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障がい者220人の大量解雇はなぜ起きたのか

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​岡山県で障がい者就労施設を運営していた一般社団法人と関係企業は7月、事業所閉鎖に伴い障がい者約220人を解雇した。全国的にも異例の障がい者大量解雇という事態に対して、障がい者作業所などの連絡組織「きょうされん」(東京・中野)は9日、声明を出した。企業が障がい者就労施設運営に参入するリスクを指摘し、制度見直しの必要があると提言する。(辻 陽一郎)

大量解雇があったのは岡山県倉敷市のA型福祉作業所。運営企業は同時期に、香川県高松市でも2カ所の事業所を閉鎖し59人の障がい者を解雇している。今回の一斉大量解雇で注目を集めたが、事業所閉鎖などによる解雇は全国で少なからず起こっている。

きょうされんが指摘するのは、企業が障がい者就労施設を運営することのリスクだ。社会福祉法人やNPO法人など非営利団体と異なり、営利企業の場合、事業がうまくいかなければ、事業所を閉鎖してしまう。

きょうされんの赤松英知・常務理事は、「社会福祉事業として継続して運営するために給付費が支給されている。営利が見込めない、事業に失敗したなどの理由で撤退することは許されない」と話した。

障がい者就労施設に企業が参入できるようになったのは2006年の障害者自立支援法が施行されてからだ。当初は、規制緩和によって競争が起こり、各施設のサービスが高まることが期待されていた。

だが、「規制緩和で障がい者雇用の役割分担が崩れてしまった」と赤松氏はいう。「企業は一般労働市場で働くことが可能な人の雇用をしてきた。一方、一般労働市場では働くことが困難な障がい者に対して、社会福祉の受け皿になってきたのが障がい者就労施設だ。支援のノウハウがない企業も参入できるようになったことが大きな課題」。

もちろん、まっとうな運営をしている企業もたくさんある。熱心に就労支援に取り組み、事業に関するノウハウを蓄積し、生かしていくことで、高工賃を実現しているところも少なくない。

赤松氏は「地域の差し迫った就労への要望に即時にこたえるには、法人格の取得に時間のかかる社会福祉法人やNPO法人ではなく、株式会社を選択して、実際には営利度外視で障がいのある人への就労支援に取り組むところもある」と、企業が参入できるようになったメリットも語る。

だが、大量解雇という事態を繰り返さないためには、営利を目的とする企業などの参入のあり方を、非営利性と公益性を原則に見直すべきとも指摘する。

きょうされんが強調することは「給付費の原資は税であり、企業活動による資金とは性質が異なる」という点だ。具体的には、事業によって生じた利益を株主に配当することを禁じるなどの措置を講じること。それから、社会福祉事業による収益は当該事業内でのみ活用できるよう厳格に規制することを提言する。赤松氏は「社会福祉事業部分の経営を安定化させることで、障がいのある人の就労を守るべき」と話した。

辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)

オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。

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