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ロレアルとアデコ、就労支援で日本のNPOと協働

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Photo:日本ロレアル

ロレアル(フランス)と人材サービス企業のアデコ(スイス)の各日本法人が日本のNPOと協働し、シングルマザーへの就労支援を進めている。支援プログラムでは、5カ月間のスキルアップ講座などを提供。これまでに、受講者の22%を2社が正社員などに採用した実績がある。ひとり親世帯の貧困対策が課題となる中、第3回目の支援プログラムの募集が9月末まで行われる。(オルタナ編集部=小松 遥香)

日本の相対的貧困率は、バブル崩壊を経て平均所得が低下し始めた1990年代半ばから、上昇している。2016年に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」によると、子どもの貧困率は13.9%で、7人に一人の子どもが貧困層にいる。とりわけ、ひとり親世帯の貧困率は高く、50.8%に上る。

ユニセフが7月に発表したSDGsで見る日本の子どもの課題『レポートカード14』でも、日本の子どもの貧困撲滅への取り組みは、41カ国の先進諸国の中でも23位と低い。

子どもの貧困の研究で著名な、阿部彩・首都大学東京 子ども・若者貧困研究センター長は、「子どもの貧困削減に対して、生活保護制度や児童手当、児童扶養手当などの現金給付といった極めて限定的な取り組みしかなされていない」と行政の取り組み課題を同レポートで指摘している。

就労支援プログラム「未来への扉」

シングルマザーを対象にした就労支援プログラム「未来への扉」は、日本ロレアルとアデコ、NPOしんぐるまざあず・ふぉーらむ(東京・千代田)の協働で、2016年10月に始まった。

ロレアルは2013年、2020年までのグローバルミッションとして「美のすべてを、次世代へ(Sharing Beauty with All)」を掲げた。ミッションの4つの柱のうちの一つ、「社員およびパートナー、コミュニティの持続可能な発展」を達成するため、同社は、事業を展開するそれぞれの国で社会的課題を特定し、課題解決に向けた取り組みを行っている。

日本ロレアルでは子どもの貧困問題に着目し、シングルマザーの経済的安定を支援することを決定。

シングルマザーの就労における課題の一つに、ビジネススキルなどの研修を提供する事業は多くても、研修から就労までを一貫して支援する取り組みがあまりないことが挙げられる。そこで、同社は人材採用で業務提携をしているアデコに声がけをし、共同で事業を進めることにした。

支援プログラム「未来への扉」は、ビジネスマナーや問題解決スキルなどを学ぶ共通講座と日本ロレアルの美容部員もしくはアデコでオフィスワーク職につくためのコース別講座を無料で提供している。毎回約30人の受講者が参加する約5カ月間のプログラムは、隔週の日曜日に三幸学園(東京・文京)などで実施されている。

参加者は20代から40代までと幅広く、2社は、母親が講座を受けている間に子どもを預かる託児サービスも提供している。

日本ロレアル広報部の船津利佐さんは「受講生のみなさんは、経済的に自立したいというとても強い思いを持っています。最初の講座と最後の講座では、自信が生まれて顔つきも変わってきます。孤立することもあるシングルマザーの受講生にとって、こうした機会を通して、同じ悩みを共有できるネットワークができることは心強いようです」と説明する。

一方で、シングルマザーが経済的安定を確保できるような働き方が、社会に十分に備わっていないという課題は根強く残る。小さい子どもを抱えるシングルマザーは、勤務地や勤務時間などに関してやむを得ない制約がある。しかし現実には、こうしたことを理由に、面接の対象外になるなど、正社員になることは簡単ではない。

「未来への扉」の受講生は、日本ロレアルやアデコに就職するほかに、提携する人材会社iDA (東京・渋谷)などの派遣として働くための就職支援を受けることが可能だ。

第1期は2016年10月から2017年3月まで行われ、第2期は2017年4月から始まり今月で終了する。23日に募集が始まった第3期の実施期間は、2017年10月から2018年2月までだ。

小松 遥香

オルタナ編集部。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。