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世界や日本の先進企業はどう人権問題に取り組んでいるか

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SB 2018 Tokyo

サステナブル・ブランド国際会議2018東京で行われたセッション「世界や日本の先進企業はどう人権問題に取り組んでいるか」には、アシックスCSR・サステナビリティ部の吉本譲二部長、NPO法人ACE事務局長・共同創設者の白木朋子氏、英コンサル「トゥエンティフィフティ」のルーク・ワイルドCEO、フィリップ・モリス・インターナショナルのジェニファー・モテルス氏が登壇した。ファシリテーターを務めたのは、サステナビジョン代表取締役の下田屋毅氏。(オルタナ編集部=小松 遥香)

下田屋氏は初めに、ビジネスと人権問題に関連する事例と現代の奴隷の現状、そして関連する規制について世界的な動向を紹介した。ILOとウォーク・フリー財団の発表によると、2016年時点で世界の推定4030万人が現代の奴隷制にあたる環境下で働くことを与儀なくされている。そのうち強制労働の被害者は約2490万人おり、1600万人が企業活動によって搾取されている。世界の子どもの10人に1人が児童労働を行っているという現実がある。

トゥエンティフィフティのルーク・ワイルド氏は、電子部品の原料調達における人権課題の動向について話し、ドイツで、アウディやBMWグループ、ボシュ・グループ、ダイムラー、フォルクスワーゲン、ティッセンクルップなど自動車産業界が一つとなり、電気自動車の人権リスクを評価する作業部会をつくっていることなどを紹介した。

フィリップ・モリス・インターナショナル グローバルアフェアーズ・ポリシーでマネージャーを務めるジェニファー・モテルス氏は、同社がたばこ栽培の過程における児童労働と強制労働を排除するために実施しているプログラム「耕作地における労働慣行(ALP)」について説明した。同社は、45万の小規模農家を対象に、児童労働や強制労働を禁じる明確な規定・方針を掲げ、それを実施するための人材育成、社内外でのモニタリング・評価を行っている。さらには、ステークホルダーや第三者とのダイアローグを実施することで、同プログラムを改善している。

人権専門の国際弁護士でもあるモテルス氏は、「児童労働の約6割が農業分野で起きています。ここにいる私たちのように知識があり、ある程度の立場にいる人には、児童労働の問題に光を当て、解決しようと動く役割・義務があると思います。根深い問題ですが、問題を明らかにし、透明化させるのです。ここにいる私たちがそうやって取り組めば、児童労働は排除できるのだと思います」と話した。

アシックスCSR・サステナビリティ部の吉本譲二部長は、スポーツ用品業界の課題として、委託工場生産と労働集約型産業であること、サプライヤーの階層が深いことなどを挙げた。同業界では、米ナイキの児童労働問題が発覚し不買運動に発展した90年代以降、CSRが重要視され始めた。その後、2004年に開催されたアテネ五輪の際、NGOが世界の大手スポーツブランド各社を工場での搾取を理由に訴えたことを契機に、同社でもCSRへの取り組みが大きく前進したという。

吉本部長は委託先工場の監査についても説明。監査の難しさについて、「現場の人たちは1セントでもコストを削減しようと努力しています。コストが上がるからと、CSRへの抵抗の声もありました。しかし法令遵守は当然のことであり、コストを下げるために法令違反をするリスクは大変高いです。ですから、そのことを何度も何度も言い続けて、現場の人たちの考えも変わってきたと思います」と話した。

日本にも児童労働は存在する

ACEの白木朋子事務局長は「ディープサプライチェーンに存在する児童労働」をテーマに、自身が20年間行ってきた活動を説明。

「児童労働を正しく理解し、見分けられるようにすることが大事です。児童労働のなにが問題かというと、働いているということよりも教育を受けられないことによってスキルを身に着けられない。それにより、将来の選択肢が奪われる。そして、貧困や悪循環から抜け出せない。そして貧困が世代間で受け継がれることです」と語った。

そして同事務局長は、「日本にも児童労働はあります。低賃金、長時間労働で働く外国人技能実習生も強制労働です。18歳未満は国際条約上、子どもと認められます。茨城県で2017年12月、15歳のアルバイトの女の子が工場から転落し、死亡した事件も若年労働者による危険有害労働に該当する児童労働です」と指摘した。

小松 遥香

オルタナ編集部。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。