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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

ASVを追求し顧客や他企業と持続的な発展目指す――西井孝明・味の素社長

味の素の西井孝明社長は「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」に登壇し、「ASV (Ajinomoto Group Shared Value)を通じたサステナブルな成長」と題して講演した。地球的な視野から食の健康に貢献するミッションを掲げアミノ酸の研究開発に力を入れること、ビジョン実現のために経営戦略「ASV」を追求することなどを話した。さらにコーポレートブランドに関わるリスクコミュニケーションに取り組んだ、昨年米国で開催したアミノ酸に関するフォーラムを紹介した。(松島 香織)

ASVは味の素版CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)であり、事業そのものを通じて社会課題の解決に取り組み、社会とともに持続的に発展することを目指す。

「先端技術や開発力等、常にイノベーティブな解決策を提供する立場で、顧客や他企業と競合することで持続的に発展することが狙い」と西井社長は話す。

自社で取り組む重要課題は、国内外の経営リーダーとの対話に基づき、SDGs(持続可能は開発目標)に対する企業の責任の観点から設定している。西井社長は次の4つを挙げた。

1 過剰または不足による栄養バランスの問題解決
2 人口構造の変化から「孤食」が増加、忙しさから生じた「心の健康問題」を抱える人への取り組み
3 食資源の課題(食資源を少なくて済むようにすること、持続的な資源供給ができる仕組み作り)
4 地球の持続性や環境問題への取り組み

これらの課題に対して、ベトナムで実践する「学校給食プロジェクト」など栄養バランスのよい食品や、ともに食べる機会を提供すること、スマートな調理で時間を創出できるようにすること、フードロス削減に貢献すること、低資源の事業サイクルを回す仕組み作りなどに取り組んでいる。

ASVの目標は、経営戦略として数値化を進めている。「うま味」を活かして美味しくバランスのよい食事をしてもらうことや、スマート調理メニューの提供などは、調味料の普及、つまり売上につながるものであり、非財務情報として財務情報に紐付けし統合目標としている。

アミノ酸の製造技術研究・開発は、自社の持続的な成長を支え社会課題を解決する製品とサービスを提供している。アミノ酸には体と心を整える役割や機能があるとされ、アスリート向けの食事指導に活用したり、学校の部活動にもそのノウハウを生かした活動を広げている。

スポーツサプリメントや栄養補助食品として様々な生活シーンへ向けたソリューションの可能性があり、今後は、IPS細胞などの再生医療研究領域も視野に入れているという。

医療分野ではすでに、血液中のアミノ酸量のバランスを測定して、その時点で各種がんの発生・リスクを評価する「アミノインデックス®・キャンサー・リスク・スクリーニング」(AICS®)を2011年4月から提供している。「今後はさらに疾病前、未病の状態で対処出来る事業として普及させていきたい」と西井社長は話した。

いわゆるアミノ酸と呼ばれる「グルタミン酸ナトリウム(MSG)」には国内外でネガティブなイメージがある。

食材の基本の味であり純粋な「うま味」素材であることを世界中に理解してもらうため、2018年9月に開催したのが「WORLD UMAMI FORUM」だ。15カ国から230人の研究者らがニューヨークに集まり「うま味とMSGの認識を高める有意義なものだった」など肯定的な評価を得ている。

環境負荷低減に関する取り組みとしては、大手食品メーカーと共同で物流の仕組みを構築し、2019年4月に共同会社「Fライン」を設立する。ドライバー不足解消や従事者の労働条件の改善、加えて物流の効率化に伴うCO2削減を見込んでいる。

西井社長は「エンゲージメントサーベイによる評価、マテリアリティ、社外からの意見をアップデートして、次の経営計画に結びつけていくサイクルを回しているところ。継続的に取り組んでCSVの進んだ企業を目指す」と締め括った。

松島 香織 (まつしま・かおり)

株式会社オルタナ 特約記者。
企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。