セッション「サーキュラーエコノミーへの挑戦(1)新たな価値創造戦略と実践」

資源を循環させる経済「サーキュラーエコノミー」が世界で大きく注目されている今、企業戦略の中に取り入れていち早く動き出しているBASF(本社:ドイツ)、エプソン、パナソニック、カーボン・トラスト(本社:英国)の4社がその取り組みと戦略を「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」で紹介した。これによりどんな価値が提供できるのか、課題となるのは何か、また進めるためのポイントなどが議論された。(箕輪弥生)

サーキュラーエコノミーを実現するビジネスモデルとは

「サーキュラーエコノミーは単に環境に対応するだけではなく、資源調達のリスク、廃棄物規制の強化、企業の経営的観点からも重要だ」と世界最大の総合化学メーカーBASFジャパンの石田博基社長は話す。

同社では汚れたプラスチック廃棄物も含めて熱化学的な処理をしてオイル状の原料に戻して再利用できる「ケムサイクリング(ChemCycling)プロジェクト」を展開している。

さらに、世界の6か所に「フェアブント(Verbund)」と呼ばれる統合生産拠点を作り、生産工場と技術を連携させ、プラントで出た副生物を他のプラントで使うなどの仕組みを開発し展開している。

これらのサーキュラーな仕組みにより、原材料、廃棄物、消費エネルギー、物流コストを大きく削減していると、同社の石田社長は説明する。

企業の二酸化炭素排出削減を指導する英国の政府系機関カーボン・トラストのアレン・スミス・ギリスピー アソシエイト・ディレクターは、ロールス・ロイス社(英国)のジェットエンジンの新たなビジネスモデルを紹介した。これは、エンジンの出力と使用時間に応じて、航空会社に利用量を請求するという仕組みだ。

この仕組みでは、製品原材料の95%がリサイクルの対象となり、そのうちの50%が新しいエンジンを作るために使われた。顧客にとっても整備の費用がかからず、環境負荷を抑えることが可能となり、顧客満足度が強化されたという。

このロールス・ロイス社のケースと同様、顧客のライフサイクルコストに注目してデザインしたのがパナソニックの店舗用冷蔵・冷凍設備の再利用システムだ。

同社では調査の結果、同製品を購入した際の費用は15%に過ぎず、70%が電気代やメンテナンスコストに使われていた。そのため、省エネ性能の高い最新モデルを大型店で一定の期間使い、リファービッシュ(整備済)して小型の店舗に使ってもらうという仕組みを考えた。店舗にとっては投資を抑えて高効率のものが使えるというメリットが生まれる。

どちらの例も、モノを所有するのではなく価値を利用する対価を売り、そのループの中で再生素材の活用などを組み込んでいる。

しかし、このようなビジネスモデルは従来型のビジネスモデルとは大きく異なり、「商品が売れにくくなる」「再生素材を使うことで価格上昇を生む可能性がある」などの課題があることがパネラーの声からも聞かれた。

サーキュラーエコノミーをより加速化するには

進行役のピーターD・ピーダーセン氏は、「課題はあるものの、サーキュラーエコノミーを加速度的に進めるためにはどうすればいいか」と問題提起した。

カーボン・トラストのスミスディレクターはこれに対し、1社だけでなく競合他社も一緒に取り組むことを提案し、「製品を将来的に更新できる、互換性があるなど廃棄を減らす新たな仕組みを取り入れ、廃棄のコストをシステムの中に取り組まなければいけない」と指摘した。

パナソニックの石橋健作サーキュラーエコノミーユニットリーダーは「製品開発の時から再利用することを考えたデザインが必要だ」と話す。BASFジャパンの石田社長も同様に「デザインする時から、どのように使われて廃棄するかまでを考えて設計している」と説明した。

エプソンドイツのヘニング・オルソンCSRディレクターは、同社が使い捨てのプラスチック樹脂を今年4月から使わないことを決めたと発表した。サーキュラーな素材を組み込むだけでなく、使わない選択もあるとオルソン氏は強調する。

BASFジャパンの石田社長は「サーキュラーエコノミーの実現は簡単ではないが、バリューチェーンがその中できちんと利益を得て、リスクより機会があると納得することが重要だ」とビジネスモデルとして加速させるための重要な点を指摘した。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/