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SDGs、日本政府の取り組み遅れるーー蟹江教授指摘

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蟹江憲史・慶応大学教授

東京海上日動と三菱商事が共催する「第59回丸の内市民環境フォーラムーーみらいから『今』を考える」が10月31日に開催され、国内のSDGs(持続可能な開発目標)研究の第一人者、蟹江憲史・慶応大学教授が日本におけるSDGsの取り組みの現状について語った。同教授は「この1年間で認知度が上がった。企業だけでなく、学校や自治体にも取り組みが広がっている」としながらも、政府の取り組みが多くの点で遅れていることや「SDGウォッシュ」が課題と指摘した。(オルタナ編集部=小松遥香)

今年はSDGsの節目の年とも言われる。SDGsの発効から2年目を迎え、各セクターが広報や推進に力を入れ始め、企業や市民への浸透も進んできた。

SDGs推進に関して日本政府に政策提言も行ってきた蟹江教授は、今年の動きについて「研究者など特定の人だけでなく、市民の方々にも徐々に浸透してきていることは大きな進歩だ」とし、「来年1月に開催されるダボス会議後の2月頃には、企業の取り組むべきことも明確になり、より活発になるのではないか」と語った。

この日、東京・丸の内の「丸の内ビルディング(丸ビル)」のエントランスホールで行われたフォーラムには一般の参加者100人が集まった。

蟹江教授は、「SDGsは今のSNS時代に合っている」と説明。これまでの国際条約と比較しながら、「SDGsは野心レベルの目標提示から始まり、実施メカニズムや法的拘束力はなく、モニタリングと評価のみだ。SNSで『いいね』を押すのと同じように、17目標の中から『いいね』と賛同する目標をみんなで一緒にやりましょうという取り掛かりやすさがある」と評した。

自治体のSDGsへの取り組みが活発化している。北海道下川町では9月にSDGsへ向けたフィールドワークツアーが実施され、札幌市や兵庫県豊岡市、北九州市でもSDGsを推進するシンポジウムが行われた。滋賀県は、県を挙げてSDGsを推進している。

蟹江教授は、地方自治体とSDGsについて、「過疎化や相対的貧困、災害などの課題を抱える地方自治体は、未来目線のビジョンを掲げる必要がある。またSDGsに取り組むことで、魅力の掘り起こしにもつながる。自治体とSDGsは親和性が高い」と話した。

現状の課題と2018年

現在の課題について、SB-Jの取材に、同教授は「企業や市民、学校などに比べ、政府が一番遅れている。ノルウェーやスイスなどSDGsの取り組みが進んでいる国では、政策の予算化や国の施策の評価にSDGsが使われている。ようやく内閣府などが予算化を始めたが、指標の出し方などを含め政府が誘導できることはまだまだある」と指摘した。さらに「SDGsが広まることは嬉しいが、実態が伴わないグリーンウォッシュならぬ『SDGsウォッシュ』のような動きが見受けられる」と懸念も示した。

一方、SDGsの最終年となる2030年に社会で活躍する世代になる学生たちへのSDGsの浸透は進んでいるという。蟹江教授が大学で教えている学生たちも2030年に30代半ばになる。同教授は、「社会で主役になる学生たちが、SDGsを通して2030年の社会像について考えることは学生たちの将来にとっても貴重な経験になるだろう」と話した。大学での取り組みは慶応大学や東京大学、滋賀県立大学、金沢工業大学などで進んでいるという。

2018年にSDGsがどのように展開していくと予想するかについて、蟹江教授は、「2018年は『測る』年になる。色々なSDGの指標が生まれてくると予想するが、その中で淘汰されていくだろう。同時に、日本は2020年の東京オリパラに向けて、サステナブルな国として筋道をつくっていくことが大事だ」と語った。

小松 遥香

オルタナ編集部。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。