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ソーシャル・ファイナンス新時代へ

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SB 2018 Tokyo

社会的インパクト投資の一つである「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」やベンチャーフィランソロピーなどが始まり、社会のお金の流れが変わりつつある。「社会課題解決のためのソーシャル・ファイナンスの新時代をどう創るのか」のセッションでは、日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事を進行役に、社会的投資推進財団の工藤七子常務理事、ソーシャル・インベストメント・パートナーズの白石智哉共同代表理事、三井住友銀行の上遠野宏成長産業クラスターグループ長がソーシャル・ファイナンスをテーマに議論を深めた。(辻 陽一郎)

社会課題の解決を図るとともに経済的利益も追求する投資行動が社会的インパクト投資。工藤常務理事は、「どちらも追求するところに資金提供をする人が社会的インパクト投資家で、世界では12兆円くらいのマーケットがある。日本では718億円くらいだが成長してきている」と話した。これまで助成金を渡しているだけではなかなか社会が良くなっていかなかった。社会課題解決に投資的にお金が流れていく仕組みをつくることを目指しているという。

三井住友銀行は昨年7月、神戸市の糖尿病患者が人工透析に至るのを予防する事業を対象にSIBの取り組みを開始した。SIBとは、成果連動型で公共サービスの提供をする仕組みだ。仕様書通りにやればお金が出るのでなく、成果連動型にしようというもの。受注する事業者はリスクが高いので、お金のリスクは投資家がとる。上遠野グループ長は「成果を上げるところを監視するのは、お金を出した金融機関が担う。社会貢献したい個人投資家もお金を出している」という。

ベンチャーフィランソロピーを始めた白石代表は「これまでのベンチャーキャピタルが、投資家からファンドとしてお金を預かり事業リスクをとって会社を助けるものであれば、フィランソロピーは社会課題の解決を行う団体に寄付するものだ」と話した。成長性の高い非営利組織や社会的企業へ、中長期で資金提供と経営支援を行う。事業の成長を促し、社会課題解決を加速させるモデルだ。

重要なのは社会にどのような成果が出たのか、計測可能な成果を見える化すること。「従来のベンチャーキャピタルと違うのは、測定可能なインパンクトがあること。いかに数値化できるか、定性をウォッチできるかというところをみている。スケールも大事で、一定の地域よりもいいモデルを使って展開していく」

子どもの放課後支援を行うNPOには、ロジックモデルを整理して、事業計画をつくったところ、企業と協働するプログラムが大幅に増えた。予算規模も拡大し、寄付金がほとんどなくてもまわるモデルになったという。

辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)

オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。

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