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シェフたちが学んで広めるサステナブルシーフード

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Photo:chuttersnap

我が国の料理人たちが、水産資源の危機を知って積極的に発信し始めている。サーモン&トラウト(東京・世田谷)の森枝幹シェフは10月7日、渋谷で「d47 MUSEUM」のトークイベントに登壇し、東京海洋大学の勝川俊雄准教授と、環境や未来の魚食に配慮した「サステナブルシーフード」の大切さを語った。会場横の食堂では、ティルプス(東京・港)の田村浩二シェフが、資源量が比較的多い太平洋ヤリイカを使った限定メニューを提供した。(瀬戸内千代)

両シェフとも、フードライターの佐々木ひろこ氏が世話人を務めるサステナブルシーフード勉強会「シェフズ・フォー・ザ・ブルー」に参加し、約40人の料理人たちと情報交換を進めてきた。今回のイベントは同会初の一般向け企画で、親子を含む約50人が来場した。

一般社団法人海の幸を未来に残す会の理事でもある勝川氏は、太平洋クロマグロやマサバ、マホッケが乱獲によって激減し、まだ小さな個体や代用魚が出回っている日本の現状を解説。1986年生まれの森枝シェフは、「魚は最初から高かった。大きなサバはないと築地で言われた時は、そういう魚なのかと思った」と語った。

森枝シェフが選んだ「安定して入ってくるノルウェー産のサバ」は、漁師が反発の末に漁獲規制を受け入れた結果、資源量が増加。今では脂ののり方など輸出先のニーズを見極め、年1,2カ月の出漁で利益を上げているという。

勝川氏は、日本にも「海に魚をちゃんと残す仕組み」が必要と述べ、政策を変える一歩として、消費者が身近な店でサステナブルシーフードをリクエストすることを提案した。

シェフズ・フォー・ザ・ブルー初のトークイベント「サステナブルシーフードって?」は、D&DEPARTMENT(東京・世田谷)が「これからの暮らしかた −Off-Grid Life−」展の一環として開催した。

会場から、特定の魚種ばかり食べるのはサステナブルではないという意見が出ると、森枝シェフは「使われない魚には、歩留まりが悪いなどそれなりの理由があるが、それを利用していくのが、これからのシェフの仕事のひとつになると思う」と述べた。

田村シェフのサステナブルシーフードカレー「タムの腹黒イカレー」は、シェフ立ち合いのもと「d47食堂」で当日と翌日に提供され、限定100食を完売した。

同会のシェフたちは11月19日に青山の国連大学前のファーマーズマーケットにも出店予定だ。

瀬戸内 千代 (せとうち・ちよ)

海洋ジャーナリスト。雑誌「オルタナ」編集委員、ウェブマガジン「greenz」シニアライター。1997年筑波大学生物学類卒、理科実験器具メーカーを経て、2007年に環境ライターとして独立。自治体環境局メールマガジン、行政の自然エネルギーポータルサイトの取材記事など担当。2015年、東京都市大学環境学部編著「BLUE EARTH COLLEGE ようこそ、「地球経済大学」へ。」(東急エージェンシー)の編集に協力。