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  • 公開日:2017.12.05
  • 最終更新日: 2025.03.21
地方創生の最前線を学ぶ「まちてん」
    • 小松遥香

    大野市の岡田高大市長(左)と伊藤園の笹谷秀光 常務執行役員CSR推進部長

    持続可能なまちづくりを目指し、自治体や企業の連携を創出するイベント「まちてん」が12月8-9日に東京・渋谷の渋谷ヒカリエホールで行われる。8日には伊藤園が、地方創生CSVをテーマにしたセッション「世界的視野と文化で持続可能なまちづくり」を開催。今回、まちてんの実行委員長を務める笹谷秀光・伊藤園 常務執行役員CSR推進部長と同セッションに登壇する福井・大野市の岡田高大市長に話を聞いた。(オルタナ編集部=小松 遥香)

    「日本のまちに、光をあてろ」をテーマに開催されるまちてんは、「まち」の「展」覧会の略だ。今年は「稼ぐ力」「ライフスタイルの改革」「学び」といったより実践的な観点から、まちづくりの事例やアイデアを発表するカンファレンスやセッションが展開される。

    笹谷実行委員長は、「日本では、陰徳善事の精神から良い取り組みを公にしないという美学がある。しかし、発信しないと仲間が増えない。まちてんは、『発信型三方良し』の実現の場所だと考えている。まちづくりや地方創生を自ら担いたいと考える参画意識のある方々にぜひ来て欲しい。学びの多いイベントになるだろう」と意気込みを語った。

    自然資源「水」のブランディングで地方創生

    笹谷秀光・伊藤園 常務執行役員CSR推進部長

    笹谷 :大野市は名水のまちとして知られています。8月1日「水の日」に出した新聞広告「『水の日』なんか、いらない世界にしよう」は、日経広告賞の最優秀賞 環境大臣賞にも選ばれたそうですね。

    岡田 :大野市は元々、地下水が豊富な場所で湧水地も多くあった場所でした。しかし昭和40年代後半から50年代にかけて井戸枯れを経験しました。それがきっかけで、国内でも先進的な地下水保全施策を実施してきました。また名水百選にも選ばれた湧水地もあります。こうしたことから、水で地方創生をしようと取り組んでいます。

    また「結(ゆい)の故郷(くに) 越前大野」として、大野市をブランディングするプロジェクトにも力を入れています。「結」とは、日本人が古くから大切にしてきたお互いを支え、思いやるといった伝統的な精神文化です。このプロジェクトを通し、ふるさとに自信と誇りを持ち、当たり前に思っていることをありがたいに変えていきたいと考えています。

    笹谷 :そういう市民の誇りを盛り上げる仕組み(プラットフォーム)をつくられたことは素晴らしいですね。まちてんでも「シビック・プライド (市民の誇り)」をいかに盛り立てて、やる気を引き出すことが狙いの一つです。仕組みづくりは簡単ではなく、市長のイニシアティブがなければ実現できません。

    結の故郷の「結」をキーワードにして、点と点を結び、ストーリー化して地方創生を進めていることは先進的ですね。

    実際に、人口減少対策として取り組む「水への恩返し キャリング・ウォーター・プロジェクト」では、東ティモールに水道設備をつくる支援を行っています。そのほかにも、「水をたべるレストン」として大野市の水を使った商品の開発などを行っています。

    大野市の岡田高大市長

    岡田:東ティモールには、市民の寄付金などを財源に年間10万ドルを寄付しています。東ティモールの支援地域に暮らす子どもたちは水運びの作業のために学校に通えていませんでした。しかし支援を始めて2年目になり、支援金で水道設備が整ったことで子どもたちは学校に通えるようになってきたそうです。

    笹谷:そうした支援がきっかけで、東京オリ・パラの際は東ティモールのホストタウンになるそうですね。ストーリーの流れの深まりに感心します。

    今回のまちてんでのキーワードの一つは「クールジャパン」「インバウンド」「レガシー」です。日本の良いものを徹底的に掘り起こして、外国の方々にそれをお伝えして、良いものをレガシーとして五輪後にも残していくことが大切だと思います。伊藤園でもそれに取り組んでいます。

    岡田:今、日本全体を見渡して、自信や誇りを持てなくなっていると感じています。不便さのない世の中が当たり前なのではなく、ありがたいことなのだという意識に変えていくことが大事ではないかと思っています。まちてんでもそのことを伝えていきたいですで。

    8日のセッション「世界的視野と文化で持続可能なまちづくり」には、大野市長のほかに高知県の尾崎正直知事や富山・魚津市の村椿晃市長も登壇する。3つの自治体は、伊藤園が重視しているキーワード「クールジャパン」「インバウンド」「レガシー」に合うという理由で選ばれた。

    高知県と伊藤園は10月、SDGsを踏まえ、「地方創生の推進に向けた連携と協力に関する協定」を締結。きっかけは昨年のまちてんでの笹谷常務執行役員と尾崎知事との共演だ。両社は今後、地産外相や観光振興、移住促進、環境保全活動や災害時の支援に関して協力していくという。

    富山・魚津市の「たてもん祭り」は2016年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録された。同祭りは、大漁と海上の安全を祈って300年前からが行われているものだ。また魚津市は水の美味しさでも有名な地域だ。

    セッションのファシリテーターは笹谷実行委員長、コメンテーターは青柳正規・文化庁前長官と田中里沙・事業構想大学院大学学長が務める。

    「世界的視野と文化で持続可能なまちづくり」は、12月8日11時30分から渋谷ヒカリエ9階のヒカリエホールで開催される。

    ◆12/8-9 第3回まちてん
    と き:2017年12月8日(金)10:00-18:10
    オープニング・トーク 9:30-10:00(開場9:15)
    レセプション・パーティー 18:50-20:00※有料
    9日(土)9:30-18:00
    ところ:渋谷ヒカリエ 9F ヒカリエホール
    主 催:まちてん2017実行委員会

    written by

    小松 遥香(こまつ・はるか)

    オルタナ編集部

    アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。

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