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五洋建設や戸田建設が防潮堤の建設現場で環境に配慮

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工事に伴い移植されて残ったウミミドリ(宮城県レッドリスト絶滅危惧種指定の海岸植物)

巨大な防潮堤が環境や景観を破壊するという批判が広がるなか、建設会社数社が環境配慮型の工事を進めている。宮城県気仙沼市の中島海岸では、干潟保全を求める住民の声を受けて、発注主の宮城県が希少生物の移植や塩性湿地の造成を決定。建設会社は継続的に生物学者の助言を受けており、五洋建設や戸田建設の社員は8月23日に干潟生物の専門家とともに現場で貝やカニなどの調査を行った。(瀬戸内 千代)

宮城県は、中島海岸に幅約95メートル、高さ約15メートル、長さ約820メートルの防潮堤を、津谷川河口から約2キロメートルの両岸に河川堤防を計画。2018年度の完成を目指し2014年に着工した。五洋建設・みらい・徳倉建設工事共同企業体(以下、JV)、竹中土木・橋本店・寄神建設JV、戸田建設・淺沼・三浦JV、野口建設、アルファー建設が、各担当工区を施工している。

約1ヘクタールの塩性湿地を造成するのは津谷川右岸堤防の陸側で、戸田建設・淺沼・三浦JVが担当。底生動物のために小さな河川の流れを寸断しないよう仮水路の設置や付け替えをしたり、希少植物を移植したりしている。

東日本大震災で壊れた右岸堤防の跡地には、多様な底生動物が住む干潟が形成されていた。住民による「小泉海岸及び津谷川の災害復旧事業を学び合う会」が、その保全を提案。県が設置した学識経験者から成る検討会も、建設地の生態系の重要性を指摘したため、工事の手順と内容が変更された。

10人の検討委員の1人で、県の「環境アドバイザー」を務める鈴木孝男・元東北大学助教は、干潟生物の専門家。昨年と今年5月に続き、8月23日も現場で生物調査を実施した。経過を観察しながら施工者に「水際はできるだけ勾配を緩くし、直線的ではなく凹凸など形状にも変化をもたせ、多様な生息場所の確保を」といった生態系保全のポイントを伝えている。

全工区の環境調査をとりまとめた五洋建設の環境事業部は、14人のうち2人が生物学の修士号を持っている。干潟生物の研究を経て、土木技術と環境技術の融合を目指して入社した環境担当の竹山佳奈氏は、「環境配慮したくても具体的な工夫が分からない施工業者が多いので、専門家に指導していただける機会は大切」と語った。

瀬戸内 千代 (せとうち・ちよ)

海洋ジャーナリスト。雑誌「オルタナ」編集委員、ウェブマガジン「greenz」シニアライター。1997年筑波大学生物学類卒、理科実験器具メーカーを経て、2007年に環境ライターとして独立。自治体環境局メールマガジン、行政の自然エネルギーポータルサイトの取材記事など担当。2015年、東京都市大学環境学部編著「BLUE EARTH COLLEGE ようこそ、「地球経済大学」へ。」(東急エージェンシー)の編集に協力。