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統合的思考とESG経営・ESG投資の重要性

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SB 2018 Tokyo

左から、丸井グループの青井社長、サンメッセの田中氏、大和総研の河口氏

2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名した。これにより、日本でもESG(環境・社会・ガバナンス)投資へのシフトが進み、企業も非財務情報の開示がより一層求められている。セッション「経営の統合的思考とESG経営/ESG投資の重要性とは」では、丸井グループの青井浩代表取締役社長、大和総研の河口真理子調査本部主席研究員、サンメッセの田中信康執行役員が議論を深めた。(瀬戸内 千代)

「統合報告書はきわめてトップマターであり、経営そのもの」。青井社長は、統合報告書の検討会議に年間40回も出席したという。同グループが発行する共創経営レポート(統合報告書)では、冒頭8ページに渡って青井社長が書いたトップメッセージがつづられている。

「投資家が一番重視しているのはトップメッセージ。投資家が読むときに一番注目するところを書いてなければ、その後を読んでもらえない。自分たちがどういう経営を目指し、どういう価値を創り出そうとしているのか。肉声ですべてのステークホルダーに伝えるという姿勢が必要」(青井社長)

統合報告書のトップメッセージは、トップ自らが書く企業もあれば、担当者が書く企業もある。青井社長は、戦略としても思いとしても、自分で書くことが重要だという。

河口主席研究員は「経営トップ自らが書いていないメッセージはすぐに分かる。経営トップの統合報告書への認識が低く、利益だけを見ていればいいというマインドのことも多い」と指摘した。

ESGと財務は、体質とパフォーマンスの関係

丸井では投資家向けに説明会を行う。戦略や財務以外に、サステナビリティをテーマとした回がある。「投資家からは、『これまでESGやプレ財務のことまで踏み込めなかったが、本当は背景にあることを知りたかった』と言って喜んでもらえる。これまで提供していなかっただけで、投資家は財務以外のことにも非常に関心があった」と青井社長。

「ESGと財務の関係は『体質とパフォーマンス』」と河口主席研究員は説明する。例えば150キロで投げる投手がいたとして、ふたを開けてみたら肩がぼろぼろかもしれない。どんなに速い球を投げられるパフォーマンスができても、身体はけががなく、健康でないといけない。財務が目先のパフォーマンスであれば、ESGは体質のようなもの。両面を見ることが重要だ。

青井社長は、財務に対して「プレ財務」という考え方を説明し、「プレ財務は今現在、財務に結実はしていないけれど時がくると財務になる。企業価値につながるものだ」と話した。

丸井が共創経営で目指すのはすべてのステークホルダーの「しあわせ」の拡大だ。青井社長は「ものを売るより『しあわせ』を売りたい。『しあわせ』を利益の上位概念としている。これまでなかなか言う機会がなかったが、統合報告書を借りて『しあわせ』を打ち出すことができた」と語った。

瀬戸内 千代 (せとうち・ちよ)

海洋ジャーナリスト。雑誌「オルタナ」編集委員、ウェブマガジン「greenz」シニアライター。1997年筑波大学生物学類卒、理科実験器具メーカーを経て、2007年に環境ライターとして独立。自治体環境局メールマガジン、行政の自然エネルギーポータルサイトの取材記事など担当。2015年、東京都市大学環境学部編著「BLUE EARTH COLLEGE ようこそ、「地球経済大学」へ。」(東急エージェンシー)の編集に協力。