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仏、2022年までに給食食材の半分をオーガニックに

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オーガニック100パーセントのムアン・サルトゥー市の小学校の給食風景

フランスは2022年までに、給食食材のオーガニック(有機)比率を50パーセントにすることを法律で定める。トラヴェール農業相が仏メディアに明らかにした。フランスでは近年、学校給食にオーガニック食材を導入する動きが相次いでおり、政府としても環境と健康に配慮した給食を支援する。給食食材の半分を有機にすることはマクロン大統領の公約でもあった。(羽生のり子)

「オーガニックでローカルな食材を50パーセントにするのが目標だ。2022年にはケージ飼い鶏の卵をやめる」とトラヴェール農相は日曜日発行の週刊紙「ジュルナル・デュ・デイマンシュ」のインタビューで明言した。

これは学校給食だけでなく、官公庁など公共機関の職員食堂も対象になる。フランスでは2016年11月に「2020年から給食と公共機関の団体食堂のオーガニック率を20パーセントにし、40パーセントを持続可能な食材(ローカル、産直、季節の食材)にする」という修正法案を「平等と市民性の法」に加えることを国民議会(下院)が可決したが、2017年1月に憲法評議会が「修正法案はこの法律の主旨に合わない」と判断したため、この部分が廃案になったという経緯がある。

それ以前は、サルコジ政権が開催した「環境グルネル会議」で、「給食のオーガニック率を2020年に20パーセントにする」ことを目標に決めたが、進展していなかった。それを考えると、50パーセントはかなり高い目標だ。

現在、フランスの学校給食のオーガニック率は、全国平均3パーセントだ。学校給食にオーガニックを普及させるためにできたNPO「アン・ビオ・プリュス」に加盟している自治体では20パーセントと高い。なかでも、同団体のジル・ペロル会長が助役を務める南仏のムアン・サルトゥー市ではオーガニック率100パーセントを実現している。

オーガニック率90パーセントのパリ2区の小学校の給食

給食のオーガニック率が高いところでは、肉を減らし、豆類などの植物タンパクを増やしている。オーガニックの肉は高いので、この方法で給食代を通常の給食並みに抑えることができる。週に1回、ベジタリアン食にしている自治体もある。

はからずもユロ環境相は、11月30日発行の週刊誌「ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール」のインタビューで、「肉は食べるか」と聞かれ、「5人家族の中で2人はベジタリアン。自分を含め、あとの3人は週に1回しか食べない。(中略)学校給食では週に1回、ベジタリアンの食事を出したい」と述べた。

農薬問題などでことごとく意見が違う農相と環境相のあいだは冷戦状態だと、フランスの複数のメディアが伝えている。環境相の「週一ベジタリアン給食」の提案を、農相は「処罰を与えるようなエコロジー」と酷評した。しかし実際は、2人の発言は補完しあうもので、オーガニック率が上がればゆるベジ傾向になっていくことが、オーガニック給食を実現した自治体でわかっている。

羽生のり子(はにゅう・のりこ)

環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協).