• 公開日:2018.08.09
  • 最終更新日: 2025.03.02
スタバ、リサイクル率50%超にー異業種他社と協働
  • 中島 洋樹

スターバックスコーヒージャパン(東京・品川、水口貴文CEO)は、コーヒー抽出後に出る豆かすのリサイクルを行っている。関東と関西の店舗で出た豆かすを乳牛の飼料と堆肥にリサイクルし、食品廃棄物を削減する取り組みだ。このリサイクルは酵素の研究に強みを持つ異業種のメニコンとの協働により実現した。豆かすのリサイクルにより、同社はリサイクル率を豆かすリサイクル開始前の32.4%(2013年)から、51.9%(2017年)にまで高めることに成功した。(オルタナ編集部=中島洋樹)

スターバックスコーヒージャパン サプライチェーン本部品質保証部店舗衛生・環境推進チームの普川玲チームマネージャーによると、同社は以前、店舗でコーヒー抽出後に出る豆かすをほとんど廃棄していたという。

同社の食品廃棄物のうち、約85%は豆かすに代表されるような「食べられない」ものであったことから、「豆かすをリサイクルできないか」との話が持ち上がった。普川マネージャーは「CSR部が役員直属で、本件に関する相談や提案のやり取りが容易だったことが実現に向けて大きかった」と振り返る。

リサイクルした豆かすを混ぜた飼料を食べる乳牛

2011年から、豆かすリサイクルへの取り組みをスタートさせたが、2つの課題が立ちはだかった。

1つ目は、豆かすの焙煎臭をどうやって除去するか。豆かすリサイクルは関東と関西の店舗で実施するが、関東では乳牛の飼料、関西では堆肥にするにあたり、焙煎臭が問題となっていた。特に乳牛は焙煎臭を嫌がり、豆かすを混ぜた飼料に見向きもしなかったそうだ。

2つ目は、各店舗で出る豆かすの運搬をどうするかだ。リサイクル施設まで豆かすのみを運ぶ便を仕立てるのは費用がかさむことになり、決済が下りにくかった。

焙煎臭の課題を考えるうちに、この話を聞いたコンタクトレンズ国内最大手メニコンから協力の申し出があった。酵素の研究に強みを持つメニコンのバイオ環境事業部との協働で、乳酸菌を用いて焙煎臭の除去が可能となった。

リサイクルした豆かすからできた堆肥

運搬については「食品リサイクル・ループ」の認証を取得することにした。通常は豆かすは一般廃棄物扱いだが、同認証を取得することで、特例として一般廃棄物収集運搬許可が不要となり、運送業者が輸送できるようになる。

これにより、豆かすを原料とする飼料を食べた乳牛から搾取した牛乳や、堆肥で生育した野菜を運ぶ便の帰りに店舗から豆かすをリサイクルセンターに運べるようになった。さらに、リサイクルセンターで製造された飼料や堆肥を生産者らに運ぶことも可能だ。

「食品リサイクル・ループ」を導入するにあたり、同社は既に認証を取得していた流通大手のユニーにアドバイスをもらったという。

こうして2つの課題を解決して2014年3月末から豆かすリサイクルがスタートした。同社は豆かす以外にも、ミルクパックやプラスチック製容器などのリサイクルも進めている。リサイクルは順調に推移して、同社のリサイクル率は51.9%(2017年)になるまでに成果を挙げている。

普川マネージャーは「今後は店舗で販売するドーナツなどのフードロスに関しても取り組んでいきたい」と抱負を語った。

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written by

中島 洋樹(なかじま・ひろき)

株式会社オルタナ オルタナ編集部

2018年4月オルタナ入社。入社1ヵ月弱でCSR検定3級合格。趣味は高校野球観戦、絵画鑑賞、テニス、ビリヤード、サイクリング、ウォーキング、国内旅行など広範囲におよび、特技はカラオケ(レパートリーは50曲以上)。好奇心旺盛で、編集のオールラウンダーを目指す。 「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。

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