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積水ハウスが地球環境大賞、自然エネで防災力高める

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調整池に設置した太陽光発電の電力はスマートタウン内で消費する

東日本大震災で大きな被害を受け、復興事業を進める宮城県東松島市と積水ハウスが共同で手がける「東松島市スマート防災エコタウン」プロジェクトが「地球環境大賞」(主催:フジサンケイグループ)を受賞した。同プロジェクトでは、太陽光発電などの自然エネを最適に調整しながら、自営線により地域の住宅や病院などに電力を提供し、災害時に系統電力が遮断した場合にも最低3日間は電力供給が可能。地産地消するエネルギーで防災力を高める仕組みが評価された。

約4ヘクタールの敷地に広がる「東松島市スマート防災エコタウン」は、災害公営住宅85戸と集会所、4つの病院などに自営線により電力を供給する「マイクログリッド」を構成する。「マイクログリッド」とは、大規模発電所の電力供給に頼らず、コミュニティでエネルギーの地産地消を目指す、小規模なエネルギーネットワークのことである。

同プロジェクトのエネルギー供給源には、調整池に作られた400kWの太陽光発電などが使われる。大型の蓄電池も活用し、余剰の電力は蓄電し夜間などに使い、不足分は、系統電力で補う。この仕組みにより2016年は年間307tのCO2排出量を削減した。

しかし、こういった分散型電源は、エネルギー供給を安定させるため情報通信技術を利用した管理運転が必要だ。この需給調整は、民間と行政の橋渡しをする中間支援組織である「東松島みらいとし機構(HOPE)」が担い、地域新電力会社も設立された。

日本初の自営線マイクログリッドの概念図

自然エネを使ったマイクログリッドの強みは災害時に現れる。大規模発電所に頼らず独自に電力を供給できるからだ。グリッド内では災害時にはバイオディーゼルを使った大型の発電機も稼働し、最低3日間は電力供給が可能だ。実際、系統電力の事故により同地域が停電となった際も、 同エリアでは通常通り電 力供給がされたという。

地域の電力が地域で消費されることで「人とお金、エネルギーが循環する」と東松島市復興政策課の小野寺昭博さんは話す。エネルギー費用は外に流出せず市内に留まり、地域電力会社の収益はまちづくりの事業にも還元される。

大型の蓄電池は自然エネの需給調整にも役立つ

これまでのスマートタウンでは、実証実験が終わると運用を停止することが多かったが、「ここでは自力で利益が創出でき、継続できることを特に重視した」と積水ハウスの石田建一常務執行役員は話す。「この仕組みをロールモデルとして検証しつつ、他エリアでも展開をしていきたい」と市側の小野寺氏も今後の展開に期待をかける。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/