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隈研吾氏が語る未来に向けたサステナブルな街づくり

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小松精練代表取締役会長の中山 賢一氏(左)と建築家・東京大学建築学専攻教授の隈 研吾氏(右)。

新国立競技場の設計を手掛ける建築家・隈研吾氏と小松精練(石川・小松)による共同プロジェクト「サステナブル・プロトタイピング・ラボ」はこのほど、「未来に向けた都市環境のアイディア」と題したシンポジウムを東京で開いた。この機に行ったSB-Jの独自取材に対し、隈氏は「建築家がデザインだけをすれば良いという時代は終わった。建築プロセス全体のサステナブル(持続可能)な取り組みについて、建築家はもっと発信していくべき」と述べた。建築の分野でもサステナブルな考え方が焦眉の急となっている。(オルタナ編集部=沖本啓一)

「衣服化する建築」――隈研吾氏インタビュー

――サステナブルな街づくりへの基本的な考えをお聞かせください。

隈氏:これから先、建築物単体ではなく、街全体がサステナブルでないと、人間は存続していけない。それくらい 危機的な状態 にあると感じています。 街全体のサステナビリティ を考える上で、僕らが最も疎かにしてきたのは材料です。20世紀にはコンクリートや鉄を使用し、「早く、大きく」ということしか考えていませんでした。 その思考から抜け出さないと街のサステナビリティは回復できません。

今、僕らは街が失ったものの大切さに改めて気付き始めています。そんな時代だからこそ、 炭素繊維などの新しい素材に出合って、目から鱗が落ちる思いがしています。

――素材の変遷が、人の生活をどのように変えていくと期待していますか。

隈氏:そもそも、人間の身体は柔らかく、弱いものです。これからの建築は、衣服のように身体に馴染むものに近づけなければいけない。数値的だけでなく、都市を心理的にサステナブルにすることが必要です。そうすることで、建築によって癒される、疲れないというように、建築が心理的に人間を救うきっかけになるのではないかな、と思います。

――「衣服化」とは具体的にどのようなことでしょうか。

隈氏:建築の衣服化にはさまざまなレベルがあります。質感が柔らかい、触れても冷たくないなどの他、例えば、襖や障子は自由に脱いだり着たりできます。衣服的な自由度があるのです。日本建築は、実はとても衣服化された建築です。

――建築の現場ではいまだに持続「不」可能な調達や、過重労働の問題も多くあります。

隈氏:これからは造るプロセスも含め、トータルで建築をしなければなりません。建築家がデザインだけをすれば良いという時代は終わりました。建築家は全体のプロセスに対して、もっともっと発言するべきです。「作品を通して」ということに留まらず、さまざまな形でメッセージを発信できる時代です。建築プロセス上の問題についても、建築家は積極的であるべきだと思っています。

オリ・パラに向けた街づくり

グリーンビズは産廃をリサイクルして開発された、厚さ約2cmの基盤素材。緑化が可能で保水性、透水性に優れる。屋上、路面や壁面に使用される。隈氏の建築にも複数例使用されている。

この日行われた展示会では、小松精練による緑化基盤素材「greenbiz(グリーンビズ)」や、炭素繊維複合材料「カボコーマ」などの新素材が展示された。いずれも隈氏が提唱する「建築の衣服化」にフィットする。小松精練は6月から、グリーンビズなどを利用し持続可能な都市基盤を形成する「グリーンインフラ」事業に本格参入し、ヒートアイランドなどの都市部の問題の解決に取り組んでいる。

シンポジウムでは隈氏のほか、世田谷区長の保坂展人氏などが登壇した。この中で保坂氏は、「良い街づくりの根源には人の尊厳を認め合うという哲学がある。一人の政治家、数人の役人で行うのではなく、バトンをつないで事業を継続することが必要。2020年のオリ・パラ開催に向け、東京をどのような街にしたいのかを皆様と共有したい」と述べた。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

オルタナ編集部
好きな食べ物は鯖の味噌煮。